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H-IIAロケット47号機の打ち上げ中止

 28日に予定されていたH-IIAロケット47号機の打ち上げについて、三菱重工は、上空の風が打ち上げ時の制約条件を満たさないことから、打ち上げを中止すると発表しました。

 打ち上げは9時26分22秒に予定されていましたが、8時59分、打ち上げの10分前までに行うX-10分作業開始判断(最終Go/NoGo判断)の結果、中止が決定されました。

 中止の要因となったのは、「H-IIAロケット47号機打ち上げ主要制約条件」で定められているうちの、「飛行安全系・射場系」における「高層風」でした。

 同条件では、「射点近傍で破壊した場合に、落下破片等による警戒区域外への影響がないこと」と記されています。これは、ミッション中断時の指令破壊や、機体に予想外の負荷がかかったことで破壊された場合などに、ロケットの破片があらかじめ設定された警戒区域内に落下しないようにという目的で定められているものです。

 今回は、高度5~15kmの間で最大30m/sの強い高層風が吹いており、また風向も、東から北東へ、つまり海から陸側へ吹いている状況でした。このため、制約条件を満たさないと判断され、打ち上げは中止されました。

H-IIAロケット47号機打上げ主要制約条件(黄色マーカーは筆者によるもの)

 ロケットはこのあと、推進剤を抜き、いったん整備組立棟(VAB)に戻されることになります。

 新しい打ち上げ日は未定となっています。今後、気象条件のほか、整備組立棟に戻したあとのロケットや衛星の点検状況なども踏まえて決定されます。

 H-IIAが一度推進剤を充填したあとに打ち上げを中止した場合、再度打ち上げができるのは最短で3日後となります。これはいわゆる"中二日ルール"というもので、打ち上げのためには再度、関係各所への通達を行う必要があることや、ロケットの点検など技術的な制約、また関係者の休息などが必要であるためです。

 ただ、28日時点で、3日後(31日)の天候は悪く、さらに新しい台風や熱帯低気圧も発生しており、予断を許しません。

 打ち上げ予備期間は9月15日まで確保されており、それまでに打ち上げられなければ、再度打ち上げに必要な手続きをはじめ、ロケットに使われている消耗品、保証期間切れの部品の交換なども行う必要があり、打ち上げが数か月単位で延びる可能性があります。

 また、今回の打ち上げではとくに、搭載しているペイロードとの兼ね合いもあります。X線分光撮像衛星(XRISM)は観測機器を冷却するための冷凍機に液体ヘリウムを使っており、打ち上げの約10日前に冷凍機にて注入して冷やし続けています。打ち上げ予備期間内であれば冷凍機を動かし続けることで対応できるそうですが、もし長期間延びるようであれば継ぎ足しする必要があるかもしれないとのことです。

 また小型月着陸実証機(SLIM)は、月へ向かうためにエネルギーが少なくて済む特殊な軌道で飛行することから、打ち上げ可能な期間が限られており、この9月を逃すと、次は12月になるとのことです。

 天気が相手では延期は仕方がないことであり、なにより万全の状態で打ち上げることが第一ですが、一方で延期が続けばコストが嵩み、また関係者の疲労もたまり、さらに今後の打ち上げ計画にも影響を及ぼします。一日も早い天候回復を願うばかりです。

打ち上げ中止が決定された直後のH-IIAロケット47号機(筆者撮影)

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