【エッセイ】荷台に乗った飛行機

2020年3月。
日々仕事に忙殺されていた。
本当に忙しかった。

会社から家は90分程度。しかし会社を出れたのは夜中の1時。
当然終電は過ぎていた。

タクシーに乗り込み、行先を伝える。
明朝から出張だったので、一分でも多く寝たいのが本音だったが、タクシーの中では基本的に寝ない主義。
近くの窓からぼーっと外を眺めていた。

眠気と戦っているときだった。突然運転手さんが大きな声をあげた。
「うわー!運転手になって長いけど、こんなのはじめてみたよ!」
正面をみると、なんと、飛行機が輸送されていた。
トラックの荷台に乗って運ばれていたのだ。

ジャンボジェット機にしては小さい。なんだろう。個人の所有機?にしては大きい…。
よくわからないけど、なんだかキラキラしてとてもきれいだったし、かっこよかった。
私も思わず興奮して「仕事遅くまで頑張ってよかったです!」と言った。

疲れ切っていたので野次馬精神もなく、写真は撮らなかった。
ただただ、クリスマスのイルミネーションを見るかのような気持ちでゆったり眺めた。本当にきれいだと思ったのだ。

そして最近、この飛行機が本当の本当に貴重なものであったと知った。

これ!みたやつ!!!

写真も撮っていないので、他の人に証明しようがないのだが、日にち的にも、見た目的にも、ルート的にも私が見たのは間違いなくこれ。

そんなにすごいものだったのか。

やっぱり、仕事頑張っていた私へのご褒美だったんだなあ、と思う。

写真はないが、陸を走るキラキラした機体は、いまでも目に焼き付いているのであった。

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