マガジンのカバー画像

短歌と写真

60
短歌だけのもここに。
運営しているクリエイター

2015年2月の記事一覧

サバンナ

携帯の待受画面の赤子の名知ってしまえば終わりと思う

スーパーで親しき家族に出会うときわたし一人がサバンナにいる

おだやかな日常の景そのなかにごろんと見知らぬ若い女だ

人の子に寄せる目尻のやわらかさあなたがパパの顔になるとき

いつもの人と違うよねじっと吾を見る少年の目の潤いうつくし

聞くまいとしていた子供の歳告げるあなたの幼なじみの奥さま
#短歌

もっとみる

かぼちゃカレー

日替わりのかぼちゃカレーが食べたくて一駅歩く幸せもある

いわし雲ほたほた見上げる母娘につづき小春日和を追いかけてゆく

大人にはにほんご子にはネパール語で話しかけてるカレー屋の主人

窓際の特等席に降りそそぐ陽に赦されるまぼろしを見た
#短歌

もっとみる

コロッケ

遺伝子が惹かれあってる雨の夜 ワインの趣味すら違っていても

赤と白ほどよく混ぜて「ロゼ」なんて許されるのは天国だけね

どれくらい好きってあなたがコロッケを食べるのじっと見ちゃうくらいよ

愛されに愛されたので背骨まで美味しくお召し上がりいただけます。

眠っても夢で会えるね今夜こそキリンの檻にしのびこもうね
#短歌

もっとみる

生かされて

名残とて毒飲み干せばまた一度ロミオとう名の少年が死ぬ

寄り添いていのち動かす声たちは愛と呼ぶにはあまりに強く

夢は夢うつつも夢の世界にて宿縁のみを真と思う

滅びゆくほどあたたかな板の上ただ生かされて生かされてをり
#短歌

もっとみる

すくと立ち遠からぬ春待つとせむ ひとに傷つきひとに救われ #写真 #短歌

さくら海老

一つしか共通点のない君と紙ひこうきの旅に出たいよ

あかねさす横顔やさしああ君はロミオのように吾を愛する

真夜中のかき揚げ丼のさくら海老最後に食べるさみしいの音

「あと一本吸わせて」君のマルボロが二、三ミリだけ長ければいい

面倒な女にだけはなるまいと分子模型を組み立てる夜
#短歌

もっとみる

ミニーマウス

二人きりは許されぬらし助手席のミニーマウスと目が合う真昼

願いごと叶ってしまえり今日だけは触れても冷たくない薬指

右側へ乗り込むことに慣れてきた晴れ女風女いやな女

来年のきょうは日曜 素面でも約束だけはできてしまうね

プールサイドのようにけだるい朝が来て君の残したポカリスエット

少女ではいられないからそのかわり百年経っても少年でいて
#短歌

もっとみる