マガジンのカバー画像

140字のおはなし

16
140字の物語をまとめました。
運営しているクリエイター

#140字小説

今日はこの世界の誰よりも遅く起きてやった。12時のチャイムは目覚ましになった。
午前の着信やメッセージなんか放っておく。小腹が空けば布団の中でスナックをつまんで、眠くなったらまたそのまま寝ればいい。
日が落ちる頃、ようやく顔を洗って少しだけ家事をするんだ。それが怠惰で幸せな休日。

自分は、思っていたより人から愛されているかもしれない。そう感じたのはここ数ヶ月のことだ。卒業を間近にして、いろんな人から遊びに誘われ、別れを惜しまれる。別れ際だけ優しくしてくる人なんて大したことないのかもしれない。そう思いながらも、楽しさと忙しさと虚しさの中に身を埋めているのだ。

「ねえそれなあに?」パウダータイプの美容液をつける私を不思議そうに覗き込む彼。あんまりにも見つめるから「ちょっと見すぎじゃない?そんなにこれが珍しい?」と聞くと「いや、毎日そうやって努力してるからこんなに可愛いんだなぁって」
手がとまる私。きょとんとする彼。これだから天然は困る。