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【ポケモン】第7世代 バシャーモ史【懐古】

※注意
・筆者の主観が幾らか含まれますのでご了承ください。
・筆者がプレイしていない期間も含まれており、その部分はなるべく構築記事やPGL(現在はサービス終了)のデータなどを参考にして補完するようにしています。
・HABCDSなどの簡略表記を使用します。
・ただの昔話です。

まえがき

半年ぶりの投稿です。今回は歴史学(?)の記事です。

いきなり私事で恐縮ですが、筆者はSM・USMの第7世代シングル環境においてバシャーモというポケモンを好んで使っておりました。

図1

好んで使うくらいならそれだけ対戦環境で猛威を振るっていたのか、というとそんなことはなく、むしろ逆に環境が回るにつれてその輪から外れていったポケモンではないかと思います。

これは使用率ランキング(*1)からも明らかで、SM時代のシーズン4~6の約半年間(※当時は1シーズン2か月)は7世代最強ポケモンと名高いミミッキュに次ぐ2位に位置していましたが、USM時代に入ると徐々に転落して、実質的な7世代最終シーズンであるシーズン17では16位まで順位を落としています。

一体バシャーモとそれを取り巻く環境に何があったのか?

今回はその浮き沈みの歴史を辿っていきます。

0. SM発売前の評価

話は7世代の1つ前の6世代、ORAS環境まで遡ります。

6世代は新たに実装されたメガシンカを軸とした構築が圧倒的主流の環境で、その中で頂点に君臨していたのがかの有名なメガガルーラでした(*2)。

その環境においてバシャーモは加速によって上から一致格闘技を打てるためメガガルーラに対して強く、またメガガルーラに次ぐ第二のメガ枠と呼ばれたメガゲンガーに対しても有利を取れる貴重なポケモンでした。

図1

そのため、メガガルーラの取り巻きとしても採用されることが多く、自身のメガシンカの有無を問わず多く採用されていました(ORASシーズン17の使用率ランキング:6位( *1))。

ただ、6世代環境においてバシャーモにはどれだけ素早さを上昇させても疾風の翼+ブレイブバードで上から縛ってくるファイアローという絶対的なストッパーがおり、このポケモンもメガガルーラと合わせて高い使用率を誇っていました(ORASシーズン17 4位(*1))。

他にも悪戯心+電磁波で足を奪ってくる化身ボルトロス、アクアジェットで上から縛ってくるマリルリなどの存在もあり、環境に刺さってはいるものの止まる相手も多いというのが6世代のバシャーモの位置づけであったと思われます。

ただ、7世代に入るとこれらの状況は一変します。

まず、以下のような大幅な仕様変更がありました。

・疾風の翼の弱体化(体力満タンの時だけ発動)
・悪戯心の弱体化(悪タイプに対しての変化技が無効)
・電磁波の弱体化(命中率が100→90、麻痺による素早さダウンが1/4→1/2)

これらはファイアローとボルトロスの持ち味であったストッパー性能を奪うものであり、バシャーモにとっては紛れもない追い風でした。

加えて、新規のフェアリータイプが多く追加された中でカプ・テテフが登場しました。

画像4

特性で場に出るだけでサイコフィールド(PF)を発生させ、アイテムなしでラティオスの眼鏡サイコキネシスと同じエスパー技の火力を出せる(※当時はPF補正が1.5倍)このポケモンはSM発売前から注目の的で、特にバシャーモとの相性の良さが際立っていました。

カプ・テテフが止まる鋼タイプにはバシャーモが強く、バシャーモが止まる物理受けに対してはカプ・テテフが強く出られる攻撃面の補完があり、極めつけはPF下ではバシャーモの天敵である悪戯心+電磁波やアクアジェットなどの先制技が無効化されるという、とてつもないシナジーを持っていました。

ストッパーの弱体化と新たな相棒の獲得、これによってバシャーモは大きく飛躍することが予想されましたが、SM最初のシーズン1では過去世代のポケモンが解禁されておらず、バシャーモの登場はポケバンク解禁後のシーズン2まで待つことになります。

1. ポケバンク解禁(SMシーズン2~3)

晴れてアローラ地方に上陸したバシャーモでしたが、SM時代は一部のメガストーン(メガシンカするためのアイテム)はインターネット大会の参加賞として順々に解禁される仕様だったため、メガバシャーモの解禁はメガストーンの配布を待たなければいけませんでした。

