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コウモリの姿。直に見えなくても信じること

普通の生活では気づきにくいこと。世の中には案外あるものだ。

夫がバットマンの歌を口ずさみながら帰宅した。なんだろう?と不思議に思って尋ねると、家の前にコウモリがたくさん飛んでいるのだという。

まさか⁉

私は疑ったのだが、「百聞は一見にしかず」で外へ出てみると、いかにも漫画から飛びだしてきたような「コウモリ」っぽい飛び方をしている黒影がいくつか見える。

それでも、私は信じなかった、コウモリが近所にいるなんて。

◇◇◇

あれ以来、私は、夕方の空を見上げては、コウモリらしき影を見守った。

本当にコウモリかもしれない。きっとそうなんだろう。時の流れとともに、コウモリの存在を信じるようになった。

うちの近くにはコウモリがいる。実際に姿は見たことがないが、きっとそうだと信じられるほどに、特徴ある飛び方をする黒い影を数多く見てきたからだ。

◇◇◇

今年の夏のこと。

夜明け前に窓の外を見ていたら、不思議な黒い物体が庭を這いまわっている。なんだろうと不思議に思い、外へ出てみると、コウモリであった。

空が白み始める間、物陰を求めてコウモリは地面を這っていたのだが、結局、物陰らしき場所を見つけることができず、その場でうずくまってしまった。

私は、コウモリに触らないように気をつけながら、空き箱へと移し、暗くてジメジメとした外部の流しの下へと置いてみた。しばらくすると流しを支えるコンクリの部分にペタっと逆さになって張り付いているコウモリを確認。

きっと大丈夫だなと思ったが、念のため、夕方薄暗くなってから見に行くと、その場にコウモリの姿はなかった。

◇◇

毎日の生活の中で、幸せとかラッキーとかそういうものも、どこかコウモリの姿に似ているかもしれない。

直(じか)に確かめられなくても、遠くからなんとなくの雰囲気で存在を信じる。

「信じる」ってだいじだな。

偶然目の前に現れ、夕暮れともに闇に消えていったコウモリの姿に、気持ちがほっこりと温かくなった。