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第44回全日本短歌大会表彰式(於:明治神宮)

みなさま、こんにちは。

先日、明治神宮において開催された第44回全日本短歌大会表彰式に出席いたしました。

本大会で、北神照美選者賞と優良賞二首をいただきました。
北神照美さんをはじめとした選者の皆さま、並びに日本歌人クラブの事務局の皆さまに厚く御礼申し上げます。これからも精進します。

偶数はやさしい数字はんぶんに割つたどら焼きあなたにあげる

北神照美選者賞

さつきまで触れ合つてゐた指先がすみれの花を包んでをりぬ

夏きざす新宿御苑へゆく朝に君は真白きスカートを選る

優良賞二首

閉会後に選者の北神さんとお話しする機会があり、「さつきまで…」の歌もとても印象に残っていると伺いました。ほんとうにありがたいことです。また、入賞作品集にサインもいただきました。私の宝物です。

受賞作品の講評に加えて、久々湊 盈子先生のご講演「一首に内在するもの」を拝聴しました。ご講演ではさまざまなお話がありましたが、私は下記の二点が特に印象深く残っています。

・(俳句や詩なども含めた)名歌、秀歌を読み直すことが重要。
・実人生は文学とは別と考える。

まず、一点目はほんとうに大切なことだと思います。
たとえば、以前参加した歌会で、「秋の日のヴィオロンの…」という詩句がポンと話に出ました。たったの十文字ですが、おそらく歌会に出席していた誰もが、「このフレーズは上田敏が訳したヴェルレーヌのあの詩のことだな」と瞬時にわかったはすです。
このようにある種の文化的なベースを共有しているということが、より詩歌を深く理解すること(=自身の読みの深化)に繋がっていくのだとつくづく実感します。

次に、二点目。私はこれを「歌の内容は、必ずしも実人生と一致していなくともよい」というふうに解釈しました。作歌のスタンスとして意見の分かれることかもしれません。虚構は詠わないという方もいらっしゃると思います。
私の場合は、歌ごとに濃淡の差はありますが、基本的には虚実混淆です。まったくのデタラメというわけでもなく、かと言ってすべてがありのままの事実というわけでもなく…。この点はまた稿を改めて考えてみたいと思います。

それではまた。

(補遺)
昨年の第43回全日本短歌大会では秀作賞を二首いただいておりました。
コロナ禍ということもあり表彰式は開催されませんでした。

風光る いつも手を振る改札のSuicaの音のピッと鳴るとき

眠るとは意識に錘をつけることうすむらさきの絵の具を溶かす

秀作賞二首


★このたびの受賞の記念として、選者の北神照美さんが書いてくださった評を追記いたします。作者の私以上にこの歌を深く読み解いてくださったことに感激しました。歌は、読者に読まれることによってはじめて完成するのだということを実感いたします。(2024.2.8追記)

偶数はやさしい数字はんぶんに割つたどら焼きあなたにあげる
<評>
偶数はやさしい数字だから、奇数の1も半分に割って2にしたら、わたしとあなたで食べられる。相手に対する好意を、偶数のやさしさという作者の掴んだ数字の性格に託して表現し、それが甘いどら焼きというのも面白い。豊な繋がりを持って生きていきたいと思う時代である。(北神照美)

入賞作品集p40


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