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いつかのメリークリスマスの「愛すること」を考える

星の数ほどあるクリスマスソング
その中のひとつ
いつかのメリークリスマス B'z
を思惟します
※あくまで、私個人の考察なので、違う意見があると思いますが、そこはつっこまずにお願いします
稲葉さんが著書『シアン』で、いつメについて述べてらっしゃいますが、その見解とは違う部分が多々あります。
あくまで、私個人の考察なので、ご了承ください

この歌は1992年発売の、ミニアルバム『friends』に収録されている一曲です。
アマリニモ有名なので、シングルと思っている方も多いと思いますが、friendsという、ストーリー仕立てのようになったアルバムの中の1曲です

大まかには、彼女がいなくなって時がたったクリスマスの頃に、いつか(彼女といた頃)のクリスマスを思い出す。という内容です

長くなりますが、歌詞を追ってみてゆきます

椅子は家庭の象徴

♪ 僕は走り 閉店まぎわ 
君の欲しがった椅子を買った
荷物抱え 電車のなか 
ひとりで幸せだった

彼女のリクエストで、椅子をクリスマスプレゼントに買う彼
椅子?
この椅子には、意味があると思ってます。
プレゼントというには、なんだか色気が無いのですが、椅子は「家庭」を象徴しているのでは無いでしょうか
自分用の椅子を用意するということは、その家に自分の場所を用意するということです。そして、それは、同棲では無く、恐らく結婚を示唆しているのでは無いでしょうか
同棲といえば、歯ブラシとか、パジャマとか、マグカップとか、それを暗示するものが沢山ありますが、椅子は大物です。場所がしっかり確保されるものなので、ここでは、結婚を、彼女は暗に求めたのでは無いかと考えます。
でも、多分、そんな深いことまで考えが及ばない彼は、彼女の欲しがってるものを買ってあげたということに満足して、ウキウキしながら、椅子を持って電車に乗って、浮かれています。満足して浮かれた様子は「ひとりで幸せだった」から感じられます。
どんな椅子を選んだのか、妄想するのも楽しいポイントです
椅子も洋服と同じく、どんなものを好むかで、その人の好みや生活スタイル、性格までも知ることができます。
ちなみに、椅子プレエピソードは、実体験だそうですが、どんな椅子を買ったのか、気になります。

過ぎ去った日々

この歌の歌詞は、大部分が過去形です。つまり、過去にあったことを、思い出していることになります。
「色褪せたいつかのメリークリスマス」という表現で、急に不安感が強まります
「色褪せた」は、キラキラしたもの(彼女との生活)が、そうで無くなった。のでしょう

家族になる
2番は、歌いながら帰路につく主人公から、変わらず浮かれた様子がうかがえます。家に帰ったら、彼女が美味しそうな夕食を作って迎えてくれます。
これは、1番の続きの出来事ですが、私は、椅子プレから月日が経ったクリスマスと考えます
2人は一緒に暮らしていて、だから、夕食を作って待っているのでしょう
ここのプレゼントは、椅子のような大物では無く、もしかしたら、アクセサリー系で、もしかしたらもしかしたら、この時点では結婚まではしてなくて、指輪をプレゼントしたのかも★
と考えると、私も嬉しくなってきます。
(「シアン』では、このプレゼントは、椅子プレと同日のことと記されていますが)

君がいなくなる

♪ 君がいなくなることを 
はじめて怖いと思った
人を愛するということに 
気がついたいつかのメリークリスマス

サビで、急展開があります
「君がいなくなる」とは???
今までの浮かれた感じから一転、衝撃的です。
次の
♪ 部屋を染める
ろうそくの灯を見ながら 
離れることはないと
言った後で急に 
僕は何故だかわからず泣いた

で、彼女が居なくなったことがわかります。
別れたのでしょうか?
私は、彼女は亡くなったのだと思います
「ろうそくの灯」で、私の脳裏には、教会の、遺体の周りに置かれる無数のキャンドルの灯りが浮かぶからです


ディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』の、最後のシーンで、教会に横たわる遺体の周りに、沢山のキャンドルが灯っていますが、「蝋燭の灯り」と聞くだけで、そのシーンが浮かんできます
だから、この歌の彼女も、恐らく亡くなったんだ。と。
この歌の中には、別れる要素となるものは、何も描かれていません。彼女がいなくなっただけです。だから、単に彼女と別れただけかもしれませんが、「君がいなくなることを」の歌詞からは、病気か何かで、時間が限られていることを知らされたのか、と考えらえます。
(歌詞の原案ノートには、ケーキのろうそくとあるので、そんな複雑な設定では無いようですが)

「離れることはないと言った」は、ご遺体とずっと一緒にいたいという彼の心情がうかがえます。
「僕は何故だかわからず泣いた」は、喪失感や哀しみや、色々なことがドッと込み上げて、泣いたのでしょう。悲しすぎます

