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第11回:コモングラウンドで自己位置推定機能を強化し、安心安全な自律モビリティ社会を実現!

コモングラウンド・リビングラボ(以下、CGLL)のパートナーの活動や取り組みを紹介するインタビュー。第11回目は先日CGLLで行われた、ロボットを使ったデジタルツインの連携の可能性を検証する実証実験について紹介いたします。
 
実験を実施した中西金属工業株式会社(以下、NKC)、IDEC株式会社(以下、IDEC)とCGLLメンバーの株式会社きんでん(以下、きんでん)から、今回の取り組みをはじめたきっかけや実証実験の内容などをお話いただきました。

インタビュー風景

#デジタルツインを活用したロボットの運用を検証

CGLLでは参加パートナーのみなさんが様々な実証実験を行ってきましたが、今回実施された「CGPFデータを利用した従来のSLAMの機能拡張」と題した実証実験は、リアルとバーチャルをつなぐCGPF(コモングラウンドプラットフォーム)を活用し、ロボット掃除機から自動運転まで活用されている、自律走行に必要な技術の一つであるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping=スラム)をどのように使えるのかを検証しました。
 
既存のSLAMを搭載したロボットは、カメラやLiDARを使って周囲をスキャンすることで環境をマッピングし、それをもとに走行したり、障害物を避けたりします。ただし、それだけではカメラの死角になっている部分の空間把握ができず、ロボットの死角からの急な飛び出しや人混みによる走行経路の封鎖などといった状況に対応することができません。
 
コモングラウンドはそうしたリアルの状況を、別の方法で収集したデータなどと組み合わせてバーチャル空間にマッピングを行い、より確実に障害物を回避するといったことができるようになります。CGLLではコモングラウンドとロボットとを連携させることができるプラットフォームがあり、それらはゲームエンジンを利用してコントロールすることができます。

技術的な詳細はここでは省略しますが、実証実験ではSLAMの機能を搭載したリアルタイム走行型ロボットを使用し、CGLLに設置されているカメラ映像と3D空間データを使ったデジタルツインの情報を組み合わせるシステムを構築。それを利用して、ロボットを目的どおりにコントロールしてみるところまでを行いました。

#工場の自動化、スマートビルディング、将来に向けた一歩先の動きを考えたい

今回の実証実験に参加した2社とMeetUpに参加した1社にそれぞれ話を伺いました。
NKC:
弊社では人口減少によりロボットの需要が高まる一方で、ロボットを作ったり設置したりするメーカーやベンダーも人手が不足し、デジタルツインを使って開発や設置、運用の効率化を図る必要があると考えていたことが参加の大きなきっかけです。主にCGLLの環境データを利用してロボットを制御するソフトウェアの開発について実験を行いました。

今回はロボットの操作にゲームエンジンのUnityを使っているのは、開発やコントロールのインターフェースが使いやすいことが理由です。技術的な敷居が下がり、PCやスマホなどクロスプラットフォームに対応しやすく、様々なユースケースに柔軟に対応しやすいエンジンだと考えています。

IDEC:
弊社は大阪で制御機器の製造・販売を行っており、機械と人とのインターフェースであるスイッチやタッチパネル、またそれらを制御するコントローラなど、主に工場などで活用いただく製品を多数ラインナップしています。また、人と機械の関係性の変化に対応した最適なインターフェースの実現に向けて「HMI-X(Human-Machine Interface - Transformation)」というコンセプトを掲げ、人々の安全・安心・ウェルビーイングの実現を目指しています。このコンセプトにはコモングランドの考え方が含まれており、その実験施設であるCGLLを活用したモノづくりを行うために半年前に参加しました。

今回の実証実験では、今後さらにロボットの活用によって加速する工場の自動化に対し、人々の安全・安心を確保する方法を見つけることにフォーカスして参加しました。主に最近取り扱いを始めたAMR(自律走行搬送ロボット)構成製品(下図)を使って、デジタルツインとの連携機能を検証しました。

きんでん:
弊社は総合設備工事会社ですが、将来的にスマートビルをはじめとした建物に必要な新たな設備としてロボットを捉えていく必要があると考えています。CGLLの活動は、そのヒントになると考えており、今回の実証実験のように、実際の活動を通じてインスピレーションを得たいと思っています。

