見えないバイアスと生きてる_2
他人にとやかく文句を言われる筋合いはないが、特に自分がネガの思考になっている時、目ざとく察知して悪口のようなものを言ってくる人間は一定数いる。
その頃、私はスーツ着用必須の仕事をしていて、セットアップのパンツスーツを着ていた。その日は帰宅途中だった。
まばらな電車内で、私の向かい側に座った母娘は、私によく聞こえるように、ただ視線は合わせないように、まるで下手な芝居を打つように、しゃべっている。
「なんかキャリアウーマン気取ってるって感じよね。仕事だけって感じ!」
前にこういうことをされた、と友人に話したら、「どうしてすぐ逃げなかったの?」と言われたことがあった。天真爛漫で容姿に恵まれた彼女には分からないだろうが、そういことをされている時、人間の心と体は硬直しがちだ。
ああ、またか。と思った。
そんなに頻繁ではないが、母娘(母親は専業主婦風、娘は大体小学校高学年くらい)の組み合わせて他人をいじめて楽しんでいる、というシチュエーションは、私にとってはそこまで珍しくない。
自分が娘を産んでから、そういうことを娘の前で平然としてしまう親とは一体なんなのか、と憤ってしまうのだが、実際にそういう母娘はまあまあ存在している。
親子というより友達同士のような感覚で、他人を落とすことで自分たちを肯定し、心の平穏を保っているんだろう。そしてそういう親を見て育った娘は、いつか必ず誰かをいじめるだろう。
身内には優しく、他人には冷たく。東京砂漠は今日も手厳しい。
娘よ、人に優しい子になってね。