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第10回: 関西アカデミアがCGLLで教育を変える。Member MeetUpをリアルで開催!

コモングラウンド・リビングラボ(以下、CGLL)のパートナーの活動や取り組みを紹介するインタビュー。第10回目はいつもと内容を変えて、CGLLがメンバー同士の交流や情報交換の場として定期的に開催しているCGLL Member MeetUp=MMUについて紹介いたします。6月20日に開催された第14回目となるMMUには、会場とオンラインもあわせて35名の方々に参加いただきました。終了後に行われた懇親会はリアルでの交流と新たな出会いを楽しむ機会になり、大いに盛り上がりました。

CGLLで久しぶりにMMUが開催されました!

# 連携が期待される関西アカデミアの取り組みを紹介

CGLLでは参加メンバー同士の交流を深め、情報交換の機会となる会員限定イベントMMUをオープン2021年5月から開催してきました。コロナの影響でこれまで多くはオンラインで集まり、メンバーから様々な取り組みや活動の状況などを報告いただき、CGLLの運営についても活発に意見交換を行うなど相互理解を深めてきました。
 
そして第14回目となる今回は、コロナの影響が緩和されたため、リアル開催が実現し、会場のCGLL実験場にはエヴァンジェリストであるgluonの豊田啓介さんをはじめ、たくさんのメンバーの方たちに集まっていただくことができました。

ご講演の様子

今回のプログラムは、CGLLと協力関係にあるアカデミア分野の活動を紹介する機会として、「大学とコモングラウンドの連携の可能性」をテーマに、立命館大学常務理事の山下範久氏、アドバイザーである大阪公立大学の阿多信吾先生、新たにアカデミアメンバーとなった大阪工業大学の佐野睦夫先生の3名にご講演いただきました。
 
またCGLL運営委員会からの活動報告と決算報告もこの場で行われ、メンバーのみなさんと情報共有を行いました。

# リスキリング教育の場としてのデジタルツイン

今回の講演では新キャンパスの開設や社会人向けプログラムの実施などで注目されている、各大学の取り組みについてご紹介いただきました。いずれの取り組みもコモングラウンドと親和性があり、今後CGLLと共同で実証実験を行うといった活動につながることも期待されそうです。
 
最初に登壇された大阪工業大学の佐野先生からは、「社会人のリスキリングの構想とコモングラウンド活用の可能性」と題して、この9月から新しく始まる、社会人も参加できるリスキリングをテーマにしたプログラムが紹介されました。

佐野先生ご講演

文科省が公募する「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」に採択された「スマートマニュファクチャリングに向けたDXイノベーションリーダー人材育成プログラム」は、スマートファクトリーの実証を特徴としており、キャンパス内にある大阪工業大学ものづくりマネジメントセンターで模擬生産ラインなどを体験し、ビジネス面では大阪商工会議所や大阪信用金庫らと提携して、より実践的な学びの場を提供します。プログラムの中にはデジタルツイン技術の検証もあり、CGLLで実習することが検討されています。
 
また、大学にはデジタルツインを実験するスマートラボもあり、拡張現実シミュレーションや3Dデジタル空間での物体認識、ドローンのケータリング実験などが行われています。佐野先生は「ラボの機能としては実用面だけでなく、居心地がよくアイデアがたくさん湧くような、エンゲージメントの高い場所にすることを目指して学生と一緒にいろいろアイデアを考えている」と言い、それらの活動はCGLLにも影響を与えてくれるかもしれません。

# 大学はコミュニケーションで出来ている

続いて、立命館の山下氏からは「ソーシャルコネクティッドキャンパス構想とコモングラウンドへの期待」と題して大阪いばらきキャンパスが目指す、2030年以降の社会を見据えた新たなキャンパス像と教育内容が紹介されました。

山下氏ご講演

 
コンセプトとして、リアルとバーチャルの融合、クリエイティブーオリジナルな学び、グローバルなステージにおける研究の追求、橋渡し研究と地域共創という4つの柱があり、ソーシャルコネクトを重視した、より多層化、多元化、力動化するコミュニケーション空間づくりが進められています。
 
「大学でやっている全てはコミュニケーションで出来ており、その基盤が物理的に変わる中で、教育や研究も次第に開かれたダイナミックなものになりつつあります。あらゆる物や人との関わりが学びになる中で、新しいつながりをどのように作れるのかを考えています」と山下氏は説明します。
 
CGLLとの共創もその一つで、スマートシティ向けのサービスやアプリケーション開発を、キャンパスと相互にフィードバックすることなどが想定されています。すでに共創の種も仕込まれており、その内容がMMUでも発表されるかもしれません。