ペプシのクリスマスCM

人を愛するということ

そして、彼女がいなくなって、初めて人を愛するということを知った主人公
椅子を買ってたころは、人を愛する本当の意味は、まだ分かってなくって、その頃は、言うなれば「恋」だったのでしょう

♪いつまでも 
手をつないでいられるような気がしていた
何もかもがきらめいて 
がむしゃらに夢を追いかけた
喜びも悲しみも全部 
分かちあう日がくること
想って微笑みあっている 

「全部分かち合う」からは、一緒にいるだけで楽しい、キラキラした時間が想像できます
きらめいた時間に、2人は将来の夢(将来も同じようにきらめいた時間?)をがむしゃらに追い求めて過ごしていたのでしょうか。
1番のサビでは、この頃の、2人のきらめいた時間が、あとに続く「色褪せた」との対比で、寂しさや悲しみが増します

2番では、君が居なくなることで、「人を愛すること」に気づきます

人を愛するってどういうこと?

キラキラと楽しい日々の中で、がむしゃらに働いていた主人公ですが、彼女はそんな彼を応援して支えていたのかもかもしれません。それが、彼女の愛であって、彼女がいなくなったことで、自分への、愛を知ったのかもしれません。
また、彼女がいなくなって、愛を向ける対象を失い、「人を愛する」ことは、相手を思いやることだと気づいたのかもしれません
つまり、主人公は、それまで、自分を満たすことが愛であると思っていたのが、彼女がいなくなることを機に、愛とは、相手を思いやることだと気づいたのでは無いでしょうか
思いやるとは、相手のことをリスペクトすることや、心配したり、応援したり、慈しんだり、さまざまなな思いが向けられることなのだと思います。

哲学的な解釈の「愛」とか、宗教的解釈の「愛」とか、まして作詞の稲葉さんが考える「愛」がどんなものなのかわかりませんが、「人を愛する」ことは、きっと、恋とは違うことなのでしょう。恋の最上級が愛ではなく、ゆえに「人を愛すること」は好きだけではない。と考えます

このように考察すると、椅子をかかえてひとりで居ても幸せだったのは、まだ人を愛することを知らなくて、自分のことしかなかったから、自分が満足することで、ひとりで幸せだったのだと考えます。
歌の中で、彼(主人公)の、心の成長を見るような展開を見ることが出来ます

現在

♪ 立ち止まってる僕のそばを 
誰かが足早に
通り過ぎる 
荷物を抱え 
幸せそうな顔で

歌の最後は、かつての主人公と同じような人がそばを通り過ぎてゆく、現在の風景で締められます。
この結末で、主人公は、何を思っているのか。
居なくなった彼女のことをひきずっているのか。それとも、荷物を抱えた人をみて、まだ「人を愛する」ことに気づいていなかった自分を重ねているのか。あるいは、プレゼントを抱えた人に、エールをおくっているのか
その解釈は様々だと思います。聴く側も、自分の状態によって、受け取り方が変わると思います。

2022年のB'z live frendsでは、この歌の終わりに稲葉さんが笑顔で「メリークリスマス」と言っていました
あの笑顔からは、悲しみをひきづる主人公の姿は、想像できませんでした。


いつメリの主題

この歌の主題は「人を愛すること」を知る主人公なのだと思います
極端ですが、クリスマスや、プレゼントの椅子や、彼女か亡くなったのか別れたのかなどというシチュエーションは、演出のイチブでしか無く、見所は、彼女が居なくなったことを思い出す主人公の心情ではなくて、「人を愛すること」って、何だ?と、主人公になって思案することが目標みたいな歌なのではないか。と。

2023年のB'z live-gym の有明公演の際、mcで稲葉さんが、「愛しています」と口にしました。その前の公演が中止となり、それを経て、その公演で口にした「愛しています」は、とても重い愛だったのだと思っています。
きっと、稲葉さんの、観客へのおもいが、いつもよりずっと複雑で、ありがとうだけでは足りないものがあったんだろうなあ。と
その時は、「愛してます」の言葉にただただヒャーーーと浮かれていましたが、後になって考えると、とても重いものが詰まってたのかな。と。このツアーで「愛しています」をmcで言ったには、多分、この日だけだと思います


そんなこんなで、「いつかのメリークリスマス」の「人を愛すること」について、考察しました。
長々とお付き合いありがとうございます。
「人を愛する」ことを考えるに、自分は、まだまだ全然、人を愛せてないなあと、痛いほどに感じました。未だ歌の中の彼の、椅子を抱えてひとりで幸せな状態です。自分ばかりで、他人をリスペクトすることまでいかない、、、未熟者です。
人愛するって、難しい。

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