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自分の見える範囲には限界がある

Kindle電子書籍で活動を続けてきて、最近またいろいろと思うところがあったので。

結論はタイトルの通り。
どういうことなのか説明をすると、私の場合は完全なる個人出版なのですね。
自分で原稿書いて、推敲と校正して、表紙絵描いて、デザインして、出版申請も全部自分だけでやっている。
Kindleに限らずとも、こうして本を作って販売している方は他にもいるとは思うんですが、私の場合、何が一番ネックかというと「売り方が分からない」ことなんです。

本を作ったはいいけれど、何を売りにすればいいか分からない。
具体的に言うと、商品説明(あらすじ)をどう書いたらいいか分からない。

読者層やコンセプト、テーマなどが明確であれば、多少は売り方が分かってくるはずなんですが、私の場合はとにかく出してみる、というところから始まったものでして……。
ここでは「羽倉茶葉店」を例に説明しますね。

「羽倉茶葉店」はアルファポリスで公開していた時、「現代文学」として出していました。
ですが、Kindleで「一般文芸」カテゴリを選択すると、完全に埋もれるだけで、誰も見向きしませんでした。
「一般文芸のファンタジー」にしても同じです。ライバルが多すぎるのです。

あらすじも何度だって書き換えたし、Twitterやnoteでの宣伝に関しても、いっぱい試行錯誤しました。
ですが、ちっとも状況は変わらず……もうKindleなんて嫌い、とさえ思っていた時期もあったほど、追い詰められていました。

さすがにこれはまずいぞと思い、売り方を変えることにしました。
思い切ってカテゴリを、「ライトノベルのボーイズラブ」にしたんです。
すると、少しずつですが読まれるようになり、12巻と13巻はランキング入りも果たし、やっと固定の読者がつくようになりました。

元々、「羽倉茶葉店」はブロマンス要素のある作品だったので、売りを「ブロマンス」ということにしたのが功を奏したのでした。
この決断をする前までは、自分の中ではBLカテゴリにするほどでもないし……どちらかと言えば、ヒューマンドラマがメインだし……と、迷っていました。
(そのため、レーベルは雨坂文庫のままにしてあります)

つまり、どう売ればいいのかが分かっていなかったんですね。
そこで、自分の見える範囲には限界があったことに気づきました。

「羽倉茶葉店」という作品は特に、連作短編という強みを生かすが故、エピソードごとにジャンルや含まれる要素が異なります。
恋愛要素の強い話や、ほのぼの、ホラー、コメディ、時にはSFなどもあるため、どれを売りとして押し出せばいいのか、迷子になっていました。
我ながら、情けない話です。
しかし、アルファポリスで公開していた時から、感想がなかなかもらえなかった作品でもあるので、読者からどう見えているか分からないのも事実でした。
つまり、感想やレビューは作者のモチベーションだけでなく、作品の質にも関わって来るんですよ。作者側からすれば、そこで指摘されて、初めて気づくこともあるんです。
(なので、感想はできるだけ伝えてあげてくださいね。好きな作品ならなおさら作者さんに、ここがおもしろい、このシーンで感動したなど、具体的に教えてあげてください。)

「羽倉茶葉店」で言えば、最近になって「温かい」とか「癒し」といった言葉をいただくようになったのですが、自分ではまったくそんなことは思っていませんでした。
何かよく分からん変な話――それが、作者である私の考えでした。
もちろん、ほっこりするエピソードもあるのですが、全体として見ると、パラレルワールドを示唆する物語なので、やっぱり変な話としか思えないのです。
この乖離、実は結構まずかったのではないかと私は考えます。
作者が読者側の見方を知ることで、ようやく「売りになるポイント」が見えてきたんですから、ここでも私は自分の限界を感じたわけです。

そして推敲作業にも限界はあり、出版してから誤字に気づくことも多々あります。
その度に修正を入れて差し替えてはいますが、すべての誤字がなくなったとは思っていません。
やはり、自分一人の力では、どうしても見逃してしまうものなのです。

となると、有償になりますが、編集や校正を仕事にしている方に依頼するのも手だなと。
第三者に見てもらうということは、自分では見えなかったことが見えるようになる、ということです。
有償でなくとも、感想をくれる友人や知人がいたら、そういった方に見てもらうのもいいと思います。
個人出版における大事なポイントは「売り方を知る」ことであり、「読者との乖離や齟齬を極力減らす」ことだと思うのです。
出版する前から「売りになるポイント」が見えていれば、商品説明(あらすじ)の書き方も自ずと分かってきます。
よりよい作品を世に出したいと思うのであれば、第三者の視点はとても有用だと思います。

というわけで、いつか私も編集さんに依頼したいなと。
今のところメインで出版している「羽倉茶葉店」は順調に売り上げを伸ばしているので、これはこのまま自分の力だけで完結させるつもりです。
編集さんに頼むとしたら新作になりますが、書けるのは早くても来年でしょうか。
まだまだ先のことになりそうですが、自分だけでは限界があることを、今回、身を持って実感しましたので、今後は第三者を頼ることを選択肢の一つとして持っておきたいと思います。



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