# アプリ・ネイティブ思考の人材育成を目指して

最後に大阪公立大学の阿多先生が「データ利活用と森ノ宮キャンパス〜スマート社会の実現に向けて」と題し、スマート化の考え方や大阪スマートシティパートナーズフォーラム(OSPF)と進めるデータ利活用プロジェクトなどが紹介されました。

阿多先生

最近はノーコードやChatGPTの活用で経験がなくてもアプリ開発ができる環境が整いつつあり、大阪公立大学ではさらに一歩進んで、いろんなことづくりの原点としてアプリを開発する”アプリ・ネイティブ思考"を持つ人材の育成を目指しています。さらに、アプリを作った後に使い続けられるようにする仕組みをキャンパス内に設け、周囲や社会に広げるエコシステムづくりも検討され、ハッカソンも開催しています。
 
阿多先生はCGLLとの連携として、「いろんな課題解決をしたいと思う人が学校だけでなくたくさんいるので、とにかく現場でみんな一緒に何かやっていきたい」とし、キャンパスでの取り組みをパイロットにした将来につながる取り組みも考えられるのではないかと話されていました。

# スキルやコミュニケーションをデータ化する意義とは

講演後はエヴァンジェリストの豊田氏も加わり、4人でパネルディスカッションが行われました。各大学からはCGLLとの共創の可能性がいろいろ提案されていましたが、具体的にどのようなことができそうなのか、いろいろ意見が交わされました。
 
CGLLにはセンサーやカメラ、ロボット、モビリティなど様々な設備があり、コモングラウンドをキーワードにいろいろな実験が行われています。そこでできることとしては、人の動きや環境データの収集などがあり、「佐野氏が講演で話されていたスキルや働き方もデータ化して集積すれば、共有したり伝達したりすることが可能になるのではないか」と豊田氏が質問しました。

パネルディスカッションのご様子

佐野先生はスキルのデータ化は可能だと回答した上で、「データとして扱う場合、まず見える化して振り返りができるようにすること気づきを与えられるようにするのが一番のポイントになる」とコメント。「次にバーチャル空間で繰り返しシミュレーションするなど、見える化したものを活用した教育を考えるのもこれから必要になるかもしれない」と話します。
 
阿多先生も「スキルをデータ化することで、見えないところや認知外の部分も可視化できるので、技術が複雑になり1人で対応できないところをアシストする場合にも役立てられるのではないか」と補足します。山下氏も「リアルで何かをしている時に、そこでやりとりされているフローの束がどういう構成になっているのかの中身は、デジタル化以前には分析的に意識される契機が乏しかったので、測ることによっていろいろわかるだけでなく、組み合わせによって何ができるかも判断が可能になる」とコメントしました。
 
その後も、データ化されたスキルがロボットにも適応できるのか、コミュニケーションを測ることはできるのかといった興味深い話が続き、話題になっているChatGPTの活用やAIの今後についてもなどへも話題がどんどん拡がっていきました。
 
最後にまとめとしてCGLLにこれから期待することを3名の登壇者に回答いただきました。
 
佐野先生は「データは空間と同時に人間の生体情報などをセットで捉えることでさらに価値が生まれると思っているので、それらをデータベースにしてオープンデータで使えるようにできるのではないか」とコメント。
 
山下氏は「データは測り方や実験空間の作り方によって発見されるものはたくさんあり、多様な出会いやつながりからより多く発見されるものなので、今後もCGLLとぜひ共同関係を築いていきたいと思っています」とこれからの活動に対する期待を述べられました。
 
阿多先生は「世の中が便利になって人が怠け者にならないように、テクノロジーとの向き合い方を考える場としてCGLLとのつきあいを考えていく方向もあるような気がします」と話し、その言葉からリアルで集まれるようになったメンバーの方たちが一緒になって、これから意見を交わす場にしていきたという思いが感じられました。
 
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CGLLでは今後もメンバーの方が集まり、交流できる機会としてMMUの開催を続けてまいります。今後の活動の刺激になる新鮮な話題や情報を取り上げ、意見交換も積極的に行いたいと考えていますので、テーマやアイデアがあればぜひお寄せください。
 
なおCGLLでは新たな仲間になっていただけるメンバーを募集しています。ご興味のある方や質問はhayashi-masayuki@nkc-j.co.jpへお問い合わせください。

プロフィール:
◆佐野 睦夫 氏
(大阪工業大学 情報科学部 情報メディア学科 学長補佐・特任教授)
◆山下 範久 氏
(学校法人立命館 常務理事 企画担当、立命館大学 グローバル教養学部 教授)
◆阿多 信吾 氏
(大阪公立大学 学長補佐 情報・データ戦略、大学院情報学研究科 教授)
◆豊田 啓介 氏
(コモングラウンド・リビングラボ エヴァンジェリスト)