そのため、ポケバンク解禁直後から様々な非メガの型が模索されていくことになります。

特に7世代で新たに追加されたZ技は広く使用され、タイプ一致の炎Zは勿論、本来1ターンのラグがあるソーラービームをZ技にする事で溜めなしで放ち、バシャーモ受けの水・地面タイプに役割破壊を行う草Z(*3)など様々な型が開拓されました。

他にも、Z枠を他のポケモンに割ける点から、前世代から一定数存在した命の珠や気合の襷を持った型も使用されていました。

環境での立ち位置としては、当時流行していたコケコランドグロス軸のサイクルに対して炎技の一貫を押し付けていける点などから良好であったと思われます。

そして発売前の予想通り、最も多くバシャーモと同時採用されたポケモンは2シーズン連続でカプ・テテフでした(*1)。

かくしてバシャーモは、天敵の消滅と加速+Z技による上からの強引な崩しを得て、シングル環境での立ち位置を確立してメガストーンの解禁を迎えることになります。

2 メガシンカ解禁(SMシーズン4~6)

4月下旬のJCS予選の参加賞でホウエン御三家の最終進化系のメガストーンが一斉に配布され、次シーズンのシーズン4からメガバシャーモが解禁されました。

メガシンカで種族値が底上げされて上からワンパンできる範囲と1加速で抜ける範囲が大幅に広くなったことを活かして、メガバシャーモを軸とした構築の開拓が進んでいきます。

まず、初速の上昇を活かす形で開拓されたのがバトン構築でした。バシャーモが苦手とする水・地面・飛行タイプに対して強く出られるカプ・レヒレ、テッカグヤ、霊獣ボルトロスを取り巻きに添え、バシャーモの不利対面でそれらのポケモンに加速を引き継いで戦う形は、7世代のメガバシャーモ構築の1つのテンプレートとして確立されました(*4, *5)。

そして、もう1つの特筆すべきテンプレートがランドバシャカグヤと呼ばれる展開構築です。

霊獣ランドロスでステルスロックを撒き大爆発などで削りを入れた後、メガバシャーモとメガバシャーモ受けに対して強い宿り木の種+身代わり持ちのテッカグヤを押し付けていく並びはシンプルながらも破壊力抜群で、7世代を通して多くの愛好者がいました(*6, *7)。

また、解禁前に引き続き非メガの開拓も進み、HBベースで混乱実を持たせて場持ちを良くして剣舞を積み、メガギャラドスにバトンして全抜きを狙う構築も現れました(*8)。

バシャーモが苦手とするミミッキュを型破りによって貫通できるメガギャラドスは、メガバシャーモ構築でもバシャーモが選出できない場合のメガ枠として、特にステルスロックを絡めた展開構築に多く採用されるようになりました。

一方、メガバシャーモの躍進に対応する形でその対策も進み、化けの皮が剥がれた後もメガバシャーモのフレアドライブやメガギャラドスの+1滝登りを耐える調整が施されたABミミッキュはその最たる例でした。

冒頭で述べたようメガバシャーモ解禁からSMリーグが終了するまでの3シーズンは使用率ランキングで2位を記録し、最盛期を迎えていました。

しかし、舞台は変わりUSM環境になるとその勢いに陰りが見え、斜陽期へ入っていくことになります。

3. 斜陽期(USMシーズン7~9)

(本項以降は基本的にメガバシャーモに絞って言及していきます)

前項でも述べたように、USM環境への移行を境にしてバシャーモは環境での立ち位置を落としていきました。

USMではアーゴヨンなどの新UBや、カミツルギの叩き落とすをはじめとした7世代の新ポケモンの教え技が解禁されましたが、それらがバシャーモの凋落に直接作用したわけではなく、別の要因がありました。

1つは激流ゲッコウガの登場です。

従来のゲッコウガは夢特性の変幻自在を活かして様々なタイプの技を打ち分ける型が主流でしたが、SM終盤から環境に水技が一貫している点などが評価されて身代わり+Zハイドロカノンの超火力を押し付け、安定したゲッコウガ受けとして名高いポリゴン2ですら突破してしまう激流水Z型が現れました。

この水技の一貫はバシャーモ構築も例外ではなく、ゲッコウガ相手に一度不利対面を作ると1体以上は持っていかれる状況が頻発し、特にランドバシャカグヤのような展開構築は大きな打撃を受けました。

そして、もう1つの要因がカバマンダガルドの大流行です。

混乱実を持たせた起点作成カバルドンと毒ギルガルドのサイクルから竜舞メガボーマンダを通していく並びがSM終盤に環境に現れ、USM環境に入ると一躍トップメタに躍り出ました。

