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映画 「ルックバック」 感想

日曜日のお昼時、「ルックバック」を観るために映画館に足を運んだ。

原作は短編の中では一番好きな作品で、単行本は初版で3冊購入している。

初見時は主人公二人の漫画を通した出会いと成長、そして絶望と希望にうっすら涙し、その緻密な構成とメッセージ性に衝撃を覚えた記憶がある。

漫画を読んで涙を浮かべたのは、ハンターハンターとONE PIECEくらいなのだが、ルックバックの原作もそれだけ心に響く強い力があったのだ。

数日前に「一律1700円」という料金設定を知り、SNSの一部の層で物議を醸していたそうだが、個人的には上映時間60分や料金設定云々より、「内容が良ければOK」というスタンスであった。

本作を観た感想の結論を先に述べると、「非常に良かった」という評価になる。

特に良かったと思えたのは以下の4点。

①原作に忠実且つ繊細な作画

まるで原作のキャラたちが漫画の世界を飛び出し、そのまま生きて動いているようで、感情の機微を表情の些細な変化や視線の流れで表現している繊細さが素晴らしい。

② 原作に彩りを添える演出

  1) 京本との才能の差に悔しさを滲ませながら、勢いよく走る藤野

  2) その京本から「ファン」と告げられ、雨の中をスキップする藤野の躍動感

 3) ジャンプでの受賞を二人で確認するシーン、藤野を「天才」と称し、その才能を
   信じて疑わない京本だからこそ、藤野よりも先に準入選に気づくことが出来た

 4) 藤野が京本の手を引っ張り街を駆け出し、喜びに溢れた二人の表情、そして
   それぞれの想いがズレていくにつれ、その繋いでいた手が離れ始める演出

③声優の確かな演技力

声優初挑戦とは思えない程、主人公二人にマッチしており、特に藤野は小学生から大人に近づいていく声帯の変化、感情の抑揚が見事に表現され、しっかりとキャラに命が吹きこまれていたように感じた。

④切なくも優しさに溢れた主題歌

美しくも優しい歌声、コーラスとピアノが感傷的で、教会で歌われる賛美歌のような曲調であり、ルックバックという作品自体が、亡き京本と描き続ける決意をした藤野に捧げた曲とも受け取れる。



以上が良かった点であるが、正直な話、原作初見時のような感動と衝撃を少なからず期待していた身としては、観終わった直後はやや物足りなさがあるのも否めなかった。

しかし、今落ち着いて考えてみると、それらを求めたのは野暮だったようにも思う。

なぜなら、漫画には漫画にしか出来ない表現、アニメにはアニメならではの表現方法がそれぞれあるからだ。

所謂「原作超え」と思えたシーンもあったし、やっぱり原作の方が藤野達の心情が伝わってくると思えるシーンもあった。

それぞれの良さにフォーカスし、相乗的に作品を楽しむことが出来れば、作者や制作陣が「ルックバック」に込めた醍醐味により近づけると感じる。

今後、円盤が発売されるとしたら購入したいと思う。

※サムネ引用 : ルックバック製作委員会

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