静脈麻酔はほぼ明け方の飲み会
初めて静脈麻酔で外科手術を経験した。
全身麻酔の吸入もするやつ、やったことありますか。大きな手術とかだと、多分そっち。麻酔入れますよーって言われた瞬間バツンと意識がなくなる。で、次名前を呼ばれると手術が終わっている。マジで何が起こったのかわからなくてこわいやつ。
歯医者とかでやるのは局所麻酔。意識はあるけど、そこだけ感覚がなくなる。
一方静脈麻酔(+局所麻酔)だと、意識はあったりなかったりするらしい。
実際経験した感覚としては、明け方ウトウトしているときに近い。身体は動かないが思考は何となくできるし、周りの刺激もある程度わかる。あるいは明け方までお酒を飲み続けているときとか。身体は動かないが思考は何となくできるし、周りの刺激もある程度わかる。身体が動かなくなるまで飲んではいけない。
ただし全ての感覚がなんとなく鈍るのかといえば、全然そうじゃない。なぜか聴覚が生きてる。なんかやたら聴覚最後まで生きてるのよ。
つまり手術中の音や会話も全部聞こえるのだ。これで何が起こるかといえば。
「多分麻酔したら聞こえなくなっちゃうけど、リラックスのために音楽かけましょうか。何でも好きなものかけられますよ」
と言われたので、適当なポップスをかけてもらっていたのだが、自分の脈を測っている「ピッピッピッ」という音と医師のかけてくれた「最新J-POPプレイリスト」みたいなののBPMが合わなさすぎてすっかり目が覚めてしまった。
自分の脈はせいぜいBPM70前後。そんなゆったりな曲はJ-POPにおそらくないし、自分の脈が120まで上がることもない。アスリートかよ。
冒頭に書いたように明け方ウトウトしているときと似ているので、気になり始めるとどんどんと頭が冴えてくる。熱帯魚のポンプを止めた市村正親ってこんな状況だったのかなとか思う。いや、違うな。
とっくに手術は始まっている雰囲気だったものの全然落ち着かないので、黒井川よろしく曲の変更をお願いする。
「じゃあクラシックプレイリストとかにしましょうかね」
と変えてくれたのだが、然して流れたのは、
ファオーン ファオーン ファオーン ファオーン
ファンファンファンファン ファンファンファンファン
テテテテテテレテ テテテレテテテ
(カステラ1番 電話は2番)
テテテレテテテレ テレテレテレテレ
(3時のおやつは〜〜〜〜〜)
みたいなやつだった。
パーパーパーパー パラパパパラパ
パーパーパーパー パラパラパパパ
看護師さんの「むしろ体育祭みたいですね」みたいな苦笑いとかももう全部聞こえてくる。し、こちらもすっかりそれに反射で答える。なんでしたっけ……なんか……天使と悪魔みたいなやつ……。
で、
「あんまりしゃべらないでくださいね」
「麻酔追加してください」
「あと『天国と地獄』ね」
医師から喋り過ぎと半端な知識を注意されて普通に寝た。というか寝るようにされた。いや多分その後も、今どんな作業してるんですかとかホニャホニャしながら聞いて怒られたりした。あんまり覚えてないけど。
摘出した部位を医師が看護師へ渡したと思われるタイミングで、あとで見たいのでとっておいてください!とお願いしたのは、今これを書きながら思い出しました。突然麻酔無視して元気に摘出部位を見たがる患者キショいな。ほぼ寝言だからな。
あとから看護師さんに聞いたところ、麻酔は肝臓で代謝するのでお酒強い人は効きにくいかもね的な説もあるらしい。恥ずかしいのでお酒は普通くらいなんですけどね?何ででしょうね????と言っておいた。
(ホント?都市伝説?)
そう考えると静脈麻酔はやっぱり、明け方まで飲み続けてもうどうでもよくなった飲み会のときの感覚にかなり近いのではという気がしてくる。
酔って寝ている人を「寝ちゃったね」とヒソヒソ話していれば「起きてるよ!!!」といきなり返ってきたりするし、「帰るよ」と声をかければ大声じゃなくともパッと起きてくれたりする。
酔っていても静脈麻酔をしていても耳は最後まで聞こえるので、今後悪口とか軽々しく言わんとこうな。
ちなみに術後、摘出部位を見せてほしいと自分が言ったことは忘れていたので突然血まみれの何かが運ばれてきたときに、ビビり倒してしまったのはなかったことにしてほしい。
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