ギルガルドはともかく、カバルドンに対してもメガボーマンダに対してもバシャーモは基本的には不利であり、特にこの並びに採用されるメガボーマンダはHDベースの型が多く、メガバシャーモのめざめるパワー氷をステルスロック込みで耐えたり、テッカグヤのエアスラッシュで身代わりが割れない大変厳しい相手でした。

極めつけは、このカバマンダガルドにポリゴン2絡みのサイクルを崩す役割で激流ゲッコウガが採用されていたという、バシャーモ目線では厳しすぎる組み合わせでした。

上記の流行による影響は使用率ランキングにも如実に表れ、シーズン7~9の3シーズンでバシャーモの順位は6→8→10位と落ちていきました(*1)。

厳しい時代でしたが新たな並びも開拓され、ランドバシャカグヤの派生のような形でウツロイドでステルスロックや毒菱、電磁波を撒いてメガバシャーモで全抜きする、もしくは加速バトンからテッカグヤの宿り木の種+身代わりで嵌めるウツロバシャカグヤの並び(*9)が現れました。

他にも、この3シーズンで一応バシャーモ入りで結果を残した構築はあったものの、別の軸の補完としての採用が目立ち、メインとしての採用は多くなかったように思います。

激流ゲッコウガとカバマンダの大流行、2つの黒船来航によってバシャーモ構築は冬の時代に入ります。

4. 停滞期(USMシーズン10~12)

メガボーマンダ軸が一気に環境トップに名乗りを上げたUSM環境初期でしたが、環境が進むと他の軸の開拓とメタが進み、この頃になるとボーマンダ、リザードン、メタグロスという一般枠トップのミミッキュに対して比較的隙を見せにくいメガシンカ枠による3竦みの様相を呈していました(*10)。

バシャーモはこの3竦みの中ではメタグロスに対しては比較的強く、特にカプ・レヒレや霊獣ランドロスによるサイクルを基調とした構築に対しては刺さりがよかったと思います。

しかし、メガボーマンダ軸がやはりバシャーモ目線で厳しくなるような形で開拓が進み、襷激流ゲッコウガ+Zミミッキュ+メガボーマンダのゲコミミマンダと呼ばれる7世代を代表する対面構築の並びが現れます。

特に、気合の襷を持った激流ゲッコウガはボーマンダ軸に留まらずゲンガーやクチート軸など対面系の並びであれば大体入るようなスペックを持っており、水Z型と同様に対策必須となりました。

他にも、ギルガルドもHBに厚く振った弱点保険型が増加(*11)し、有利対面と思いきや返り討ちにあうなど、明らかに環境がバシャーモ目線で厳しくなる方向に動いていきました。

使用率ランキングも11→13→14位と落ちていく一方でした(*1)。

前述のメガ3竦みを中心としたメタが回る一方で、バシャーモ周りは目立った開拓がなく、USM初期と同じく難しい時期が続いていたと思います。

5. 再浮上期(USMシーズン13~14)

USM環境に入ってからほぼ1年、低迷が続いていたバシャーモ構築でしたが、この時期に入ると2つの大きな発明が生み出されます。

1つは「D20振り」です(*12)。

単語だけではピンと来ないと思いますが、文字通りバシャーモのDに努力値を20振るこの調整は7世代バシャーモ史における大きな転機であったと思います。

従来のバシャーモをAS振りで育成する場合、余った努力値4をダウンロード調整に加えて、飛び膝蹴りの外しダメージを2回耐えるようにDに振るのが一般的でした。

この調整からAを削ってDに20振ることで、ゲッコウガの水手裏剣の乱数をずらすことがこの調整の意図です。

ダメージ計算式の都合上、水手裏剣のような一発が低威力の連続技は実数値を調整しても、乱数を除いた基本ダメージが動きにくい傾向にあります。

しかし、ゲッコウガのバシャーモに対する水手裏剣の場合、

  • C155ゲッコウガ(臆病252振り)

  • C170ゲッコウガ(控え目252振り)

  • 激流発動時のC155ゲッコウガ

  • 命の珠持ちのC155ゲッコウガ

のいずれの場合も、D実数値が103の時、即ちメガバシャーモのDに20振ることでダメージが変動します。

加えて、水手裏剣は連続技のため1発あたりのダメージが減少すると、総ダメージ量は大幅に減少します。

具体的には、D102バシャーモにC155ゲッコウガの水手裏剣が5発ヒットすると最大180ダメージとなりASバシャーモは倒されてしまいますが、D103バシャーモの場合は最大でも160ダメージまで抑えられ、ヒット数と乱数を考えるとASベースでもほぼ生存できるようになります。

