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茶空間コーディネーター ch-bliss です 中国茶をたのしむ空間を日々考えています ここでは、茶席に思うこと、美術と茶席のことや、大学で研究した日本の美意識を踏まえて考える中国茶席のことを思惟し、記してゆきます

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最近の記事

鹿下絵和歌巻断簡 西行 

山種美術館の《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》を観に出かけた この和歌巻は『新古今和歌集』巻四「秋歌 上」の、西行法師の「こころなき…」から藤原家隆の「鳰のうみや…」までの二八首を、俵屋宗達の下絵に本阿弥光悦が書を記したもので、下絵には鹿が描かれていることから「鹿下絵」と呼ばれる 鹿は、秋をあらわす季語だが、秋になると雄鹿が雌を求めて鳴くことから、鹿といえば秋、そして切ない恋 というような連想ができる この和歌巻は鹿が描かれることから、和歌の内容を見なくても、秋の歌がしるされている

    • 鈴木其一《夏秋系流図屏風》の風景を楽しむ

      根津美術館が所蔵する 鈴木其一の《夏秋渓流図屏風》 2020年に重要文化財となり、その時は大々的に考察された展覧会がありました。 屏風について詳しく知りたい方は、そちらの図録などをご覧ください 今回、『夏と秋の美学 鈴木其一と伊年印の優品とともに』という展覧会があり、久しぶりに屏風をみたので、その感想などをnoteします 実物には、そこでしか見えないものがあります 絵の具の色や、素材の質感など、印刷と実物はまったくちがう印象になります また、屏風の場合は、平面ではなく、立

      • SAIHATE HOTEL って何処にあるの

        SAIHATE HOTEL 稲葉浩志『Peace Of Mind』2004年 収録曲 ホテルの歌といえば ホテルを舞台にした歌というと 『Hotel California 』Eagles 『リバーサイド』井上陽水 『時のないホテル』松任谷由美 が浮かぶ どの歌も不穏な雰囲気で、居心地良くそこに長く滞在するのは良くない気配が漂っている。 私見ですが、Hotel Californiaとリバーサイドホテルは、あの世へ行く前に滞在して、そこを出る時は、あの世へ行くときという内容

        ¥300
        • 燕子花図屏風の橋をあるく

          尾形光琳《燕子花図屏風》 有名な国宝の屏風で、年に一回、所蔵する根津美術館の庭の杜若が咲く頃に公開されます そんな屏風を今年もみにいきました はじめに燕子花図屏風について 紙本金地着色 六曲一双 (各)縦151.2cm 横358.8cm 尾形光琳(1658?〜1716) 京都の呉服店雁金屋に生まれ、弟も陶芸などで有名な尾形乾山 光琳は雁金屋の財力で放蕩三昧でしたが、雁金屋はまもなく傾き、光琳は40代に本格的に、絵師として画業をなす 《燕子花図屏風》は初期のころに描かれたと

          ¥300

          桜にみる無常観

          桜の花が咲くと、ニュースにもなるし、お花見で桜の下は賑わうし、最近ではこの時期にインバウンドの観光客がどっと押し寄せたり、古来より日本人にとって、桜は特別な花のようです 桜の、何がそれほど日本人の心を惹きつけるのか そのひとつ、今回は、桜にみる無常観について、少しnotoしたいと思います 無常観についての以前のnote↓ 「常に変わりゆく自然の姿に、儚い世のあり様や滅びゆく己を投影した。そこでは、満月より欠けゆく月や散る花など、消滅へ向かうものが多い。日本人は根本的に滅びゆ

          桜にみる無常観

          花唐草文螺鈿経箱 

          トーハクで開催中の「本阿弥光悦の大宇宙」展へ行きました 琳派の祖とされる光悦ですが、そこに焦点をあてた展示も研究も、他の琳派に比べると少ない。知らない部分が多い人なので、これは行かねば!と、早々に行きました 展示内容は、本阿弥光悦って、こんな人で、刀剣鑑定の家の人で、法華宗信仰が厚い人で、書も陶芸も凄いんだよ〜ということがよく分かります。が、琳派の祖と言われている、ぶっ飛んだ芸術総合プロデューサー的なことはあまりフューチャーされていないかな?という感じですが、私の見方が悪いだ

          花唐草文螺鈿経箱 

          日本の美意識 11

          こんにち「日本の文化」とされているものの多くが、もとは外国からの渡来品であり、それをリノベーションしたものである。 唐絵からやまと絵、漢字から平仮名、点茶から茶の湯、五節句にみられる催事など、日本の文化は、実に多くの渡来したものを自分たちに合うように変えて受け入れてきた。そして、そのリノベーションの際に材料として注入された感性こそが、日本文化の根本であり、「日本の美意識」であると考える。そして、それには「自然」が大きく関わっており、欠くことのできないものであるだろう。  我

          日本の美意識 11

          トーハク初詣で松をみる

          長谷川等伯《松林図屏風》 毎年、年始に公開される長谷川等伯の《松林図屏風》や、今年の干支の龍をモチーフにした美術品を見に出かけました。 《松林図屏風》は、その紙質や使い方などから、別のものの下絵ではないか。とか、屏風に仕立てるために切られてしまっているとか、色々謎多き作品ですが、我々は、今の姿を見て感じることが大切なのだと思います その湿潤な空気感 湿度120%ぐらいの湿気を感じる松林に、ただただ見入ってしまう。 受け取り方は人それぞれですが、私は、雨粒を感じないぐらい

