見出し画像

これからの本屋読本

本書は、本の仕事をしながら、本屋についてこの十五年間にわたってぼくが調べ、考えてきたことを、いま、本と本屋を愛する人達に伝えておきたいと思って書いた本だ。

東京・下北沢にある「本屋B&B(Books&Beer)」を経営し、ブックコーディネーターとして福岡・天神の「Rethink Books」や青森八戸市の「八戸ブックセンター」など、本屋のプロデュースを手がける『NUMABOOKS』代表の内沼晋太郎さんによる、本好きのための本。

本書では、3つ。『本と本屋の魅力(1-3章)』からはじまり、別冊として『本を仕入れる方法』を解説し、今の時代の本屋のありかたとして『小さな本屋の続けかた(4-9章)』を実践編として指南する。

みなとみらいにあるBUKATSUDOで「これからの本屋講座」で10期以上にわたって講師をしており、その参考書としている本なので、とても本への愛に溢れながらも実践的な知恵と工夫がちりばめられている。

1章から、いくつか紹介していきたい。

本屋は、日常的な生活に欠かせない「必要」な場所だった。多くの人が「好きだから」ではなく「必要だから」本屋に来ていた。(略)けれどいまは「本が好き」「本屋が好き」とことばにする人が増えた。それは、多くの人にとって本や本屋が、必ずしも生活に「必要」なものではなくなったことで、逆に「好き」という気持ちが顕在化してきたからではないか

幼少期の思い出からはじまり、何時間でもいられる、途方もない本の数に圧倒され、世界のあらゆることがつまっていて、好きなペースで向かい合い、ときに意図せず無自覚な自分の興味にきづかされる本と本屋。

Amazonができて目的のものはすぐに手に入れられるようになり、書店も大きければいいわけではなくなってきた現在、「好き」という想いある人が発信したり行動して、その魅力を引き出すことに真剣になってきている。

「本屋」ということばに、ぼくもこのような愛着がある。それはどちらかといえば「人」に属する愛着であり、「人」あってこその「場所」なのだ、という気持ちのあらわれといえるかもしれない。

人の細胞が日々入れ替わるように本屋においてある本も日々かわる。けれど、そこには選書をしている人がいて、それぞれに個性があり味がある。書店でなく「本屋」ということばを好むのも、それが「本をそろえて売買する人」「本を専門としている人」をさす「人」寄りの言葉だからであると。

『本屋になるとはどういうことか』をかんがえる3章につながっていく。

売買をして生計を立てることだけを本屋だとせずに、利益を度外視することで企画の幅を広げて、本業を続けながらライフワークとして「お金をもらわない仕事」としてはじめられる本屋になることを、すすめている。

そう考えたとき、一番身近な「本屋」のかたちは、親である。多くの場合において、子どもが最初に手にする本は、親が選んで買い与えたり、読み聞かせたりするものだ。

だれしも誰かにとっての「本屋」になった経験がある、という捉え方は新鮮だけど、「本屋になろう」とする人にとっては勇気になる言葉なのかも。

テクノロジーが発展し、電子書籍が普及する今、紙の本とリアルの書店の意味合いは変容してきている。「ニーズ至上主義」で、個人にとって都合のいい情報をすばやく気持ちよく流していくインターネットの世界の中で、本屋のあるべき姿をどう描くか。

人間の「本屋」にしか生みだせないものがあるとしたら、それは個人の偏りをおそれずに、豊かな偶然や多様性をつくりだし、誰かに差しだすことだ。もちろん個人は万能ではない。けれどそこにはシンプルな、人間同士の信頼関係があればよい。できる限り正しくあろうとする個人が選んだ結果、「ニーズ至上主義」で流れてくる情報とは異質で、ほどよくランダムで、多様な驚きがある。その「本屋」を信頼した客が、その世界に身を置いて出会う偶然をたのしむ。そういう体験を生み出すことこそ、「本屋」の仕事であるべきではないだろうか。

ひとりの「本屋」にできるのは、選ぶことに誠実に向か合う、こと。ことばを通してそれを読むひとを変え、世界をかえていくことに真摯に向き合い続けること。

別冊と実践編は、ぜひ手にとって読んでいただきたい。内沼さんの本と本屋と本好きへの誠実な愛情が、やさしい文面を通して伝わってきました。

この本と出会わせてくれた本屋さん、ありがとう。


1
京都の企業で、新規事業の開発(中国の環境をよくするプロダクト)とその人材育成を担当しています。 noteでは、人や組織にかかわるビジネス書を中心に読書メモを掲載していきます。 おすすめの本や読んでほしい本などあれば、お気軽にご連絡ください!cestunbon@gmail.com

この記事が入っているマガジン