見出し画像

元気があれば:The 1975


あたりめです。

イギリスのロックバンド、The 1975のライブに行ってきました。(※大阪公演)



彼らと会うのは昨年のサマソニ以来、約8ヶ月ぶりだった。世界がコロナ禍に入り、彼らもまた 数々のスケジュールのキャンセルを余儀なくされ、約2年半ぶりに立ったステージが日本のサマーソニックだった。

メンバーにとってもファンにとっても 待ち望んでいた日ではあったのだけど、ボーカルのマシュー・ヒーリー(以下 マティとします)の心は様々な想いが縺れていたように見受けられた。アーティストに限らず 人は "不安定さ" とともに生きていくようなところがあると思うけれど、マティのそれはかなり繊細で、強烈で、良くも悪くもすべてを隠さない。

私があの日のステージで目撃した生々しいほどの『生と死』の共存は、なぜそう思ったのかよく分からない、うまく言葉にできないけれど、メチャクチャに美しかったのだ。そういえばマティがいつかのインタビューで言っていた気がするな、『美しさはこの世で最も鋭利な武器』だと。美しいものは人をさすんだ。




知っている音楽がどうしても偏っていたり少なかったりするので、まだ出会っていないだけということもあるのかもしれないけれど、音の美しさみたいなところをみたとき、The 1975の右に出るアーティストは今のところ居ないと思っている。

なんというか、粒子を集めたかのような音楽なんだよなぁ、砂のお城みたいな感じ。


構成的には結構な数の音を重ねていることが多いバンドだ。何一つとて音楽知識のない人間の単純な考えでいくと 紙などと一緒で、何層も音が重なればその分 強度が増していくものなのでは?と思ってしまうが、なぜかマジでずっっっっっっっと儚い。もはや魔法。彼らはおそらく魔法を使っている。どこまでいっても、ずっと紙1枚のしなやかさのままなのだ。

それに加えて、ちょっとでもズレたら崩れて消えてしまうような、ギリギリ一点のところで成立している音のようにも感じる。それくらいの繊細さが、The 1975の音楽には詰まっている。




彼らのライブに行って、彼らの音を全身で浴びると、本当に不思議な気持ちになる。なんか「ストレス発散した!」とか「エネルギーもらった!」みたいな感想がマジで出てこないのだ。(※そういう類の魅力に欠けるということではないです)
そのまんますぎてシンプルにアホの感想になってしまうのだが、『浴びる』以外に例えられるものがないんだよなぁ、ファ〜〜〜〜〜なんよ、分かる?ファ〜〜〜〜〜〜〜です。(もう勘弁して)



大阪はThe 1975のワールドツアー日本公演の最終日だった。

『良き夜』でした。ただひたすら、これに尽きた。

メンバー4人以外にも数人のサポートが参加していて、Happinessなんかではサックスのソロパートで大歓声が起こっていた。もちろん私もブイブイ言うてました(ブイブイて)。渋すぎてジャズバーにでも来たんかと思った瞬間だった。Fallingforyouでは高音域・コーラスなど 曲のけっこうな部分を女性サポートが歌い上げていたのもメチャクチャ良かった。完全に別曲に仕上がっていた。





私は『UGH!』という曲がThe 1975でいちばん好きなのだけど、サマソニではセトリに含まれておらず聴けなかったので、今回初めて聴くことができて本当に嬉しかった。

あと、この話を何度したか分からないけれど、ジョングクにカバーしてほしいランキング不動の首位をキープし続けている曲でもある。何を根拠に、と聞かれると難しいのだけど、なんとなくジョングクの声はバンドサウンドとメチャクチャ相性が良い気がしている。

そのなかでもなぜUGH!なのかというと、この楽曲は頭から最後の最後までボーカルの "遊び" がたっぷり詰まったものになっているからだ。一つひとつの発音に合わせた、表現の遊びみたいなものがこれでもかと展開される、『音としての声』が聴いていてずっっっと楽しい一曲なのだ。これをジョングクならどう表現するのか、どの部分に自分らしさをあらわすのだろうかと、聴くたびにどうしても妄想が止まらない。(※ただこの曲が題材にしているものを考えると とてもじゃないがカバーは出来ないというのが現実である。悲し〜〜)



ちょいと(かなり)話がバンタンになってしまったが、UGH!は音も声もずっとカラフルでポップで、色んな味があるように感じられてメチャクチャ魅力的なのです。某メーカーのドロップス的な感じですね。(分かるか)

※念のためピクセル加工でお送りします




そしてLove It If We Made It、この楽曲は絶対に泣いてしまう説が浮上してきた。サマソニに続いて今回もこれで泣いてしまったのだ。冒頭からツラツラと "粒子の集まりのような繊細さ" の魅力を書いてきたのだけど、この曲に関しては真逆で、メチャクチャ強烈な力強さがある。エネルギーのかたまりであり、心臓みたいな曲。マティの生きる姿に、なんかどうしても泣いてしまうんだよなぁ。




ラストにくるのが分かっていても、The Sound→Sex→Give Yourself A Tryの流れは絶対にテンションが上がってしまう。ニクい。こういう、半分お決まりの展開みたいなものって「もうそろそろいいんじゃね〜〜?」とか言っててもいざ聴いたら全身全霊で大はしゃぎして喜んでいる客が大半なところ、絵に描いたオタクすぎて愛すしかない。
このあたりの曲は比較的誰でも「良いじゃ〜ん」となるであろう王道アップテンポナンバーなので、聴いたことがない方がいれば是非に〜〜〜




3月にArctic Monkeysのライブに行ったときもそうだったので、もしかしたら海外アーティストはみんなそんな感じなのかな?と思ったのが、ライブのシメの一言が『Good Night』だったことだ。

なんかこれメッチャ良くないですか〜〜〜?私だけなのか???

好きだなぁ、なんだかたまらない気持ちになる。また会いましょうとか、今日はありがとうございました(もちろん言ってるけど)とかよりも、友達感覚があるというか 同じ目線というか……… 一緒に過ごした今日の夜、楽しかったね、素敵だったね、おやすみ、ってなんかメチャクチャ良くないですか?対等に大切にしている感じがするんだよなぁ。




『生と死』を強烈に、繊細に、美しく表現する音楽を続けるマティには必ず『生きて会おうね』と伝えたくなる。



そういえば冒頭3曲終了したくらいの暗転中に、

『元気ですかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』


と渾身のドデカボイスをステージに投げつけている男性ファンが居てしぬほど笑ってしまった。それはもう猪木なんよ。

でも確かにそうだなとも思う、マティにはとても大切な愛の言葉かもしれない。元気があれば何でも出来ますからね。生きて会えるからね。

元気で、生きて、また必ず

サポートの通知を目撃したときは涙と鼻水を渋滞させながら喜んでおります、読んでいただき本当にありがとうございます。感想はこの上ない励みに、サポートは新たな音楽を浴びにゆくきっかけになります。