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セテラ作品の思い出⑪ 巨匠ワイズマンとの出会いは・・・

ドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマンは、日本でも新作が出るたびに過去の作品の特集上映が行われるほどに、根強い人気を誇る監督です。セテラでは1996年の『コメディ・フランセーズ 演じられた愛』をまず配給して、その時がワイズマン作品との最初の出会いでした。モリエールの家と呼ばれる300年以上の歴史を持つフランスの王立劇場、そこにワイズマンのカメラが入り、3時間45分、コメディ・フランセーズのすべてを見せながら、フランスの誇りと言える劇場の息吹と人生が浮かび上がる、本当に感動的なドキュメンタリーでした。この長尺の作品はフランスでも当時は劇場公開ではなくテレビ放映のみでしたが、日本では東京では渋谷のユーロスペースにて、また全国15都市くらいで上映できて、今でも上映が実現したことを感謝しています。

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『コメディ・フランセーズ 演じられた愛』チラシ)

2009年にパリ・オペラ座のドキュメンタリーを撮った時には、権利料が高額だったため躊躇しているうちに他社が購入しました。(セテラは宣伝を担当)

その後、2014年の1月、パリ・ランデブーというフランス映画だけのマーケットがあり、そこでワイズマンの新作が“ナショナル・ギャラリー“であり、もうすぐ完成、との情報をもらった時には、即決しました。その時は宣伝担当チーフのセテラのスタッフも一緒にパリ・ランデブーに参加していたので、二人で即購入を決めました。美術館のドキュメンタリーはセテラでは『パリ・ルーヴル美術館の秘密』を配給していて、それから10年以上たっていましたが、これがロンドンのナショナル・ギャラリーということも魅力的な企画だと思った理由でした。ワイズマンのドキュメンタリーは映す対象が変わるだけで手法は一貫して音楽なし、ナレーションなしの直球勝負。その対象物のすべてを撮り尽くしテーマを浮かび上がらせる、というものでしたからこの映画で心配点があるとすれば、上映時間がどのくらいのものになるか、ということだけでした。買い付けした時点ですぐにBunkamuraル・シネマが上映を決めてくださいました。前作の『パリ・オペラ座のすべて』『クレイジー・ホース・パリ 夜の宝石たち』も同館で上映して大ヒットしていましたから、劇場の皆さんにはワイズマン愛があるのです。

その年のカンヌ映画祭に完成された本作が出品され、上映時間は3時間。その映画の中には、実に多くのことがあらゆる角度から語られ、まさにワイズマンの真骨頂でした。

映画を買いつけた1年後に再びパリ・ランデブーに行き、ちょうど日本ではこの映画の初日をBunkamuraル・シネマにて迎えているところで、私のところに下の写真が送られてきました。その時、今回の映画のセールス会社のホームパーティでワイズマン監督と再会したところで、そのニュースはすぐに監督に伝えることができ、ご機嫌な監督は映画のプレスを持って記念撮影に応じてくれました。

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(初日、全回満席のBunkamuraル・シネマ掲示板)

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(日本版プレスを持って記念撮影に応じるワイズマン監督)

この作品ではテレザの大竹さん、サニーフィルムの有田さんに宣伝を協力していただきました。そしてその後のワイズマン作品ですが、監督は今年90歳になる今でも信じられないエネルギーと情熱で新作を撮り続け、2015年の『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』はチャイルド・フィルム/ムヴィオラ配給でシアター・イメージフォーラムにて公開され、2018年の『ニューヨーク公共図書館』はミモザフィルムズが購入して、ムヴィオラと共同配給して岩波ホールにて公開されました。

まさにワイズマンは独立系配給会社が支え続けた監督なのです。

山中陽子

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