胸の中の星、ひとつ
その人は、凜と前を向いていた。
だから、横顔しか知らなかったのだ。細いつるが印象的な眼鏡の奥、理知的な瞳は知性と探究心に溢れ、これからの魔法界を第一線で牽引していく存在なのだろうなと感じられた。
憧れのひと。それでしまいの関係のはずだった。
なぜならば、遠い存在の彼女は落ちこぼれの自分などとは比べものにならない実力で、強く美しく、魔法を扱う人だったから。
凜と前を向いて、生きていくひと。
のはずだった。
淡い淡い憧れは、憧れのままでいてほしかったというのは勝手な願いであるものの、腕の中にあるぬくもりを、星が転げ落ちてきたような幸せとして、抱きしめている。相変わらず、美しい横顔を見つめながら。
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