見出し画像

歌を歌うのは人間特有の能力なのか?

歌は、もはや我々の生活の中で欠かせないものになっています。
毎日のように、テレビやラジオ、インターネットの中では必ずと言っていいほど歌が流れています。
歌が人に与える影響は大きく、楽しくさせたり悲しくさせたりと感情を変化させます。

歌は果たして、人間特有のものなのでしょうか?


◆人間以外も歌を歌うのか?

結論から言うと、人間以外も歌は歌います。
但し、音程や強弱だけのコミュニケーションに意味を持たせたのが、人間です。

例えば、カラスは「カァァ、カァァ」としか鳴くことができませんが、音程や強弱を変えて、警戒を発したり、欲求を示したりしている。
人間はさらに具体的に、特定のものを象徴させたり、複雑な感情を表現し、言葉としてより深い意味を持たせています。

◆音痴は人間特有の能力

僕もあまり音程を取るのは苦手ではありますが、実は音痴というのは人間特有で、動物にはそういったものはありません。
何故なら彼らにとってはそれが死活問題になるからです。

例えば、ミーアキャットは穴の中で生活し、見張り役を立てながら食べ物を収集しています。
そのため、敵がやって来たときには「ワンワン(危ない!)」という警戒声を発することで群れを守っています。

さらに、ミーアキャットに言葉で危険を知らせる見張り役がいて、その生物の名前は、スズメ目オウチュウ科の「クロオウチュウ」です。
この黒い鳥は、ミーアキャットのエサ場に現れ、天敵であるタカなどの生物が現れると、ひときわ大きな声で「ピャッピャッピャ(危ない!)」と叫ぶのです。
この声を聞いたミーアキャットたちは、食べかけのエサを投げ捨てて巣の中に逃げていきます。

このように、動物たちは、互いの声を聴き分ける高い能力を持っています。
人間と違って筋トレが必要ないように、動物のカラダは余分なものも足りないものも何一つないように進化して、今の姿になったと考えられます。

動物がドレミファソラシのどれか分かるような絶対音感を持っている、とまでは言いませんが、音階というよりは音程を外さないようにしなければコミュニケーションが取れずに生き残れなくなる為、人間よりも音程に対して敏感だとは言えると思います。

◆ネアンデルタール人は歌うようにコミュニケーションしていた?

我々現代人が現れる以前には原人や旧人がいたわけですが、それぞれ同じヒト属であるものの、旧人は、原人と比べて舌下神経の太さや脊中管の大きさに関しては、現代人に相当する発音能力があったとする解剖学的証拠があり、特にネアンデルタール人に関しては、ソプラノのような高い声で、歌を歌うようにコミュニケーションを取っていたのではないかという説があります。

現代人が出現する以前の20万年前の地球のサバンナにおいて、彼らは歌の掛け声で狩りをし、異性を歌で口説き、石器や火を使って歌いながら食と暖をとり、子どもを子守唄であやしていたのかもしれません。
その歌声と踊りが一体感を刺激して、人々に協調行動をとらせて外敵と環境の激変に立ち向かわせ、少なくとも二度の氷河期に耐える事が出来たのだとしたら、非常に興味深いです。

◆人類以外で唯一リズム感を持つ哺乳類「インドリ」

旧人は滅んでしまいましたが、今現在でも人間と同様のリズム感を持つ生き物がいます。

その生物はキツネザルのインドリです。
数少ない"歌う"霊長類として知られており、現在は絶滅の危機に瀕しています。
一見悲鳴のようにも聞こえる彼インドリの歌ですが、研究チームの調査によって、彼らは人間と同じように歌を独自で身につけた生物だということが判明しました。

12年間にわたってマダガスカルの熱帯雨林にて、現地の霊長類研究グループと協力しながら39匹の歌を録音した結果、研究チームはこのデータを元にいくつかの傾向を導き出しました。

インドリの家族グループのメンバーは、調和のとれたデュエットやコーラスを一緒に歌う傾向があることや、インドリの歌には古典的なリズムや、いくつかの伝統的な音楽に見られる典型的なリタルダンドやスローダウンが見られる事がわかったのです

彼らに限らず、他の種の音楽的特徴を調べることで、人間のリズム能力がどのようにして生まれ、進化したのかを理解することができます。

◆海に響く「クジラの歌」をAIで解明するプロジェクトがスタート

動物の中でも、極めて高い知能を持っているとされるクジラ。
その鳴き声には、以前から何らかの意味があると考えられ、学者たちはクジラの膨大な音声データを録音し続けてきました。

ですが、観測データをもとに、「おそらくこういう意味の鳴き声(言語)を発しているはずだ」と考察することはできても、必ずしも正しい答えにたどり着けるとは限りません。

そこでいま注目されているのが、研究者の推察から影響を受けない「人工知能(AI)による動物言語の翻訳」です。これが実現すれば、従来の固定観念にとらわれることなく、記録された音声やデータのみに忠実な形で翻訳が進んでいくことでしょう。

◆動物たちの"歌"はまだわからないことだらけ

動物たちの歌について研究がもっと進めば、これまでの進化の流れだけでなく、今まで認知されていないような音によるコミュニケーション方法が明らかになるかもしれません。

もしかしたら我々よりももっと高度なコミュニケーション能力を持った生き物が、この地球上にいたなんてニュースが舞い込んでくるかもしれませんね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?