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はじめましてのシフォンケーキ

春。桜が綺麗に咲いていた4月の上旬、約束の時間に少し遅れて到着した私を怒ることもなく優しく迎えてくれた彼、前に電話で話していたオススメする喫茶店に行って食べたシフォンケーキの味は今でも思い出す事ができる。オレンジのシフォンケーキは優しくてちょっと甘酸っぱい酸味がバランスよく取れていてこれは本当にはじめましてのシフォンケーキだった。彼と会うのもはじめまして。なんとなく人って会った瞬間に感じるものがあると思う、フィーリングってやつかな、はじめましてなのになんかずっと前から知っていたような雰囲気だったのが忘れられない。桜を見たくて歩いて行った道も時間外で閉まった神社も忘れられないしお酒を買って飲んだ公園のベンチにちょっとだけ見える都会の夜景とその公園に現れた猫も忘れられない。忘れたくないけどいつか忘れる日が来るかもしれないし忘れたくなる日が来るかもしれない、それが今じゃなくても。寒いと言って手を繋いで歩いたことも彼の優しいキスもはじめましてなのに思い出を作りすぎたような気がする。寝てしまえば忘れる身体じゃないから思い出すだけその思い出が濃くなるばかりで朝私を送ってくれた駅のホームの見送り方もズルかったこんな気持ちになるなんて1日前の私には想像もついてなかったのにその瞬間彼に惹かれてしまったんだと後戻りはもう出来ないね。

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