惜別野球人【嶋基宏、坂口智隆篇】

 球界再編直後から、その中心となった楽天、オリックスの両球団を支えていたパ・リーグの生き字引とも言える選手が同じ球団でユニフォームを脱いだ。今回は、そんな2人に個人的な思い出を織り交ぜて回顧することとした。

嶋基宏に野球の底力を見た

 11年前、東北大震災の起きた年のことだ。少し遅れた開幕セレモニーで、楽天のチームリーダー的な存在であった嶋が「見せましょう、野球の底力を」と言ったことを鮮明に覚えている。当時はまだ小学校3年生だったのであまりどうこう思うことは無かったのだが、20歳になって振り返ってみた時、家に帰ることが出来ない人がいる中で、こうした力強いメッセージを被災した地域のフランチャイズ・プレーヤーが放ったということで少し気が楽になったり、活力を取り戻した方々は野球ファンであるか否かは関係なく多いのではないか。

 肝心のプレーの面でも素晴らしく、隙のない守備が印象的だ。元々二塁手だったということもあり、犠打を何度も阻止していたことが印象的だ。打撃でも長打力はないが安定感のある巧打者として楽天打線の繋ぎ役を全うしていたことが印象深い。これだけキャプテンシーがあり、野村克也、星野仙一の両氏に教えを受けていたことを考えると、必ず将来監督をやらなければいけない人材だろう。

神宮の杜に蘇った最後のいてまえ戦士

 オリックスからヤクルトに移籍した時点でベテランとなっており、その時点でもベテランの域に入っていたので数年代打や守備固めをして指導者になると思っていたが、移籍から3年間切込隊長として1番打者の役割を全うは本当に素晴らしいことだろう。この坂口が引退したら、とうとうNPBに近鉄を経験した選手がいなくなってしまうのは大変に寂しいことではあるが、それだけ球界の世代交代が進みフレッシュな顔ぶれが台頭していると考えたら結構なことである。

 これはプレーに全く以て関係の無いことだが、何年か前にヤクルトファンがぽつぽつといる左翼観覧席に位置するビジターチーム応援席で観戦した際に聞いた坂口の応援歌はまさに1度死んだ男にマッチするものだったので覚えている。「不屈の魂で、再び挑み、新たな歴史を刻め!見せろ!坂口」という歌詞は名曲の他ないだろう。大変におこがましいが、ヤクルトの応援団に日曜朝のあの番組のように「あっぱれ」を差し上げたい。

最後に

 平成のパ・リーグを盛り上げた選手が多々引退するので寂しいが、清宮幸太郎や佐々木朗希といったニューフェースの活躍を楽しみにしている。

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