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MSR Internship アルムナイ Advent Calendar 2020 (10日目)

豊橋技術科学大学の吉田です、こんにちは。「Microsoft Research Internship アルムナイ Advent Calendar 2020」の10日目の記事です。僕は、北京にあるMicrosoft Research AsiaのNatural Language Computing Groupに、2011年7月~2012年2月、2012年6月~8月の計9ヶ月滞在しました。メンターは荒瀬由紀さん(現大阪大学准教授)です。僕は、Natural Language Computing Groupで初めての日本人インターンであり、荒瀬さんの一人目のインターン生でした(多分)。当初は6ヶ月の予定でしたが、ある国際会議への投稿を断念して1ヶ月延長、ある国際会議にrejectされた論文を直すために2度目の滞在となりました。特にまとまりもない、とりとめもない思い出話を書きます。

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北京に到着して3日目に見つけた猫。耳と尻尾が細くて可愛い。猫といえば、飲み会の二次会会場で待っていたら、荒瀬さんが猫を抱えてきたことがあったかな(猫を抱えていなかった公野さんは凄く寒そうだった)。
当日:
僕「なんで猫抱えてるんですか?」
荒瀬さん「暖かいから」
僕「どこから持ってきたんですか?」
荒瀬さん「外にいたよ?」
翌日:
荒瀬さん「昨日の記憶が曖昧なんやけど、私、猫を抱えていたような気がするけど、それは夢?」
僕「抱えてましたね。夢ではないです」

滞在中に書いた記事は以下で読むことができます。9年以上前の記事ですが、若者らしくいいこと書いてます。夢いっぱい。

在中国日本国大使館から連絡が来た話

「在中国日本国大使館から連絡が来た話とかをします!」とか書いておいたので、とりあえず、このネタを回収します。メールを見直してみたところ、2014年に連絡が来たので、インターンシップとは余り関係なかった。人間の記憶はアテになりません。

ご存じの通り、北京の大気の状況はあまり良くなく、特に、PM2.5が問題になっています。PM2.5に関する当時の信頼できる情報源は、在中国米国大使館内に設置された測定器で、その測定結果は @BeijingAir に投稿されています。僕も大気の情報が気になるので、このツイートを収集し、過去からすべての測定結果をCSV形式で出力するWebAPIを作っていました。非公開APIとして開発していたものの、サーバを移転した際に公開状態になってしまっており、2014年に再び非公開にしたのでした。

すると、在中国日本国大使館から、使えなくなるのは困るのだけれども、何か問題が発生しましたか?と連絡がありました。いやー、WebAPIは自分専用だから問い合わせ先も書いていないし、URLからは自分に繋がる情報はないはずなんですが、大使館のスタッフともなるとよく勉強しはるな~と思いました。ま、データのライセンスについて少し前から在中国米国大使館に問い合わせてはいたものの返事がなくて困っていたところだったので、連絡を中継していただき、必要な返事をもらえたのでラッキーでした。

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大気の状況が良くない日。曇りというわけではなく、晴れなのだけど太陽の光が余り届かないって感じです。

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大気の状況が良い日。良いですね。雨の次の日は大気の良い日になります。

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すごーーーーーく大気の状況が悪い日に、一度だけ、職場でN95マスクが配られました。マスク使ってる人なんか見たことないし、配られたN95マスクもほとんど使われていなかったと思う。なお、僕は喘息と花粉症を持っているのですが、中国の大気には反応するアレルゲン(ブタクサあたり)が含まれておらず、めちゃくちゃ快適でした。中長期的にどうなんだという問題はあるのだけど、短期的には日本より快適。花粉症は辛い。

運が良かったこと、すぐに決断できること

9年前の記事に書いた「インターンに来たきっかけ」は随分とアッサリしているので、もう少し補足しようか。運と親切に助けられました。僕は随分と運が良い。

MSRA University Relations(現MSR Connections)の公野さんからMSRAでインターンを募集している旨のご連絡をいただきました。

連絡を頂けたのは、英語のCVを公開していたからだと思います。しかも、公開した翌日くらいに。このCVは他のインターン選考のために準備したもので、公開しないのも勿体ないと思って公開したのでした。この記事を読んで英語のCVを公開していない人は、英語のCVを公開しましょう。

他の海外インターンの選考中だったので迷いましたがアプライを行い,電話面接,コーディングテストを経て7月よりMSRAでの研究活動を開始しました。

実のところ、公野さんからのアプライの誘いは、一度断っています。これは、他のインターン選考が特別なプロセスで進んでおり、この状況で別のインターンにアプライするのは不誠実だな…と思ったからでした(結局、マッチングしなかったけど)。通常であれば、一度目の誘いを断った時点で二度目はなくなるのだけれども、この時は、荒瀬さんの強い勧めもあって、結局、電話面接を受けることになりました。

