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IBD出身でも、ファンド出身でも、会計士出身でもないぼくらがCFOを名乗り続けるためには


はじめに

吾輩はコンプレックスの塊である

SNS時代の夏目漱石。山月記みが深い

最初に簡単に自己紹介をさせてください

私はモノグサ株式会社という、人の記憶をテクノロジーでサポートするスタートアップで創業期からCFOをしております

元々は新卒でリクルートの経理として入社し、社会人のキャリアをスタートしました

その後、分社化プロジェクト、上場プロジェクトに携わらせてもらった後、投資部門とコーポレートベンチャーキャピタル部門を経験させていただきました

いずれもリクルートのお仕事で、合計7年半ほど在籍させていただきました

その後はモノグサで約6年ほどCFOを務めています

それではさっそく本題に

最近のスタートアップCFOの方々、キラキラすぎない!?

直近上場されたタイミーCFOの八木さんや、大型調達をされたnewmoCFOの武藤さんなど、いずれも投資銀行部門で成果を上げられた方々です

それ以外でも、投資銀行部門やファンド、会計士出身の方々が数多くCFOを務められており、最近の日本のスタートアップシーンが盛り上がっている大きな要因の一つとなっていると思います

「CFOは管理部長ではない!」という批判は、少なくとも日本のスタートアップにあまり馴染まないと言っていいほど、素晴らしい経歴の方の人材流入が進んでいる印象です

一方の私はというと、日本の事業会社叩き上げ、持っている資格は簿記2級という、渋柿みたいな色をした経歴書の人間です

そんな私にとって、スタートアップシーンの盛り上がりは当然ウェルカムでありつつ、今の自分と比較すると、それなりに自尊心を削られるので、諸手を上げて喜びきれないという器の小ささを先に吐露します

タイトルに戻りますと、CFOのモデルケースではない私と同じようなバックグラウンドのCFOの方々や、これからCFOを目指される方、及び私自分に対して「それでもCFOを名乗り続ける」ために大事だと思うことを共有したいと思います

ちなみに、当然ですが、IBDやファンド出身のCFOの方に対して、恨みもなネガティブな印象も一切ないです!

Gary L. Wilsonとの出会い

私がCFOを志したきっかけであり、自分の心の師匠であるCFOの方がいます

それはGary L. Wilsonという方で、現代のCFOのモデルであり、CFO学校の校長とも呼ばれている方です

Gary L. Wilson

Gary L. Wilson
アメリカのオハイオ州出身。デューク大学で会計を学んだ後、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールに進み1963年にMBA取得。最初の就職先はS&Tというフィリピン系の会社で取締役副社長として経験を積む。その時にLBOの手法を習得・活用して企業を大きく成長させる。その後にまだ中堅企業に過ぎなかったホテルチェーンのマリオットに就職し、CFOとして”持たない経営”を推進し、ROEを9%から20%に大きく成長させ、キャッシュフローも毎年20%成長を維持し続ける。その後、マイケル・アイズナーが率いるウォルト・ディズニーに就職し、東京ディズニーランドの将来20年分(!)のロイヤリティ収入を現金化するなどのプロジェクトを成功させ、ディズニーの成長に大きく貢献。その後、弟子であり盟友のアル・チェッキと組んで、ノースウエスト航空のLBOと、後に「奇跡のターンアラウンド」と呼ばれるV字回復と再IPOを成功させる

詳細は最強CFO列伝HBRのインタビュー記事を読んでいただけたらと思います

めちゃくちゃアガるので、とてもオススメです

個人的に一番好きなエピソードは、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業したのに「働くことが死ぬほど嫌い」というチェッキを、「本当に嫌いかどうかやってみないと分かんなくね?」と説得してマリオットに入社させる

ただ、何をさせていいか分からないので、とりあえず「会社の予算を1%も使わずにニューオーリンズ支部の業容を拡大せよ」という無茶振りをして、そこでチェッキが編み出したプロジェクトファイナンスの手法が、後のマリオットの”持たない経営”に大転換するブレイクスルーになったエピソードです

話を戻します

当時社会人1年目だった私は「リクルートに入ったのになんで経理なんじゃい!」と、端的に言って腐ってました(ほんとスイマセン)

一方で明確なキャリアやビジョンもなかったので、会計や数字に強い人の延長線上にどうやらCFOという仕事があるらしい、という情報をキャッチし、CFOについて調べる内にゲイリーにたどり着きました

そこで感銘を受けた私は無邪気にCFOを目指すことになります

私がCFOを志すに至った、ゲイリーの発言を紹介します

ゲイリーはHBRのインタビューの中でCFOはどのように価値を生み出すのか、という問いに対してこう答えています

Just like all the great marketing and operating executives—by being creative. Creativity creates value.

カッコよくないですか!?

