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【D】1度地獄を見た男は強い

 梅津晃大が戻ってきた。前任の与田剛監督の下で延長10回を完投した後、肩肘の故障に喘ぎ続けてきたが、肘を手術した事によって不死鳥のごとくマウンドに戻ってきたのだ。今回は、そんなカムバックしたエース候補にハイライトを当てよう。

しなやかさ変わらず、力強さ増す

 梅津という選手の魅力を聞かれたら、常時150キロに迫る快速球と答える人が多いのではないか。まさに読んで字のごとく、快い胸のすくような直球である。外角低めに決めたら、まさに誰も打つことが出来ない「魔球」と化すのだ。

 正直に言うと、梅津手術という一方を聞いた当時、僕はその直球を二度と見ることが出来ないのかなと不安になった。あの球を投げるためには、身体をしなやかに使わなければならないからだ。梅津が故障したのは肘靭帯。ここを損傷したことにより、多くの投手がスタイルチェンジを余儀なくされたり、場合によっては投手生命を諦めなければならなくなってしまうのだ。吉見一起や、濱田達郎がこの手術をして、その後に術前の輝きを取り戻すことなくユニフォームを脱いでいることは中日ファンの記憶に新しいだろう。

 しかしながら、梅津は確かにマウンドに戻ってきて、しっかりと生きた球を堂々と投げ込んだのだ。それどころかメスを入れる前よりも、どこか球質が重いというか、打者が砲丸を打っているかのような力強さを感じる球に進化していた。結果は5回1失点。自らの失策により負け投手となったが、堂々と胸を張ってマウンドを降りられるような負け方である。正直に言うと二軍でも打ち込まれていたので、試合前はテレビ中継が始まる19時には既に敗戦処理の投手が荒れたマウンドに上がっていると予想していた。ここまで「いい意味で」期待を裏切ってくれた選手は久しぶりだ。

故障番号「18」、払拭して

 長らく中日を応援しているファンの方々は、梅津が故障した時に「またか」と感じたことだろう。他球団ではエースナンバーとして愛されていることが多い18番は、中日では故障の番号としてあまりいいイメージがないのだ。近年では伊藤準規や鈴木翔太がこの背番号を着け、怪我の連続によりあまり活躍出来ずに現役生活を終えてしまったのだ。松坂大輔に至っては、1度99番で復活した後、MLB時代に慣れ親しんだ18へと戻した所、ファンに肩を掴まれて大怪我をおってしまったのだ。まさに「呪われている」と言っても過言ではないだろう。

 今回の梅津も、やはり故障をしてしまった。ただ、彼はこの番号を単なる故障の番号ではなく、復活の出世番号へとしてくれるはずだ。投手の目利きに長けた与田前監督が惚れ込み、彼の強い希望で獲得をした選手なので、素材は十分すぎるほどにいいだろう。あとは結果。期待の若手という2つ名は、27歳となった彼はもう似合わないのだ。

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