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シリーズBの資金調達を終えて。 あるいはスタートアップの第一号社員として創業期にジョインしたCFOの独り言(シリーズB編)

まえがき

シード編からシリースA編まで約2週間空き、本題である今回のシリーズB編はなんとそこから約2ヶ月経ってしまいました


その間に世界もマーケットも大きく変わってしまいました

元々ノウハウとかセオリーとかを共有したかったわけではないので、未完で終わったところで誰も困らないのですが

とはいえ、あの密度の濃い時間の中で、苦しみ抜いて自分なりに出した答えをこうしてネットの海に撒き散らして、不特定多数の方にご笑覧いただくことで、これまでの自分に一区切りつけようと思います

ちなみに今回のOGPは、昨年モノグサが初めて出展した展示会の画像です

コロナウイルスの影響で展示会自体がキャンセルになるだろうと思い、出展をストップしたのですが、展示会は開催され、かつ商談スペースが最低一つはないと困るということで、急遽作ったブースがこちらです

ぼくの中では枯山水と呼んでいます
セールスチームのみなさんホントすいませんでした<(_ _)>

ファイナンスに動き出す前

前回と大きく前提が異なるのは、資金調達をしないとキャッシュがなくなってしまう、という状態ではなかったことです

もちろん、投資すればまだまだ成長する余地があったので、シリーズAの後に、アクセルをベタ踏みする選択もありました
ただ、このマーケットのゲームのルールはそうではないし、モノグサのカルチャーともマッチしないと判断し、大きく経営方針を変えることはしませんでした

特に採用面では、喉から手が出るほど人手が足りなかったにも関わらず、これまで以上にこだわって進めていました

そして、社員全員の頑張りによって、あまり大きな投資をすることなく、業績面でも昨対比で大きな成長を実現することができました

その結果、創業して以来初めて「資金調達をしなくてもよい」という状況が生まれました
それが2021年5月頃のことです

言葉にするとたったの一行なのですが、ここまでたどり着くことがどれだけ大変なことか・・・

「こんな難易度の高いことをやれた俺TUEEE」的なことを言いたいつもりはまったくなく、正直に言うと、ここまで来れたのは運7割くらいの感覚なので、もう一回まったく同じことをしたとしても、上手くいかない可能性も相当程度あると思っています

例えて言うなら、マリオメーカーの超意地悪コースを初見でプレーさせられて、がむしゃらにやってたら運良くステージクリアしてしまった感覚でしょうか

そんな時、凡人は何を思うか

次のステージは別の人にコントローラー握ってプレイしてほしい(´・_・`)。oO

なまじファイナンスをかじっているだけに、このまま追加のリスクを負わずに経営したとしても、一般的には成功と言われるような未来はなんとなく見えました

毎晩もうひとりの自分が言うわけです

東北の田舎から大都会TOKYOに出てきて、ここまでよく頑張ったよ
就活始まった時期、お前は「あくせく働きたくないから、就職しないで漫画喫茶のバイトがいい」って言ってたよな
そんなお前がよくここまでやったよ、もう楽になれよ

心の声(From細川)

ずーっと、ずーっと葛藤していました

そんな時、ふと思う瞬間がありました

モノグサの人たちってなんでこんなに一生懸命に働いているんだろう、と

もちろん人それぞれ動機は異なりますが、共通して言えるのはモノグサという会社、事業、チーム、プロダクトに未来を感じているからであり、そこに自分の人生という唯一無二の資本を投資しているのだ、と

CFOという仕事は、人から資本をお預かりし、その資本を活用することで世の中に新しい価値を生み出すこと、及びその一連のプロセスを通じて、お預かりした資本を最大化し、お返しすることです

つまり、従業員が自分の人生を振り返ったときに、「あの時モノグサで働いてよかった!」と思ってもらえないと、どれだけ企業価値を大きくしたとしても、それだけではCFOの職務を全うしたとは言えないことに気づきました

そう考えた時に、このままでモノグサは他のスタートアップ・大企業よりも、GAFAよりも、エキサイティングな会社と胸を張って言い続けることができるのか

これは…やるしかない

そう自分の中で決意し、本格的にファイナンスに動き出したのが2021年7月頃です

ファイナンスに動き出した後

今回のファイナンスを進めるにあたってぼくの中で決めたことが3つあります

  • 調達額は10~15億円

  • 教育領域(K12)以外の展開を明示する/コミットする

  • 海外投資家とも話す

1点目と2点目は関連している話なので、合わせてお話しします

モノグサの既存事業である、小学校~高校生までの教育領域に関しては、みんなの頑張りもあって、一桁億円の調達+事業が創出するキャシュフローを再投資するだけでも、少なくとも目先は十分に成長し得るポテンシャルがあると思っていました

なので、そのためだけであれば、リスクマネーで大型調達をする必然性はありません

話は少し飛ぶのですが、前職リクルートの投資部門にいたときに叩き込まれたことの一つがあります

リクルートの投資部門では、投資案件を評価する基準がいくつかあったのですが、その最重要項目が「投資の意義・目的」でした

したがって、どんなに高い収益性が見込める案件であっても、リクルートのミッション・ビジョンに合うものでないとGoは出ませんでした

営利企業としてそれでいいのか、という声もあるかもしれませんが、そもそも企業という集合体は、特定の目的達成のために組成された組織であるので、この投資は企業のミッションに合致するのか、という観点が一番重要という考え方はぼくは好きでした