電話面接、Skypeでやる予定だったんだけど、通信環境が安定せず、先方から僕の携帯電話に電話して頂く形で実施になりました。最初の15分ほどは英語で話し、その後は日本語で話したかな。「英語でスムーズにコミュニケーションできた方が良いけれど、やってほしいのは研究だし、ホームシックにならずに環境に適応できる方が大事かな。」といった趣旨のことを言われたのは印象に残っています。環境適応能力はそこそこあります。

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2011年7月から北京に滞在したのだけど、この日程が決まったのは、5月末でした。5月末に「7月から来られますか?」と話があり、特に迷いもなく「行けます」と答えたのでした。当時の僕にとっては、半年後の予定を決めるよりも、1ヶ月後の予定を決める方が容易でしたので。半年後の興味関心なんか分かんないし。とは言え、僕の中では、7月中旬くらいかな…と思ってたんですけどね。だって、滞在のための査証を取る必要があるし、査証を取るためにはオファーレターの原本を北京から送って貰わないといけないし、とやることいっぱいなので。オファーレターには7月1日開始と書いてあって、なんやかんやで手続きも間に合いました。周囲は親切に溢れてる。

良い職を得るには独立の推薦状が最低5通必要

教員を含む研究職にアプライする際には、推薦状が必要になる場合が多いです。推薦状が不要でも、照会できる人を求められます。推薦状については、林文夫先生の「私が書く米欧の大学院向けの推薦状について」がとても良いです。

この話は確か矢谷浩司さん(現東京大学准教授)がしていたと思うのだけど、良い研究職にアプライするためには、独立の推薦状が最低5通必要になるよ、とのことでした。それぞれ、別の国、別の大陸から用意しろ、みたいなのもありますよね。

まともな推薦状を書いて貰うためには、一緒に仕事をしている方が良いですよね。言い換えれば、共著論文を書いてるかどうかですね。また、独立の推薦状にするためには、各々の推薦者と同時に共著者にならない、という縛りもあります。さらに言えば、それらの条件下で、主著になってる必要もあるでしょう。

この話はもちろん北京で聞いて、自分として、どのように活動していけるかな、あるいは、この条件を満たせる日は来るのかな…なんてことを考えたのでした。今、自分が様々な人と仕事している根底は、ここにあるかも。ま、色んな人と仕事するのは良いけど、主著ちゃんと書けってめっちゃ言われてますけどね!!!うう…

Microsoft Research Asiaにアプライした段階の研究業績は、日本語ジャーナル1編だけでした。今の職にアプライしたときも、日本語ジャーナル2編、国際会議論文1編だったわけだし、ポテンシャルはあるように見える活動を続けてきたけど、そろそろ地に足を付けないとキツいぞ??

親切な人が多い

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北京ではSIM下駄を履かせて、iPhoneのSIMロックを解除して使ってました。このSIM下駄は、怪しげな販売員と価格交渉の末、300元から70元になりました。相手は英語話せないし、僕は中国語が話せないという状況はしょっちゅう生じるのだけど、この時は、販売員が、英語を話せる客を連れてきて、その客を通じて価格交渉しました。50元くらいまで下がるんじゃないかな…と思ったけど、面倒になってきて、その場で作動確認をさせてくれれば70元で買うよって、話がまとまったのでした。販売員がめっちゃ喜んで、通訳やってくれた客に電卓あげてたので、実際、もう少し下がっただろうなぁ。なお、別の怪しげな販売員に、このSIM下駄を70元で買った話をしたらめっちゃ驚いてて、正規品だと300元だよ、70元ということは非正規品だね、みたいなこと言ってた。

Microsoft Research Asiaは海淀区という北京大学や清華大学のある学研エリアにあり、英語を話せる人が比較的多いエリアだと思う。なので、飲食店などで英語の通じない場所でも、英語で話しておけば、誰かが通訳してくれるというのが多かった。同じような経験はMicrosoft Research Asiaの日本人インターン生なら誰でもあるので、中国びいきになる人も多いと思う。ま、カナダで研究した人はカナダびいきになるし、アメリカで研究すればアメリカびいきになりますね。

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今、毎週、回転寿司で寿司を食べているけど、もちろん北京でも毎週寿司を食べてて、五道口の魚太郎というお店によく行ってました。日本語通じませんけどね。ビール飲みつつ寿司を食べながら論文見る、みたいな感じ。中国語の勉強はしなかったけど、ご飯を食べられないと死んでしなうので、飲食店で使える中国語の単語については、聞き耳学習で覚えました。菜单(サイタン)、这个(ジェガ)、买单(マイダン)とか。

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魚太郎では白マグロも出ていたので、北京で開催された国際会議に出席した友人に奢りました。白マグロなんて魚はないので、実態は、日本では食べられないバラムツです。

海外の図書館と北京大学

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図書館が好きで、海外出張等の際には、図書館を回っています。この写真は中国国家図書館です。外国人も利用カードを作り、自由に利用できます。地震の少ない国は建物の自由度が高く、公共施設もデザイン性が高いです。ちなみに、中国の図書館では、利用者カードを作る際に預けるデポジットの金額により、貸出可能冊数や期間が変わります。資本主義っぽい。

