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シリーズBの資金調達を終えて。 あるいはスタートアップの第一号社員として創業期にジョインしたCFOの独り言(シード期編)

まえがき

DDがほぼ完了し、契約の内容も概ね合意した12月頭
そこから、左の首・肩に原因不明の痛みを感じ、
「これはファイナンスの疲れ・ストレスから来る痛みだな・・・ここまで気を張ってよく頑張った、自分」
と思っていたら、普通に肋骨が骨折していました(全治一ヶ月)

どうも、モノグサというスタートアップでCFOをしています、細川と申します

今回、シリーズBで総額18.1億円の資金調達をさせていただきました

資金調達そのものは、会社経営において、ワンオブゼムのイベントではあるのですが、私なりに感ずるところがあり、駄文を投稿させていただきます

マネーフォワードの辻さんが、以前大型調達後に投稿されたNoteの冒頭で

「このままだと、あと数カ月もしないうちに、お金がなくなる」
振り返れば、創業期からいつも、そんな恐怖と闘っています。

https://note.com/yosuke77/n/ne4163d5a8e7e

と書かれていらっしゃいますが、スタートアップのCEO/CFOをやられている方で、この言葉に共感しない人はいないと思います
かく言う私も、2018年6月にジョインしてから、ずっとずっとずーっと、この恐怖と闘ってきました
そして、今回シリーズBで18.1億円という大きな金額を調達させていただいた今でも、この恐怖は自分の身体からこびり着いて離れません

余談ですが、シード、シリーズAの合計で5.4億円資金調達させていただいているのですが、それまでは、もし万が一会社がうまくいかなかったとしても、ワンチャン自分がそのファンドで無給で奴隷のように働けば、出資いただいた分くらいはお返しできるのではないか、と、トチ狂った妄想をして、自身を奮い立たせていたこともありました。真面目に

ただ、今回は妄想内ですら、お返しできる金額をはるかに超えてしまったので、あとはやるしかなくなりました

話を戻します

今回は「会社を潰さなくてよかった」といういつもの安堵に加えて、別の感覚が自分の中にあります

それは

「やっと、自分たちがやりたかったことにチャレンジできる」

ということです
2021年のM-1でいうと、決勝に進出した時のハライチ(の岩井さん)の感覚でしょうか

誤解を招く表現ではあるので、これまでの資金調達の歴史とともに、私なりの今回のファイナンスにかけた想いをお伝えできればと思います

駄文かつ長文なのですが、以下に当てはまる方には、少しはお役立てる内容かもしれません

  • 顕在化された課題や市場がない領域で起業したいと思ってらっしゃる方

  • スタートアップでCFOのキャリアを考えられている方

  • スタートアップの経営者で、CFO採用を考えられている方

  • モノグサってどんな会社なんだろう、と興味を持っていただいている方


シード期

私は2010年にリクルートに新卒入社しました
その後、リクルートの同期であり、モノグサの創業者CEOである竹内に誘われて、モノグサの第一号社員として2018年6月に入社しました

2017年に竹内から誘われたとき、私はリクルートのVC部門におり、スタートアップに投資させていただく側にいました

その時、竹内と共同創業者でありCTOの畔柳から、どんなビジネス、ビジョンを考えているのか聞いたのですが、2人の答えは

「グローバルで使われる記憶のプラットフォームをつくる」

というものでした

それを聞いた時、私は白目をむきそうでした
なぜなら、今は少し変わってきているかもしれないですし、あくまで当時の私の感覚としてですが、2人のビジョンはVCが好きではないワードばかりだったからです

・グローバル
→不確実性高すぎ。そもそも米中に勝てるんだっけ?
・記憶
→ペインはなに?それって市場規模に換算するといくら?
・プラットフォーム
→みんなそう言うけど、スタートアップで名実ともにプラットフォームとして成立した会社って片手で数えるほどしかなくない?

事業やサービスの成否はさておき、少なくともVCから資金調達をする、という1点において、日本のVCからこのストーリーで資金調達するのは厳しい、と思いました

また、当時考えていたマネタイズの手法はB2Cのモデルでした

一方で、CEOの竹内はモノグサを起業する前は、リクルートでスタディサプリの高校向け事業(B2B)の立ち上げ、特に営業戦略、営業組織構築、そして自らもトップ営業マンとして大きな成果を残していたので、B2Cのモデルでは彼の強みが生きないのではないか、と感じました

手元に切れるカードがほぼ何もないシード期において、VCに評価してもらえるものは、創業者・経営陣のバックグラウンドくらいしかないので、その観点でもファイナンスは難しいと思いました

なので、その後色々リサーチしたあとで、私の方から「塾向けのSaaSビジネスから始めないか」ということを提案しました

なぜなら、

  • 米国ではすでにSaaSが高く評価されていて、日本でも少し遅れてはいたが、同様にSaaSが高く評価されてきていたから

  • 日本の教育領域は塾という大きな市場がある一方で、B2Cプレイヤーが多く、競争環境が激しくなかったから

  • スタディサプリ等、スマホでの学習は一般化している一方、学習時間の大半を占める、宿題・自学自習は依然として紙が中心だったから

  • 教育×セールスの竹内の強みが生きるから

竹内と畔柳は、当時まだリクルートにいた“部外者”である私の提案を真摯に検討してくれて、最終的にはB向けのプロダクト開発及び事業推進に舵を切ることになりました

そして、2018年5月にB向けの機能がローンチされるとほぼ同時に、私は本格的にファイナンスに向けて動き始めました

その時の売り文句としては、「オフラインに閉じていた宿題・自学自習のスマホ化」でした

その後、2018年11月にUB Venturesさんをリード投資家として、iSGS インベストメントワークスさん、ツネイシキャピタルパートナーズさんから、総額1億円の資金調達を実施させていただきました
(ここも色々ドラマがあるのですが、また別の機会に)

当時は売上もほぼない状態だったので、相場観としては多くても総額5千万円くらいが一般的な中、1億円という大きなリスクを取ってもらい、感謝してもしきれません
(実際問題、もし5千万円だったら、潰れてしまうか、かなり厳しいファイナンスを強いられていました)

いずれにしても、私の目論見通り進められましたし、そもそも資金調達自体、私にとって初めての経験だったので、大きな達成感がありました

一方で、この瞬間から

竹内・畔柳の、常人では持つことすら難しい、野心的なアイデア・ビジョンを、分かりやすくて見栄えが良い小さな箱に閉じ込めてしまったかもしれない

という、強い恐怖感が私の中に芽生えるようになりました

つづく・・・
(すいません、長くなってしまったので、シリーズA/Bは明日投稿します)

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