D20振りはメガバシャーモのゲッコウガ対面での生存率を大幅に高めたと言えます。

そして、もう1つの発明は身代わりバトン型の開拓です。

従来のバトンタッチ型のメガバシャーモはフレアドライブ・飛び膝蹴り・守る・バトンタッチの構成がメジャーでしたが、飛び膝蹴りを身代わりに変えた型が本格的に採用されるようになりました。

この構成にすることで、後続に2加速以上を付与したい時に守ると身代わりを交互に打つことで加速をストックできる他、様子見やZ技透かしもできるようになりました。

加えて、様々なリスクの大きい飛び膝蹴りを切って中間択として選択しやすい身代わりが採用されたことで、技範囲が狭まるマイナスを補って余りある安定性を手にしました

身代わりバトン型のメガバシャーモ自体は過去シーズンから存在していましたが(*13)、前述のD20振りを取り入れることでさらに安定感が高まり、シーズン14で一気に上位に食い込みました(*14)。

この身代わりバトンメガバシャーモ+鉄壁瞑想カプ・レヒレ+混乱実デンジュモクの並びは強力で、特に加速を引き継いで鉄壁と瞑想を積んだカプ・レヒレはゲコミミマンダすらも3タテしまうほどのポケモンでした。

この時期になってバシャーモ構築が復活の兆しを見せたのは上記の開拓も勿論ありますが、カバマンダの並びが変化してカビゴンやカプ・レヒレが採用されるようになり、これらを崩すために変幻自在の格闘Zや奮い立てるノーマルZが増加し、激流型が相対的に減少したことが追い風になったと考えられます(*15)。

2つの大きな発明によって今までにない安定性を手にし、復活の狼煙を上げたのがこの時期であると言えます。

6. 円熟期(USMシーズン15~17)

7世代環境も終盤に入り、この時期になるとメガシンカ三強とされていたボーマンダ、リザードン、メタグロス以外の並びもバシャーモを含めて開拓が進み、三強が崩れて雑多環境へと突入していきます。

バシャーモはというと、メタグロスやゲンガーなどメガシンカ枠同士の相性だけで見ると五分以上で戦える相手は決して少なくありませんでした。

使用率ランキングこそ15位前後で全盛期に比べると振るわないものの、環境においてはそれなりの立ち位置に落ち着いていたと言えます。

軸についても、前項で詳しく述べた身代わりバトンに限らず、様々な構成で戦えていたと思います。

初期環境で暴れまわった後、いきなり逆風環境になって一時は大不振に陥ったものの、新たな発明や環境の再変化によって持ち直したのが7世代のバシャーモというポケモンでした。

あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございました。

ポケモンの環境変遷記事はいくつかあると思いますが、特定の軸の目線に立った記事はあまりなかったと思うので今回書いてみた次第です。

8世代でもダイジェット環境で相変わらず苦境に立たされているポケモンですが、もはやそういう境遇の方が落ち着くとすら思えてきました(?)。

ご意見等ありましたら加筆修正します。

それではまた。

参考文献

(※問題があれば削除いたします)

*1 バトルスポット使用率 - ポケモンウルトラサン・ムーンレート
*2 拙稿『迂闊な月曜日』再録~第6世代における環境の変遷と考察(前編)
*3 SMシーズン2使用構築 最高最終レート2201
*4 【S4使用構築】陽気鬼火メガバシャバトン
*5 【シーズン4使用構築】襷ガブリアス始動バシャバトン
*6 『ランドバシャカグヤ S5シングル最終2100』
*7 【SM/S6】最高/最終2100 ランドバシャカグヤ改
*8 S4使用構築【最終2155】希望を運ぶバシャバトン
*9 シーズン7最終2165・ボスラッシュ使用構築~Dual gift crossing
*10 環境考察【S10〜11】
*11 環境考察【S12〜13】
*12 【USUM S13】電撃戦隊ポリレンジャー(最高2010/最終1915)
*13 【シーズン11使用構築】みがわりバトンメガバシャ絶対選出2100Ver1.1【最高2105/最終2052】
*14 【USM S13~14使用構築】3Z身代わりバシャバトン【最高最終2161 13位】
*15 環境考察【S14】


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