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絵付の魅力に迫る!産地に長く伝わる九谷焼の文様

着物などの織物、襖紙などの内装、陶磁器に至るまで、日本では、古くから暮らしの中で伝統文様が人々に親しまれてきました。身近なところでは手拭いや一筆箋などの和小物にも描かれていることがありますが、脈々と繰り返される幾何学的な文様のなかに、どこか懐かしさや日本らしさを感じる方も少なくないと思います。

最近では、同じ幾何学模様であっても、どこかエキゾチックな印象のモロッコ柄やキリムによる模様、植物をモチーフにした北欧らしい大胆な図柄など、世界的に見ても様々な地域の文化から生まれた模様や図柄が人気ですが、日本の伝統文様もまた、海外からの人気も高く例外ではありません。

わたしたちが扱う九谷焼でも、古くから日本の伝統文様が親しまれ、描かれてきました。今回は、そんな九谷焼に描かれる伝統文様に焦点を当てたいと思います。

ポジティブな願いが込められた伝統文様

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日本の伝統文様の大きな特徴のひとつとして上げられるのが、意味の深さ。伝統的な風習や歴史的文化的背景などを映しているものから駄洒落とも呼べるようなウィットに富んだものまで、様々な由来を宿しているのが大きな特徴とも言えます。

由来の意味を知ると、長寿や円満、無病息災や金銀財宝など、ポジティブな願いが込められていることも多い日本の伝統文様。
こうした時代だからこそ伝統文様の意味を知って、日々の暮らしの中に願いを込めるのも気持ちが明るくなるかもしれません。

九谷焼にもよく登場する文様

さて、そんな伝統文様ですが、九谷焼ではどんなものがよく使われているでしょう?
現在、セラボクタニの企画展 「宝づくし展」(2021年3月末まで)より、伝統文様が描かれた作品をご紹介したいと思います。


脈々とつづく繁栄を願う、唐草

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シルクロードを経由して日本に伝わったと言われる唐草(からくさ)。長く続く唐草の様子から「繁栄」の象徴として描かれてきました。手拭いなどでも最もよく見られるほどポピュラーな文様ではないでしょうか。シンプルに唐草だけで絵付されたうつわなどは和洋どちらのうつわとも組み合わせやすい、家庭にも馴染む使い勝手の良い文様です。

海は〜広いよ〜どこまでも〜の青海波

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どこまでも穏やかな波が広く続く大海原を思わせる青海波(せいがいは)。舞楽「青海波」がこの文様の名前の由来ともされ、舞人はこの文様の入った着物を纏うのだそう。大波ではなく緩やかな小波が続いていく様子から、広く安寧な世界が願われたことがよくわかります。

ひと筆書きでいけるかな?七宝つなぎ

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4つの円が1つの円で繋がれた、計5つの円のセットが連続していく七宝つなぎ。円が繋がるモチーフから「円満」や「ご縁」、「子孫繁栄」の象徴とも言われています。丸みあるデザインは伝統文様として工芸界のみならずファッションやパッケージデザインなど様々なところで見られます。

ダジャレかよ!?なひょうたん

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お酒でも入っているのかな?と思わせる瓢箪(ひょうたん)の文様。ひょうたんという言葉の音が「病(びょう)気」や「拍(ひょう)子」を連想させることから、6つ描かれると「無病息災(むびょうそくさい)」、3つ描かれれば「三拍子(さんびょうし)」で拍子いいなど、もはやダジャレ以外のなにものでもない文様ではありますが、それも日本らしい文化のひとつです。

金銀財宝!お宝尽くし

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さて、実は、現在セラボクタニで開催している企画展「宝づくし展」の企画名も伝統文様の名前のひとつ「宝尽くし」からつけたものなのです。幸せをもたらすお道具や金銀財宝が描かれた「宝尽くし」は、とにかく縁起の良い文様として重用されてきました。時代や地域によって様々なお宝が描かれていますが、代表的なもので言えば、「打ち出の小槌(こづち)」、「軍配(ぐんばい)」、「隠れ蓑(かくれみの)」、「丁子(ちょうじ)」、「巾着(きんちゃく)」などが描かれています。他にも、どんな宝物が描かれているか探しながら観るのも面白いですよ。

これぞデザインの妙!九谷でよく使われるスタイルとレイアウト

これらの伝統文様ですが、面白いのが、文様の使い方にあまり縛りがないということ。時代や地域によっていくつかの文様を組み合わせた“スタイル”や“レイアウト”とも呼べるような使い方など、新しい技法がどんどん出ているのもまた興味深いところです。

今回は文様づかいにおいて九谷焼でもよく使われているスタイルやレイアウトの一部をご紹介したいと思います。


世界的な焼き物のまち“景徳鎮”からインスパイアされた「祥瑞(しょんずい)風」

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かの昔、日本の茶人が依頼し、中国の焼き物のまち景徳鎮(けいとくちん)で作られていた「祥瑞」。呉須手(ごすで)と呼ばれる青藍色の顔料で描かれる染付けのスタイルで、緻密に描き込まれた地紋と捻文や丸紋などの幾何学文を多用して描かれるものも多いのだそう。九谷でもいくつかの文様を組み合わせて捻ったデザインになっていたりする、景徳鎮の「祥瑞」にインスパイアされた図柄をたくさん観ることができます。

ところ狭しと描かれたうつわに抜け感をプラスする、窓絵

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九谷焼は古くから器物全体に絵付けされた作品が多い焼き物。文様を使ったうつわなども、全面的に絵付けされているものをよく見かけます。そんなうつわに、実は密かに抜け感をもたらしていたのがこの「窓絵」と呼ばれる技法。文様で絵付けされたうつわの一部に窓枠のような図柄が描かれ、その窓の中には山水画のような風景が描かれているのが特徴です。

窓絵の技法も元々は景徳鎮にルーツを持つとみられているようですが、幾度となく繰り返される幾何学模様のなかに、ポンッと窓で穴を開け、その先に見える風景を描く。

なんと乙なレイアウトでしょうか。


いかがでしたか?
果てしなく細かく、繰り返しながら描かれている文様にも、どこかユーモアに飛んでいたり抜け感を感じたりと、知れば知るほど奥深い世界があることに気づかされます。九谷焼に興味を持っていただく皆さんの新たな視点となれたら幸いです。






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