実際に彼はすべてのキャリアシーンにおいて、まさにCreativityを発揮して、事業や会社はもちろん、業界全体に影響を与える戦略・手法を開発して大きな成果を残しています

そうです。どんなバックグラウンドであろうとも、CFOに大事なことはCreativityなんです

ここからは自分なりにCFOとしてのCreativityを開発するために心がけていることを3つご紹介したいと思います

想像力(imagination)

Creativityという観点でこれがもっとも大事かな、と思っています

ゲイリーも言っていますが、F/S、特にB/Sに表れないその会社の強みは何かを特定し、その強みを最大限に活かすための経営戦略やファイナンス手法を生み出すことが重要である、と

マリオットであればホテル経営のノウハウであり、ディズニーであればブランドであり、いずれもB/Sに表れない無形資産です

もちろんマクロ・ミクロの数字はとても大事なのですが、そこに表れない本源的価値を特定することができるか

またそれを活かすための戦略を、自分と周囲の知恵でもって新たに生み出すことができるか

想像力を伸ばすために私なりにやっていることを1点紹介したいと思います

モノグサは記憶の会社ということもあり、ポジショントークが入るのですが、想像力は自分の中にある引き出しの量に比例すると考えています

私は新聞や雑誌・書籍、ニュースレターやnote、podcastなど情報収集にお金と時間を結構投下しているのですが、面白いと思った会社やビジネス、ディールを6年近くスプレッドシートにまとめています

そうすると、自然と「これ使えるかも?」とか「業界違うけどここに応用効きそう」とかアンテナが立つのでオススメです

もちろん人との会話から情報収集したりアイデアが生まれることもありますが、その場合もネタは多いに越したことがないです

これが良いのは決して私のような知的瞬発力がない人でも、蓄積によって価値を生み出すことができるのでオススメです

信頼(Trust)

個人的には人間力や人格という方がなんとなくしっくりくるのですが、英語で良く表現できるものがなかったので信頼という言葉を使っています

ゲイリーもHBRのインタビューの中でこう言っています

In my view, a CFO should be first and foremost a strategic business executive. 
Creating value for shareholders is what any business executive’s primary
economic objective should be.
That means CFOs should help create the strategic plan that’s going to achieve the corporate goals of growth and return on capital—and then help make it happen.
How do you do that? 
With good people. A great team of people can make almost anything work.

前段の部分でもCFOの役割について非常に重要かつ本質的なことを言っているのですが、特筆すべきは最後の文章

結局すべては人であり、優秀な人が集まれば大抵のことは実現できる、と

インタビューの中でも、The Wilson Alumni Rosterというゲイリーの弟子たちのリストが載っているのですが、著名な会社のCFO、CXOを務められた方が数多くいて、ゲイリーが採用と育成に本気だったことが分かります

お恥ずかしながら自分は自己成長をまだまだ追求したいと思っており、育成にリソースを割けているかで言うとそんなことはないのが実情です

ただ、モノグサの創業期からサービスを使っていただいているお客様やお取引している会社様は、大学やリクルート時代の先輩や上司の方からのご紹介や、当時一緒に仕事をしていたパートナーさんだったりします

また、リファラルでご入社いただいた方も複数名おり、とてもご活躍いただいています

自分は人間力が高いとか、信頼に足る素晴らしい人間である、とは口が避けても言えないのですが、その瞬間瞬間、一緒に仕事をしたり、一緒に時間を過ごしてきた人を大切にしていたつもりです

ネットワークや人脈というと少しチープですが、目の前の人にちゃんと向き合って、仁義を果たせば、給与明細や銀行口座に表れない資産が必ず蓄積されます

好奇心(Curiosity)

想像力や信頼の土台となっているものの1つが好奇心であると考えます

なんてことはないニュース1つとっても、「なんで市場はこういう反応しているんだろう」とか

なんてことはない資金調達のリリースでも、「なんでこの(流行りじゃなさそうな)ビジネスにトップティアのVCが出資したんだろう」とか

味わおうと思えばいくらでも味わうことができます

私がモノグサの創業期から継続していることの1つに「塾の新聞折込チラシ収集」があります

モノグサは最初、主に塾業界に向けてサービスを提供させていただいており、ありがたいことに今でも伸び続けています

元々、塾も含め、教育業界に全然明るくなかった私は、勉強のために塾の新聞折込チラシ収集をスタートしました(ちなみに新聞は日経新聞)

かれこれ丸6年続けているので、結構な量になっていて、正直どこかで捨てたい気持ちがあるのですが、今のところため続けています

この研究成果はまたどっかでまとめたいと思っているのですが、チラシ1枚とっても「なんでこういう謳い文句にしてるんだろう」とか、「どの塾もこの時期にチラシが集中するのなんでだろう」とか、色んな妄想を膨らますことができます

ちなみに、新聞の購読者低下やネット広告への移行が著しい中において、肌感覚として塾の折込チラシの数は多分あまり減っていません(少なくとも私が住む地域においては)

つまり、塾ってローカルビジネスなんだなぁ、ということが分かったりします

ちなみにここ数年顕著に増えているチラシは、中古品の買い取りです

戻ると、どんな小さなことであっても、「なんでだろう?」と思って物事にあたったり、情報に接すると色んなことが分かってきます

まとめ

まず改めてお伝えすると、IBDやファンド、会計士出身のCFOの方になんの恨みもないです!

むしろ、チェッキ同様に、大学時代「働きたくないでござる!」と駄々をこねていた自分からすると、尊敬しかありません(もちろん出身企業・業界内でも色んな人がいると思いますが)

ただ、そういった方々がご活躍されているスタートアップCFO業界において、私のような野良犬系CFOが、これからもCFOと名乗り続けるためには、Creativityを磨き続けることしかないと思っています

創造力(想像力)で負けちゃいけないのだ、と

最後に、元々このテーマはどこかで書きたいと思っていたのですが、明日(公開日)にどうしてもご入社してほしい方とのご面談があり、その方に届くといいなぁと思って急いで書きました

それでは!

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