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詩 "ある addiction(依存症)の唄"

うそは甘いな 優しいな
評判はのぼるし 敵は沈む

うそにお船を浮かばせて
行ってみたいな 夢の国

ミルキーはママの味
嘘はお袋の味
懐かしくて 安心で
あったかくて 誇らしくて

やめられない 

とまらない

今も聞こえる
あのお袋の声
僕に人生を教えてくれた
優しいお袋
嗚呼、自慢のお袋

タケシちゃん すごいわね!
ママ、思わずご近所に自慢しちゃった。
やっぱりタケシちゃんはママの子ね!

もしかしたら天才かしら?
あら、私ったら何言ってるのかしら。
浮かれすぎね、恥ずかしい。
でもねママ、タケシちゃんはもっとできると思ってるの。
次も頑張るのよ!期待してるわよ!

僕を見つめる母の目が 妙に光る
瞳孔が開きすぎているのか?

いや、これは豹の目だ
捕食者の目だ

この目が いつも見ている
桜の蕾がほころび始める 麗らかな春の日も
渡り鳥が列を組んで帰っていく 寂しい秋の日も
この目に 僕はいつも見られている

その日の午後
桶と柄杓を持って 石段を上った
苔さえも乾ききった墓石に 
チョロチョロと水をかける

母 享年30歳
僕 2歳

お母さん
いつ 僕から離れなくなったのですか


※addiction : 中毒、依存症

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