#実際に動かして検証できる場があることのメリット

デジタルツインは大手でなければ取り組みが難しい技術だと思われていますが、CGLLには部分的な技術だけでも使ってみることができるよう、最低限の設備が整えられており、短期間で実験を行うといったことができます。今回の実証実験はその一例で、2〜3カ月の準備で実施されており、そこではどのような課題やメリットがあったのかを伺いました。
 
NKC:
システムの開発では各種APIを介した通信やゲームエンジンの使用も含めて初めて取り組む技術が多く、その点はCGLLの主要メンバーでありプラットフォームの開発も担当されている竹中工務店さんに相談するなどして解決しました。他にもCGLLのネットワーク内での通信が上手くいかない時があり、その時は身近に詳しい方がおらず時間がかかったので、協力者の存在は大事だと感じました。
 
IDEC:
弊社としてはまずCGLLについて知るという目的で実証実験に参加しました。設備には空間と人を解析するカメラがあり、データを蓄積する仕組みも使えるというのがわかり、自分たちで自由にカスタマイズできる土台が準備されていることに感心しました。
 
実証実験は、NKC様と協力しながら企画を作り、CGLLの使い方も教えていただいたので、迅速に立ち上げることができました。CGLLのカメラ、AMRのLiDARセンサー、デジタル空間を連携すれば立体的に位置データを把握でき、より正確な衝突検知ができると期待しています。なによりも実際に動かしてみて確認できることが重要だと感じました。
 
きんでん:
実のところ、CGLLで何ができるのか、その全体像はよくわかっていませんでした。しかし、実証実験の情報を共有していただいたことで、どのような設備を使って、何を実現しようとしているのかを理解することができました。 実験の当事者から直接話を聞く機会を得る場に参加できたことは、とてもよかったと思っています。

#経験を共有できるプラットフォームの構築にも期待

最後に参加されたみなさんに今回の経験を今後の活動にどうつなげていきたいかといったことをお聞きしました。
 
NKC:
アイデックさんがおっしゃっていたようにコモングラウンドを活用すれば、環境側のセンサーから点群を取得し、ロボットがリアルタイムに部屋全体の地形を把握することができます。エンターテインメントの用途であればその場にいる人がどこにいるかを把握して、バーチャルに反映できるVRコンテンツみたいなものができるかもしれませんし、現時点でゲームエンジンを使っているので、ロボットに限らずいろいろなサービスに応用できるでしょう。
 
実証実験の結果に関しては今後機会があれば発表しますが、現時点の印象ではロボットが空間を認識して自律運用するにはまだ改善点が多い気がします。その点については様々な知見を持つみなさんと連携したいですし、成果物を各社が積極的に他社と情報交換するのはなかなか難しいと思いますが、得られた情報を共有できるようにしたいと考えています。
 
IDEC:
今回の経験から、デジタルツインと連携するシステムを使い、安全を確保できるような事例を作ろうと考えています。CGLLでロボットを活用するプラットフォームを構築できれば、同じ考えを持つみなさんと一緒にもっといろいろなことができるのではないかと思っています。
CGLLの使い方をもっと理解し、今後は弊社のさまざまな製品とも連携させ、新しい価値を提案できるよう、面白いことにチャレンジしていきたいと考えています。
 
きんでん:
現状、ロボットは、コストパフォーマンスの面で清掃や警備など、単純作業に限られてしまいます。しかし、CGLLのような場での実験により、ロボットの利用環境が高度化し、より複雑な作業にも対応できるようになれば、用途の拡大が期待できるので、建物設備との関りも増えていくのではないかと考えています。
 
CGプラットフォームの仕様は、本活動や運用の中で形成されていくものかもしれませんが、誰もが簡単に使えるところであってほしいと考えています。総合設備会社として異なる側面から情報共有していけるよう活動に参加していきたいと思います。


ー今後もnoteではCGLLで行われている様々な活動を報告していきますので、ぜひ参加を検討する上で参考にしてください。ー

プロフィール:参加者一覧(順不同) 
IDEC株式会社 塩路さま
中西金属工業株式会社(NKC) 山千代さま
株式会社きんでん 竹沢さま