話を戻すと、モノグサにとって今回のファイナンスの意義・目的はなんなのか

安定成長が一定見込める中で、あえてそれをブチ壊してしまうかもしれないリスクを負ってファイナンスする意味は一体なんなのか

それは教育の会社から、記憶の会社へと一歩踏み出すこと、とぼくは定義しました

もちろん、教育領域はモノグサの一丁目一番地ですし、よりよい社会を作り出す上で、最も重要な領域の一つだと本気で思っています

ただ、「記憶を日常に。」というミッションを掲げているモノグサにとって、教育はスタートであって、ゴールではないのです

教育領域がしっかり立ち上がってきた今だからこそ、その成功に囚われてしまう前に、モノグサにとってまったく新しい領域をあえて明示し、コミットすること

そのためのファイナンスであり、それを実現するためには大型調達が必要である

そう、整理しました

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※細川を指名してくれれば直接お話しさせていただきます!

3点目の「海外投資家とも話す」ですが、こちらはより単純な話で、市場全体を見渡したときに、日本よりも海外の方が資金量が圧倒的に大きいからです

したがって、会社を成長させ続けていく上で、いずれ絶対に避けては通れない壁であることは分かっていたので、どうせなら早めにチャレンジしよう、という理由でした

ちなみにぼくはこれまで留学の類をしたこともなく、前職でも英語を少し使ってたくらいのドメスティックマンなので、ぼくにとっては大きな決断でした

ここまで読むと、ウジウジ悩んでいた割に、決めると動きいいじゃないか、と思っていただけるかもしれません

しかし、現実はそうではなく、毎日メンタルブレイク寸前でした

シリーズAのときは、「倒産させない」という分かりやすい必然性があったのですが、今回はあえて自分で目標をめちゃくちゃ高い位置にセットして、リスクテイクしにいくファイナンスでした

なので、自分で絞首刑台を作って、自分でその階段を登っている感覚でした


そんな折れそうな心を奮い立たせてくれていたのは、『龍が如く0』でした

投資家回りも含めて、本格的にファイナンスに動いていた約4ヶ月間、毎朝の通勤時に『龍が如く0』のOPムービーを見ていました
毎日です
もう一度言います。毎日です

設定はアレなのですが、登場人物一人一人の生き様がぶつかり合う傑作なので、ぜひプレイいただきたいです

主人公の桐生一馬が、劇中で放つセリフがぶっ刺さります

長いこと暗い道を歩いてると
この先もずっと暗いもんだと思っちまう
前に進むことがイヤになる
自分の道がこの先どうなってるか分かってるやつなんてこの世にひとりもいねえ
俺らにできるのは
立ち止まって泣くか
一歩でも前に進むかのふたつだけだ

龍が如く0 桐生一馬

笑い話のようですが、あのしんどい時期を走りきれた要因の一つは龍が如くだったと思います

物語の力ってすごい

ファイナンス振り返り

結論としては、昨年リリースを出させていただいた通り、グローバルブレインさん、Z Venture Capitalさん、Salesforce Venturesさんを新たにお迎えし、既存株主であるWiLさん、UB Venturesさん含め、総額18.1億円のファイナンスをクローズさせていただきました

ありがたいことに、モノグサの可能性を信じていただき、当初の予定を大きく超える金額をご出資いただきました

投資直後から色んなサポートをしていただき、資金面はもとより、ご一緒できてとても心強く思っています

  • よかったこと

SEED、シリーズAはほぼ一人でやってきたのですが、今回は経営企画として入社してくれた山本さんと一緒に動いてきました

山本さんは大学時代のハンドボール部の後輩なのですが、半ば人攫いのような形で入社してもらい、ぼくも余裕がないので無茶振りの毎日でしたが、やりきってくれました

今回、タイトなスケジュールの中で、しっかりクロージングできたのは本当に彼のおかげです
本当にありがとう!

  • 今後チャレンジしたいこと

それは2つあります

1つ目は海外投資家からのファイナンスです

スケジュールだったり、こちらのケーパビリティ等の問題で実現できなかったのですが、感触は分かったので、次回以降、本腰入れてチャレンジしたいと思っています

少なくとも、早朝に脇汗ダラダラ書きながらzoomでプレゼンやQ&Aをした経験は個人的にとても貴重でした

2つ目はモノグサの人材の価値を企業価値に織り込むことです

モノグサは創業から約4年ほど経つのですが、ご本人の意思で期間を限定して働いていただいていた方以外、退職者がおりません

これは(お恥ずかしながら)ボード陣の人材マネジメントが上手という話ではなく、一人ひとりがメンバーやユーザー、顧客、プロダクトに向き合ってくれているから実現できていることだと思っています

残念ながら、資本主義においては、企業価値に織り込まれないものは存在しないものと同義です
悔しいことにその壁をぼくはまだ突破できていません
(ちなみに今回出資いただいた方々がモノグサの従業員を評価していないわけではないです。念の為)

ここは本当に自分の力不足です

だから、次回はモノグサの事業やプロダクト、そこから生み出される価値は当然のこととして、それを支えている社員の素晴らしさも理解・評価してもらうファイナンスをしたいと思っています

最後になりますが、長文お読みいただき、ありがとうございました!

作家気取るわけではないですが、色んな方から「読んでます!」、「次いつですか?」とお声がけいただけてとても嬉しかったです!

おわり

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