大人の読書感想文「繊細さん」の幸せリスト

おすすめ度:★★★★★
読むのにかかる時間: 1〜2時間

この「繊細さん」シリーズは前作「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本 という本がとても有名になり、横目でチラチラ気にしつつもどこか避けていた本でした。

過去に自分の率直な言動(思ったことを口に出したり態度に出す)によって知人を傷つけてしまったことが何度かあり、繊細な人を傷つけてしまう自分には他者の気持ちを思いやれず雑なところがある、と思っていたので、その自分が「繊細さん」を読むなんて…とどこか後ろめたさがあったのでした。

しかし、作業中によく観ている中田敦彦さんのYouTube大学というチャンネルで「繊細さん」の幸せリストを取り上げていた回 を見て、繊細さんにみられる特徴の一つ、生産性や人の役に立たないことに対して罪悪感を感じるという部分をきいて、これ自分にあてはまるなあと思って、興味が湧いて本を注文しました。

ちなみに「繊細さん」とは「気にしすぎ」「真面目すぎ」などの個人の性格の問題ではなく、生まれつき光や音などの刺激を受けた時敏感に反応するHSP(Highly Sensitive Person)という性質のことを、やさしく親しみを込めて呼んだ名称。身長の高い低いと同じような感じで5人に1人は存在するそうで、脳の仕組みが関係しているため、まさに身長のように気の持ちようで変えられるものではないそうです。

(わたしの感覚だとHSPは5人に1人どころか2人にひとりくらいいる気がするのですが、それは自分がSNSでの付き合いが多いからなのかなと。HSPは感じ取ることが多すぎてアウトプットしないと苦しくなってしまうため、自分を発信できるSNSとの相性が良いそうで、その率が高いのは当然かも)

わたしはこの本のさいしょにある診断項目によって、自分がHSPであることを認めざるを得ませんでしたが、この本が素晴らしい点は、タイトルのとおり悩みへの対処方法ではなく、この性質を持っているからこそ味わえる幸せについて書かれていることです。

自分が生きてきた中でだんだんできるようになったことが多く書かれていて、生き方の答えあわせというか、これでよかったんだな、みたいな感じでうれしく読めました。また繊細さんの特技と自分の職業であるデザイナーの相性もばっちりなことが分かり、なんだか自信が持てました。

もちろん自分では解決できていなかった悩みも載っていました。
たとえばわたしは定期的に「あらゆることを遮断し、殻に閉じこもってひたすら自分と向き合う時間」が必要になるのですが、まわりの人に気を使わせていないだろうか、精神的に弱っている状態なのかも、などと少しマイナスに思っていたのですが、この本では “ひとりでありながら、自分のペースで世界や人類とつながる時間” として肯定されていました。

ほかにも、他者の感情や災害ニュースなどに影響を受けやすく疲れてしまうことについて「共感」しなくていい、「理解」をしめすだけでいい など、自分に沁み込ませたい知恵がたくさん書かれていました。

なにより、作者の武田さんがHSPであることを人生に活かしているんだな、とわかる文章(とにかく優しくて人が安心する、ふっくらと味わいのある、心をつくした言葉選びをしている)なのも説得力がありました。

文字組みも筑紫書体が中心に使われていてわたし好みでした。(太字だけモリサワの見出しゴシックかな?)笑

今がハッピーでも、そうじゃなくても、一息いれて自分を静かに見つめ直したいときにおすすめな一冊です。



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