          トーハク初詣で松をみる

          いつかのメリークリスマスの「愛すること」を考える

          星の数ほどあるクリスマスソング その中のひとつ いつかのメリークリスマス B'z を思惟します ※あくまで、私個人の考察なので、違う意見があると思いますが、そこはつっこまずにお願いします 稲葉さんが著書『シアン』で、いつメについて述べてらっしゃいますが、その見解とは違う部分が多々あります。 あくまで、私個人の考察なので、ご了承ください この歌は1992年発売の、ミニアルバム『friends』に収録されている一曲です。 アマリニモ有名なので、シングルと思っている方も多いと思い

          いつかのメリークリスマスの「愛すること」を考える

          キリストのミサ クリスマス

          近年、クリスマスのお菓子として、すっかりメジャーになったシュトーレン 毎年、何処のシュトーレンを食べるか、色々まわるのも楽しみです。 シュトーレン とは、ドイツ語の坑道の意味です。その形が坑道ぽいからとか その他に白い砂糖がまぶされた姿が、降誕したキリストがおくるみに包まっているようで、この時期に食べられます シュトーレンは、もともと、保存がききます。保存しておいたドライフルーツやナッツをハチミツで甘くして、冬至の際に、次に来る季節の願いをこめて食べたのがはじまりだそうです

          キリストのミサ クリスマス

          日本の美意識 10

          こんにち「日本の文化」と認識されているものの多くが、もとは外国からの渡来品であり、それをリノベーションしたものである。唐絵からやまと絵、漢字から平仮名、点茶から茶の湯、五節句にみられる催事など、日本の文化は、実に多くの渡来したものを自分たちに合うように変えて受け入れてきた。そして、そのリノベーションの際に材料として注入された感性こそが、日本文化の根本であり、「日本の美意識」なのである。   自然をもとにした日本の美意識我々の自然をみる眼は、古代には生死を左右するような、環

          日本の美意識 10

          日本の美意識9 さび

          「自然をもとにした日本の美意識」9 さび 「さび」は、寂しさや枯れたものに風情や趣を見出し、そこに「美」を感じる繊細な感性で、世の中のものは全て劣化し、朽ち果ててゆく運命にあるが、そんな時の経過と共に移りゆく姿や、いつかは消え去ってしまうであろう劣化が進んだものを、美しいとか風情があると感じる心とされる。「寂しい」、「錆びる」が転じた語である。 「さび」の語は『万葉集』において「さぶし」あるいは「さびし」としてみられる。 愛しと念ふ吾妹を夢に見て起きて探るになきがさぶし

          日本の美意識9 さび

          日本の美意識8 わび

          わび 「わび」は、欠けたるもの、粗相なものを愛で、余計なものを削ぎ落とし最小を目指した極限の美意識である。 村田珠光(1422頃~1502)による茶の湯にはじまり、千利休(1522~1591)が完成させたとする侘茶において、わびの精神が確立したとされる。 ※ 侘茶という名称は後世の者がつけたもので、この三名は侘茶とは言っていない。また、侘茶があってわびを説いたのでもない。わびの精神を取り入れた茶が侘茶といわれるものであり、いわばわびスタイルのお茶とか、わび流のお茶といった

          日本の美意識8 わび

          日本の美意識7 幽玄

          「自然をもとにした日本の美意識」幽玄 「幽玄」の語は、古くは中国後漢時代の『宝蔵論』や、『後漢書(240年ごろ)』などに用例がみられるが、主には仏教や老荘思想の用語で、その意味は「哲理や仏教のさとりの境地が深遠、微妙であること」(鈴木貞美・岩井茂樹 編『わび・さび・幽玄 ―「日本的なるもの」への道程』)である。 日本では上記のような仏法の用法で、最澄の『一心金剛解体秘訣』に「諸法幽玄之妙」という表現がみられる。 思想的用語に対して、情緒的美意識で、目に見えないものをあらわ

          日本の美意識7 幽玄

          やまと絵展 

          盛り沢山で、全部を観るのはかなり労力を要するやまと絵展 しかも、1から4期まで、展示替えがあるので、1回行っただけでは見れないものもあるし、内容の濃さにアタフタして終わってしまう その楽しみ方は、千差万別 人それぞれですが、私はこんな視点で見た。というのをあげたいと思います。 (これからですと、3期、4期の展示になるので、それに合わせるものをのせます) やまと絵展は、トーハクの平成館二階の全フロアで展示されています 先ず入って、この展示の趣旨などをザザッと読む。どんな展示も

          やまと絵展 

          飲中八仙図屏風 与謝蕪村

          「飲中八仙」とは、杜甫が八仙に因んで戯れに同時代の名だたる酒客八人を選び、『飲中八仙歌』を作ったことに由来する。 その八仙は、中唐初めの八人の酒豪(賀知章・汝陽王李璡・李適之・崔宗之・蘇晋・李白・張旭・焦遂)。 海北友松の図は、2隻で描かれたものだが、残念ながら一隻しか残っておらず、4人の仙人しかいない そして、飲んでいるのは、お酒とみられる。 もう、飲めないんじゃ〜というような会話が聞こえてきそうです これは杜甫の歌に沿った内容 こちらは、長沢芦雪の飲中八仙図 人々の中

          飲中八仙図屏風 与謝蕪村