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自然災害を乗り越えていく

晴天の下、工事は順調に進んでいった。

本日、台風の被害を受けた家の補修工事が行われていたのだ。近隣でブルシートがかけられたうちの最後の一軒だった。

昨年9月、台風15号が通過した直後、我が家からの視界に入る家のほぼ全てにブルーシートがかかっていた。

それぞれ家屋の修理が進み、ブルーシートが徐々に減っていったものの、一軒だけ残っていたのだ。

修理業者が間に合わないだけでなく、修理の費用を工面できない人もいる。個々の事情があるのだ。仕方ない。

そう思ってはみたものの、ブルーシートが目に入るたび、気持ちが沈んだ。台風の恐怖が思い出され、無力感を覚えることさえあった。

目の前の現象に囚われないようにしようと、想像の力を借りて、ブルーシートがない状況を思い浮かべようとした。

ブルーシートの下にあるであろう「瓦屋根」の可愛らしい家。かつての姿を想像しようとしてもダメだった。台風以前の景色がどのようなものだったか思い出せなくなっていたのだ。

それどころか「今日もブルーシートが乗っているな」と、ブルーシートを確認してしまう癖がついていた。知らず知らずのうち、嫌な景色を見ることが日課になってしまっていたのだ。

台風の季節を目前に控え、ようやく屋根の修理は終わった。剥がれ落ちていた軒天もキレイに補修され、屋根全体が姿を現している。

可愛らしい家が蘇り、私の心も晴れやかだ。

もう確認すべきブルーシートはない。

嫌な体験を呼び起こす「ブルー」はないのだ。

市中に出れば、ブルーシートがかけられた家はある。解体待ちと思われる崩れかけた建物も散見する。だが、我が家から見える景色にはブルーシートがかかった家はない。

昨年、9月からの鬱陶しい気持ちが、ゆっくりと解けていく。

台風15号の被害に遭い、いろいろと嫌なモノを見聞きした。不安で眠れなかったこともある。人間が一番恐ろしい生き物だと実感することもあった。

日本は、「自然災害からの復興」をしている地域が、常に存在しているような状況だ。

誰がいつ自然災害の被災者になってもおかしくない。つまり、また同じような被害に遭わないとも限らないのだ。

もしかしたら、また同じような被害にあうかもしれない。仮にそうなったとしても、また同じように乗り越えていきたい。

明日の予報は晴れ。

青空を見上げるのが楽しみだ。

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