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注目の中国企業16社 最新決算分析(2022年7~9月)

チャイトピでは、テンセントやアリババなどの大手企業を中心に、日本でも注目されている中国企業の業績を定期的に分析し、まとめています。

今四半期ではコロナ感染拡大が依然として中国市場に打撃を与え、個人消費に低迷が見られた。また、NIOなどのEVメーカーらはサプライチェーンの不安定さに悩まされていた。そうした中で、コスト削減に専念し、損失の縮小を図る企業が多く見られた。

中国国内市場が落ち込んでいる中で、海外市場を重要視し、事業拡大に力を注ぐ企業も目立っていた。これらの企業が海外における展開をさらに広げ、新たな競争を巻き起こすと思われる。


テンセント

売上高:1,401億元(約2.7兆円) 前年同期比2%減少、市場予想を下回った
純利益:399億元(約7,655億円) 前年同期比1%増加、市場予想を上回った
営業利益:516億元(約9,899億円) 前年同期比3%減少
WeChatの月間アクティブユーザー数:13.1億人 前年同期比4%増加

◆売上構成

中国オンラインゲーム:312億元(約5,985億円) 前年同期比7%減少
海外オンラインゲーム:117億元(約2,250億円) 前年同期比3%増加
コンテンツ課金:298億元(約5,720億円) 前年同期比2%減少
広告:215億元(約4,125億円) 前年同期比5%減少
フィンテック/toB:448億元(約8,595億円) 前年同期比4%増加

4~6月期から引き続き減収を記録しており、業績は依然として芳しくない状態にあった。

メイン収入源であるオンラインゲーム事業では、中国市場における収入は前年比7%減少と4~6月期からさらに落ち込んでいた。未成年者ゲーム依存防止対策により、「王者栄耀(Honor of Kings)」などの傘下人気ゲームの収益に減少が見られた。また、当局による中国ゲーム業界への規制から、新規ゲームライセンスの発行数が乏しいことも事業に影響を与えた。

ただ、11月に当局より公開された新規ゲームライセンスの発行リストには、約1年半ぶりにテンセントの名が見られた。発行が再開されてから初めての取得となっており、市場からは今後ゲーム業界への規制がさらに緩和されるとの期待が寄せられていた。

コンテンツ課金事業では動画配信の有料会員サービス収入などが減ったことが響いていた。

広告事業は未だ回復しきっておらず、前年比5%の減収となった。そんな中で、同社は利用者が増加しているWeChatのショートビデオ機能に着眼し、同機能における広告の展開に注力している。

フィンテック/toB事業は一定の増収を保った。中国における食品や雑貨、交通サービスなどの業界が回復していることが背景にあるようだ。

減収続きと事業低迷が目立つ中で、同社はリストラや不採算事業(NFT取引プラットフォームなど)の縮小を行い、コスト削減に注力していた。また、京東(JD)の保有株に続き、フードデリバリー大手·美団(meituan)の保有株もほとんど配当として株主に分配すると示した。

バイドゥ(百度)

売上高:325億元(約6,325億円) 前年同期比2%増加、市場予想を上回った 
純損失:1億4,600万元(約28億円) 前年から99%縮小
営業利益:53億元(約1,030億円) 前年同期比130%増加

◆売上構成

広告:199億元(約3,872億円) 前年同期比5%減少
その他:126億元(約2,451億円) 前年同期比16%増加

IT大手のバイドゥは売上高が市場予想を上回る増収を果たし、コスト削減などにより純損失の大幅な縮小にも成功している。

ただ、中国国内で再燃するコロナ感染拡大が旅行業界などに打撃を与え、関連の広告収入が低迷していた。しばらくは不安定な状態が続く見通しだ。

コロナの影響を受けながらも、その他収入ではクラウド事業やAI事業が後押しとなり、前年比16%の増加を果たした。

さらに、ロボタクシー事業も順調であり、今四半期ではロボタクシーサービス「蘿蔔快跑(Apollo Go)」の利用件数は47万件と前年比311%増加した。バイドゥは完全無人運転により同乗スタッフへの人件費を削減し、車両製造コストをも下げることで同事業の収益化実現を目指している。

今後の展望について、同社は引き続きコスト・出費を抑え、クラウド事業やロボタクシー事業の発展に注力すると示した。

京東(JD)

売上高:2,435億元(約4.8兆円) 前年同期比11%増加、市場予想を上回った
純利益:60億元(約1,170億円) 前年から黒字転換
営業利益:87億元(約1,700億円) 前年同期比239%増加
年間アクティブユーザー数:5.9億人 前年同期比7%増加

◆売上構成

直販(家電、デジタル製品):1,193億元(約2.3兆円) 前年同期比8%増加
直販(日用品):777億元(約1.5兆円) 前年同期比3%増加
広告:190億元(約3,715億円) 前年同期比13%増加
物流/その他:276億元(約5,400億円) 前年同期比73%増加

同じくEC大手の京東はアリババと違い、増収に黒字化と安定した成長を見せていた。各事業が増収を果たし、特に物流事業が大きく伸び、全体売上高の増加につながった。また、コストを抑えたことにより黒字化を達成した。

主力事業である直販事業ではデジタル製品や家電などのカテゴリが好調であり、関連収入が1,193億元と前年比7%増加した。4~6月期の前年比0.1%減少から一転している。

物流事業は全体の中でもっとも高い伸び率を記録し、同社が注力してきたサプライチェーンの影響力が徐々に増してきたことが原因だ。また、Douyin(中国版TikTok)と提携を交わし、宅配分野での協力を果たした。傘下の貨物航空会社も正式に運行を開始し、物流業界における勢力を広げていった。

7~9月期は堅実に増収を維持したが、EC市場の冷え込みは同社にも響いており、アリババと同じく京東も初めて「独身の日」の取引総額の公表を取りやめた。

また、コスト削減のためか、創業者の劉強東が上層部全体に対して10~20%減給すると報じられた。その一方で、一般社員への福利厚生に力を入れ、100億元(約1,930億円)もの住宅保証基金を設けると示した。

アリババ

売上高:2,072億元(約4兆円) 前年同期比3%増加、市場予想を下回った
純損失:206億元(約4,000億円) 前年から赤字転落
営業利益:251億元(約4,835億円) 前年同期比68%増加

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