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『Understanding video games: The essential introduction』の紹介

 今回は,以下のゲーム研究の文献をご紹介します。ゲーム研究は海外で盛んに行われていて,本はたくさん出版されています。それらのうちでも参照するに値すると思われる洋書を取り上げます。

Egenfeldt-Nielsen, S., Smith, J. H., Tosca, S. P. (2013). Understanding video games: The essential introduction. 2nd ed. New York: Routledge.


どのような本か

 海外では,ゲーム研究関連の書籍がすでに大量に出版されています。その中でも比較的バランスよく重要なトピックを扱うことができている概説書が本書です。主としてゲーム研究の基礎を扱っており,読者として想定されているのは,ゲーム研究に関心のある学生,開発者,研究者となっています。ゲームをめぐる状況は日々,変化し続けているため,第2版はこのような状況に追いつけるように少し加筆されています。

 本書は,関連する文献と諸学問分野の理論を参照しながら,ゲーム研究の各トピックについて解説する学術書です。したがって,一般の方はもちろんのこと,日本語ネイティブの学生が読破するには,それなりの集中力を要すると思われます。なお,理解するために人文・社会科学分野の知識が必要となる箇所がいくつかあります。

 本書で説明のために挙げられるゲームの例は,馴染みのあるものではないかもしれません。日本で生活してきた学生であれば,本書で例になっているゲームを,自分にとってプレイ経験のあるゲームに置き換えて読むといった工夫が必要になると思われます。


全体の構成と特徴

 全体の構成は,序論,ゲーム産業,遊びとゲーム,歴史,美学,文化,物語論,シリアスゲーム,悪影響論となっています(シリアスゲームは社会に役立つゲームを指す用語です)。各章には下位項目があり,近年に流行した「ゲーミフィケーション」はシリアスゲームの章で扱われています。どのトピックも,ゲーム研究では避けて通ることのできない重要なものばかりです。本書の魅力は,学術的な視点からゲーム研究の基礎を包括的に扱っているということに尽きます。


 ゲーム研究としては基礎的な内容ですが,英語で書かれているため,英語が得意な人でもない限り,読むのに労力を必要とします。今は日本語で書かれたゲーム研究の本が多くなってきているので,概論レベルの授業で扱う教科書というよりはむしろ,輪読などを行う演習レベルの授業で扱うのに適していると思われます。概論レベルの授業でも,参考書として活用するのがよいかもしれません。

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