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毎日『手』を書き続けたら美大に合格した話

はじめまして、チャイと申します!
私は現役で美大受験に合格し、現在は普通のOLとして働いている一般人です。今回は私が美大に行こうと思ったきっかけや、受験勉強の方法について話していきます。

とにかくアホだった時代

自称「学校で一番絵がうまい女の子」

私は田舎の小さな海街に生まれました。子供の頃から美術の時間が大好きで、作品を褒めて貰えることが何よりも嬉しかったのを覚えています。しかし高校生になる頃には良い評価を貰えることが当たり前になり、褒められた時の嬉しさもどんどん薄れていきました。ついには学校の誰よりも絵がうまいと慢心し、絵に描いたような天狗状態になっていたのです(笑)

初めての屈辱

そんな私の人生が変わったのは高校2年の春、文化祭の入場門制作を任された時でした。入場門は90×180の大きさのベニヤ板を骨組みに貼り付けたもので、制作方法はペンキで着色するだけのシンプルなものでした。
当時の私は何も計画性がなかったので、適当に思いついたものを描いて、適当に集めた周りの人に塗ってもらう。そんなやり方をしているうちに、目に当てられないくらいひどい作品が完成しました。

ベニヤ板1枚ずつを見ればある程度の完成度はあったものの、いざ組み立てるとただの落書きのようで、色の配色もバラバラ。美術の先生からは「もう少し違うやり方があったんじゃない」と言われる始末でした。自分の作品に対していい評価を貰えなかったことが悔しくて、当時の私はすごいショックを受けました。

高校3年でリベンジを誓う

その1年後、私は再び文化祭の入場門を制作ました。前回のような失敗を繰り返さないように、しっかり計画を立ててから下書きし、協力してくれるメンバーには細かく担当を割り振りました。また制作中はくだらないプライドを捨て去り、周囲に作品の見栄えを相談しながら進めました。そうして完成した作品がこちらです。

色の組み合わせや全体のトンマナ(作品全体の一貫性) はさておき、去年よりも完成度が高い作品が完成しました。周囲からの評判も良く、美術の先生からも及第点を貰えました。この経験で自信を取り戻した私は、もっと本格的に作品作りをしたいと考え、美大への道を考え始めました。

”もの”の見方を矯正する

受験シーズン中に描いた石膏デッサン

地獄のデッサン教室

高校3年の夏、私は美術の先生にお願いして、放課後に美大受験の指導を受けることにしました。美大の受験は志望する学科・専攻にもよりますが、大きく分けて2つの実技試験があります。

1つ目は鉛筆デッサンです。石膏像や人物、その場に用意されたモチーフ(花瓶や布などの物体)などを鉛筆や木炭で描き、その完成度で合否を判断します。
2つ目は専攻別の実技試験です。油絵や日本画で絵を描くものや、粘土や彫刻で立体物を作ったり、建物のデザインを絵と立体物で形にしたり…。受験する学科にちなんだ試験内容が用意されます。

先生が出した最初の課題は鉛筆デッサンでした。鉛筆デッサンは、そこにある「もの」を正しく認識して紙に描き起こす。そして光の反射や距離、物体の質感も鉛筆1本で表現する必要があります。まずはその練習として、石膏像を1体3時間以内に描くことを目標にしました。
私は早速紙と鉛筆を用意して、自分の思うがままに描いていきました。3時間、トイレにもいかず集中して描いたものを提出。でも先生からのフィードバックは「書き直し」の一言だけ。書いては消して、書いては消してを泣きながら繰り返す日々が続きました。

一番の近道はすぐそこにあった

そんな時、先生から一つの宿題を出されました。毎日必ず、自分の手を3枚デッサンすることです。「何か意味あるのそれ?」と最初は思いましたが、その時は毎日石膏像しか描いていなかったので、気晴らし程度にに手を描き続けることにしました。すると不思議なことに、普段のデッサンがスルスル描けるようになったんです。そうしてお絵描きノートが5冊溜まった頃には、先生のフィードバックもだんだん好感触になっていきました。

手というものは本当に不思議で、グーやパーにしたとしても、毎回必ず同じ形にはなりません。一つ一つのしわや光の当たり具合、見る角度によって全く違うものに見えます。つまり花瓶や石膏像をわざわざ用意しなくても、毎日違うモチーフを描けることになります。しかし手の色や素材は変わらないので、書き手はただ形を正しく認識して、紙に描き起こすまでの作業を繰り返すのです。

その結果が評価に繋がったことを考えると、当時の私には"もの"の形を正しく認識して、紙に描き起こすスキルが足りなかった。つまり手を毎日描くことで、知らず知らずのうちにデッサンの基本を身に付けたことになるんです。

制作時間2時間半のデッサン

手を描き続けることによって"もの"の見方を矯正された私は、専攻別の実技試験の練習も並行して実施。私は油絵専攻だったのですが、すでに鉛筆デッサンで基礎を身に付けたため、以前よりも完成度の高い作品ができるようになっていました。

そして美大受験へ

自分よりも上手い人がゴロゴロいた

受験当日のことは緊張で何も覚えていないのですが、やっぱり終わった後の達成感はすさまじいものでした。でも同時に、他の受験生の絵を見て自信がなくなっていく一日でもありました。今まで私が見ていた世界が狭すぎたんですよね。
とはいえ、絵描きは何度もプライドをへし折られて強くなっていく生き物だと思っています。一朝一夕で上達するものではないからこそ、そこにはとてつもない楽しさと達成感があります。今となっては、美大に行かせてくれた親と先生にひたすら感謝しかないです。


noteの初投稿は私の体験談をお話ししましたが、今後はジャンルを問わず日常的に起こったことも含めて投稿しようと思っています!
稚拙な文章ではありますが、少しでもいいなと思った方はハートボタンを押していただけると嬉しいです。

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