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読書感想文 『わたしは異国で死ぬ』

『わたしは異国で死ぬ』 カラー二・ピックハート (訳:髙山祥子)

図書館であらすじを読んで、ウクライナが舞台の小説かあ、ウクライナ情勢とか全く知らないけど、少しでも勉強になるかな、と思って借りてみた一冊です。
実は読むのに2週間ほどかかってしまいました。。文章にも、いわゆる相性的に読みやすいものとそうでないものがありますよね。見事に相性が悪かったようで、読むのに苦戦しました。。

表紙。
ウクライナの国旗を想起する色に塗られているのは、作中にも出てくるアップライトピアノ。

さて、そんな本作ですが、内容はユーロマイダン革命、いわゆる尊厳の革命の真っただ中から始まります。

ユーロマイダン革命とは、ざっくりと言えば、2013年末頃のウクライナ第四代大統領、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチによる親ロシア的な政策の強行に対して、民衆が結束し、マイダン・ネザレージュノスチ(独立広場)に約2,000人が集まったのを皮切りに起きた大規模な抗議活動のこと、だそうです。
マイダンに集まった人は11/22の始まりからたったの2日でおよそ50,000人から200,000人まで膨れ上がり、最終的にはウクライナの特殊部隊であるベルクトが非武装の市民を攻撃、103人の市民と13人の警察官の尊い命が失われる形となりました。
結果としてヤヌコーヴィチはロシアへ亡命し、ウクライナはこれを解任、新たな大統領としてペトロ・ポロシェンコ大統領を迎えます。
さらにこの間に親ロシア派によるウクライナ内部での分裂も発生し、クリミア半島(ウクライナ国内でも南東側、黒海とロシアに面する)がロシアに合併される形となります。※これはロシア側による主張であり、国際的には大半の国家がこの合併を認めていないことをここに明記します。

といった具合で、激動です。上記のクリミア半島の件までがたったの半年で起こっています。このユーロマイダン革命の最中を生きるウクライナに住んでいたり、所縁がある人々の群像劇という形で物語は進んでいきます。

内容は主に4人の男女の物語が一つにまとまっていくようなもので、読後感はよく素晴らしい物語だったのですが、とにかく読みづらかった印象です。
というのも1つ1つの文が短文で、句点「。」が多くて読むときに眼が流せない感じなんですね。その上で詩的、あるいは聖書的と思えるような表現だったりが出てきたりして、なかなか辛かったです。
個人的には、文体がちょっと肌に合わない感じでした。。おかげで読み切るのに2週間ほどかかりました。。
また、基本は革命の中で起きる人々のロマンス的なシナリオなので、個人的にそのシナリオの中で感銘を受けるだとか、深く考えさせられる、というようなことはなかったかな、と思いました。
物語の中では「親を失った子」、「子を失った親」という構図が多用される印象があったな、というくらいです。

物語中でチョルノービリ(チェルノブイリ)の原発事故、1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原子力発電所4号炉の爆発事故と、その地に戻った人々の暮らしや話について出てきます。
実は以前読んだパオロ・ジョルダーノの『タスマニア』でも出てきました。作中ではたしか主人公の友人がツアーか何かで訪れて、なにか心細いような、神秘的なものを感じた、みたいなことを言っていた気がします。
これは日本でも同じような問題がありますよね。東日本大震災における福島第一原子力発電所の事故です。この事故の影響で福島県には現在でも帰還困難区域が発生しています。
こうした話を受けた上で、それでも自分たちの住んでいた場所に帰りたいと思う方々がたくさんいて、物語内でも帰還者といったような表記で描かれています(本記事の執筆途中で図書館へ返却してしまったため、正しい表記はもう少し違った気がするのですが。。)。
自分は東日本大震災発生当時、都内の高校生でした。学校の比較的仲の良い教師の方が反原発を主張していたのを覚えています。自分は当時からひねくれていたので、反原発の上でそれに代わる電力の供給は何で行うのですか?と疑問に思っていました。それはソーラーパネルによる土壌汚染の結果を見ている今でも同じです。
それになにより、自身で生活を行うようになって電気代の高さを痛感しています。これが更に上がると思うと、ちょっと厳しい。かと言ってじゃあ電気を使わなければいいじゃないか、と言われるとなかなかそうもいかない。パソコンもスマホも必需品に近いし、なにより今住んでいる家は軽量鉄骨で石油ストーブ禁止。。
そして今調べたら築26年。。耐用年数も考えるとあと4年以内には引っ越しをしなくては。。宮城は地震が多いから。。
閑話休題。とはいえ電気問題、日本という地震大国で原発をたくさん稼働させるのも。。という気持ちもある。個人的には、こうしたエネルギー問題の解決にこそ血税を注ぎ込むべきでは、なんていう風にも思ってしまいます。
いや、政治的な話は詳しくないですし、予算案に目を通している訳でもないので憶測を多分に含んだお気持ち表明でしかないのですが。

といった具合でウクライナの持つ色々な問題をなぞりながら、そこに生きる人を描くような作品であり、個人的にはその革命の動きを物語として読めた、という点で素晴らしかったな、と感じました。
ただ文体との相性が悪く、物語の持つテーマ性などを上手く掴めなかった気がするので、そういった点において少し反省しています。。これも経験だな、と。

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