中国国家图书馆 (National Library of China)
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.372224926184634
北京大学图书馆 (Peking University Library)
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.372228082850985
北京市海淀区图书馆 (Haidian District Library)
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.372519016155225
清华大学图书馆 (Tsinghua University Library)
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.425048770902249
中国人民大学图书馆 (Renmin University of China Library)
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.425049890902137
Qatar National Library
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.3242234869183611
Kaohsiung Main Public Library
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.3269196626487435

ほかの写真はFacebookにあるので、どうぞご覧ください。ちなみに、北京大学図書館の見学は一度失敗しています。隣の席のインターン生が北京大学の学生だったので、図書館見学のアレンジをお願いしたら引き受けてくれたんだけど、どこから持ってきたのか分からない入館カード(学生証)で入館しようとしたら、普通に警備員に怒られて追い出されました。そりゃそうだ。僕は、これくらいの適当さが好きだけど。

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北京大学の中に居た猫。街中には野良猫・野良犬は皆無で、北京大学の中は猫にとってもオアシスですね。なお、北京大学で教員をされている図書館情報大学の卒業生を頼ることができたので、北京大学図書館の見学はちゃんとできました。この時も、正門の警備が厳しいので裏門に来て下さい、と言われたので、全体的にこんな感じです。最近はどうなんでしょうか。

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北京大学の食堂で、注文機がタッチパネルで驚いたり。2011年12月だと、日本でもタッチパネルによる注文は少数だったと思う。

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北京大学には自転車がいっぱいありました。筑波大学にもいっぱいあったけど、北京大学の方が多そう。

コミュニティに属するということ

Microsoft Research Asiaでインターンシップをした利点は多数あるけれども、最大の利点は「Microsoft Research Internship アルムナイ」というコミュニティに属せることだと思う。別に何か常に一緒にやってるわけではないけれども、緩やかな繋がりを持ち、ちょっとした相談をしやすいといった効果があるのでは。年に一度くらい、同窓会ができると良いですよね。あ、このAdvent Calendarが同窓会代わりですかね。

インターンからの繋がりで、今の仕事に影響を与えた事例をいくつか。随分と長いこと居たので、日本人インターン生だけで20名ほど友人が増えました。

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榊剛史さんとは今も一緒に仕事をすることが多く、また、色んな方をご紹介いただきました。最近は、鳥海不二夫先生と一緒に仕事することが多く、これも榊さんによる紹介です。また、Gunosy社との共同研究もNLP2016の懇親会で関喜史さんを紹介していただいたのがきっかけです。この辺から派生した研究プロジェクトは多数あり、榊さんには頭が上がらない!僕も、このような人のハブになりたいな~と思ってます。ちなみに、僕も榊さんも北京滞在中(の業務時間外)に人工知能学会誌の原稿を書いていて、マジ死ぬかと思いました。僕の方では、人文社会学系の日本語論文は電子化されておらず、北京からだと内容を確認できなかったので、マジで学術情報の電子化を進めないといけないと誓いました。
ソーシャルメディアの政治的活用 : 活用事例と分析事例から
ソーシャルセンサとしてのTwitter : ソーシャルセンサは物理センサを凌駕するか?

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岡田和也さんには学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点の申請を誘われて、何度か挑戦したものの採択に至らず…。でも、僕が外部資金申請書を書く際には、個人研究ではなく、チーム研究にするんだ、というのを決定づけたと思う。申請書執筆にも慣れてきたので、そろそろ再挑戦したいかも。いや、すでにエフォートヤバいんですが。ATMからお金を引き出したら、偽札が出てきたのは岡田さんだったと思う。ATMにも偽札が入ってるんだな、という学びがあった。

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秋葉拓也さんとはグラフに関する共同研究を進めていたことがあります。この研究は日の目を見ずに終わらざるを得なかったのだけど、この時にグラフを触ってみて、ネットワーク研究を進めていくぞ~と方向が決まりました。ちなみに、秋葉さんは北京でのルームメイトでもあって、なんか面白かったです。競技コンテストがある日は、今日は俺に話しかけるな、みたいなこと言って回ってた。

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佃洸摂さんには僕の見ている学生さん(廣中詩織さん)を産総研のインターン生(技術研修生)として受け入れていただきました。僕の指導教員がインターン中の僕に対してそうであったように、僕も廣中さんのインターン中はノータッチでした。インターンは指導教員を離れて活動できることを示す大きな場なので、指導教員抜きで共著論文を書けると良いよね。独立の推薦状を貰うのにも繋がります。
Collaboration in N-th Order Derivative Creation

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Natural Language Computing Groupの皆さんとの写真。当時のインターン生の多くが、今はMicrosoft Research Asiaで働いているので、僕はとても面白い時期にインターンしていたのだと思う。やっぱり僕は運が良い。

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