プロペラ

あこがれの街で

そこは人生の節目に訪れる街だった。

九州の田舎に住む10代の若者にとって「福岡」という街は、輝いていた場所であった。

まさに、あこがれの街。

プロペラの小型飛行機に乗って行く特別な場所だった。

先日、その街を訪れる機会があった。「超実践セミナー」に参加することを決めたからだ。

福岡という街は、幼なじみのホームタウンであり、学生時代にボランティアをしながら夏休みを過ごした場所でもある。住んだことはないが、旅で訪れた以上に親しみを感じている大好きな街なのだ。

九州の実家に帰るタイミングも重なり、超実践セミナーへの参加に迷いはなかった。

この旅に、セミナーへの参加に、たとえようのない強い力、ご縁のようなものを感じながら、私はその日を待ちわびていた。

このセミナーは、「頑張っているのに結果に結びついていない人に足りないのは、たいてい文章力ではない」という観点でプログラムが構成されている。

コミュニケーション、マーケティング、タイムマネジメントといった内容で、実際に受けてみると、ライターとして「ハイレベルな域」に自分を高めるには必要なスキルばかりだった。

思春期の私にとって、福岡という街は、あこがれではあったが、頑張ったら住むこともできるのではないかと思わせてくれる街だった。

ライターとして伸び悩む私にとって、今回のセミナーは、トップライターにはなれなくても、ちゃんと稼げるライターにはなれるのかもしれないと思わせてくれる好機となった。

これまで何度も福岡には訪れている。

将来の進路に迷った学生最後の夏。

独身最後の里帰り。

ハードワークで疲弊し、こころが折れてしまった冬。

何かの節目には訪れてきた街だ。

その度に思うのは、「ハード面は都会だけど、ソフト面は田舎っぽさが残る」所だということ。都会的な街並みのなかに、人の温かさを感じるのだ。何気ない会話の中に安らぎがある。

海も近く、山も近い。

近代的な建物と歴史的史跡とを身近に感じ、過去から未来を縦横無尽に行き来できるようなパワーが眠っているような気にさせてくれる。

最近の私は「停滞していた」というほどではないけれども、川の淀みにはまり、滞留していた木の葉のようでもあった。

今回の旅では、人生の流れが不意に変わり、木の葉が川の流れの中へと再び押し戻されるような、そんな感覚を得ることができた。

あこがれの街で。