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歌誌『塔』2024年5月号掲載歌「お姫さまのやうな名前の」

みなさま、こんにちは。
初夏の風。今日はいまのところ湿度も低くて快適です。

昨夜から『DIE WITH ZERO:人生が豊かになりすぎる究極のルール』という本を読み始めました。
ずっと気になっていてそのままにしていたのです。
カバーの端に「人生で一番大切なのは、思い出をつくることだ」と書いてあります。

最近、部屋の観葉植物が新しい葉っぱを次々と出しています。
冬よりも夏ほうが好きなようです。
水もたっぷりとあげなくては。

それでは『塔』2024年5月号の掲載歌。梶原さい子選です。

金魚にもイジメがあるといふことを知つてしまへり夏の日暮に
クラリスとふ白き錠剤処方さるお姫さまのやうな名前の
待つ人が我でなくとも信号は赤から青へ雨ふり始む
金持ちのたくさん住んでゐる街にねずみのやうに生きるわたくし
人類の滅亡したるその後も生き残るのはねずみと言ひぬ
残業を終へて帰宅した部屋に真暗闇のやすらぎがある
「しあはせ」の再生産をしてをりぬInstagramの結婚報告
次長よりもらひし柚子をふたつほど風呂に浮かべて目をつむりたり

『塔』2024年5月号p173

私はInstagramのアカウントを持っておらず、見ることもありません。
でも、おそらくあまり違和感のない歌になっているかと。
短歌は虚実混淆。


★2024年8月13日追記
「金持ちのたくさん住んでゐる街に…」の拙歌に丸山萌さんが評を寄せてくださいました。ありがとうございます!

金持ちのたくさん住んでゐる街にねずみのやうに生きるわたくし
<評>
日本の年収の中央値は約360万円、東京は約400万円だそうだ。いわゆるサラリーマンだけではなく、経営者なども多く住んでいるのが東京という街だ。主体が本当に「ねずみのやう」に生きているかはわからないが、そう思わざるを得ない場所なのかもしれない。その後はねずみを肯定し主体を鼓舞するような歌が続く。生活に絶望しきってはいないが、どこかほの暗い感情があるのかもしれない。どの街に生きれば、私たちは人として生きることができるのだろう。(丸山 萌)

『塔』2024年7月号p229

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