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古のロックバンドじゃないですか①:KingGnu


人はたぶんこういうのを、生き様と呼びたくなるのだ。


あたりめです。


KingGnuのスタジアムライブ(※初日・大阪公演)に行ってきました。ツアータイトルは『CLOSING CEREMONY』。ファンの方なら開催に至るまでの流れは知っているだろうけれど、記録として改めて一度振り返っておきたい。



2020年初、アルバム『CEREMONY』を掲げたアリーナツアーが予定されていた。しかしこのツアーはコロナ禍に入ったことにより全公演が中止になった。新規公演として同年秋に開催はされたものの、同じ規模や条件ではなかったり、新規公演に中止公演当選者が優遇されなかったりと、メンバーの間では到底納得のいくものではなかったようだった。

それから約3年、『CLOSING CEREMONY』開催のお知らせが来たのだ。

 そのリリース直後に直面した新型コロナウイルスの影響の中、観客収容率制限や声出し制限のもと、LIVEの開催を重ねてまいりましたが、本当にALBUM「CEREMONY」を昇華出来たのかという思いはずっと残ったままでした。
 その思いを払拭すべく、「CLOSING CEREMONY」と銘打ち、ALBUM「CEREMONY」を締めくくるLIVEを、バンド史上初となる屋外大型スタジアム、大阪・ヤンマースタジアム長居、横浜・日産スタジアムにてそれぞれ2公演ずつ、トータル4公演、収容率上限100%、声出し可能な形で開催致します!

公式HP




こんなもん惚れてまうやろぉぉぉぁあぉぉぉぁぁぉあぉおぁぉぉぉぁあぉぉぉぉぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(元々惚れてます)




彼らに限らずどのアーティストも中止になってしまった公演は必ずあっただろうし、その公演に対して「いつか…」の気持ちもまた 必ずあったはず。でもその "いつか" を現実のものにするのは当然かなり難しいわけであって。誰よりも悔しく悲しい思いをしてきたのはアーティストたちだし、想いはもう十分 痛いほどに伝わってきていた。だから別に現実になることが無かったとしても、不満なんて微塵も無いというのが私の気持ちだった。


"不満なんて微塵もない"というのは、どうやら私だけの気持ちだったようだ。


彼らはその不満を見過ごすことはなかった。魅せる人間として、ファンに対して。そして何より、つくる人間として、音楽に対して。


なんて集団なんだ。音楽に対するプライドが尋常じゃねぇ。メチャクチャ我儘じゃん。超頑固じゃん。同規模どころか規模爆上げスタジアムをスタンバイした上に人数・声出し制限一切なしの 正真正銘『CEREMONY』を『CLOSING』させるためだけのツアー。あのとき当たってた奴、あれから出会った奴、まとめて全員かかってこいやのツアー。こんなもんがあっていいのか。ファンに対して、音楽に対して、ここまでの筋の通し方があるんか。「そこに愛はあるんか」と問われたら確実に食い気味でアルゥ!!!!!!!と叫んでしまう。ため息をもらしながら女将サァン、と返してください。彼らはあまりにもお侍さんすぎる。サムライ。ジャパニーズサムライ。

アンタたち、昇華してもらえるってよ



脳内でひとり女将ボイスをリフレインさせているうちに、ヤンマースタジアム長居に到着した。開会式が、いよいよ始まる。


※私がヌーのライブに行くのは21年のツアー以来 約1年半ぶりです。22年の東京ドーム公演には参加できていない人間がお送りする ゆるレポになりますのでご了承ください〜。





1.開会式

なんとなく "開会式" からスタートするであろうことは想像していたものの、列をなして静かに入場してきた団体にド頭からひっくり返りそうになった。まさかのストリングス&ホーン(ペット)御一行である。まてよ、何人居んだよ。1・2・3・4……………15!!!?!?!?(※数え間違えてたら申し訳ありません…)大所帯がすぎるだろ。半オーケストラじゃん。

4人でのステージにこだわってきたヌーが満を持してストリングス&ホーン隊を引き連れてきた。これが何を意味するか。そんなもん 爆死☆ である。

5月の18時、夜と呼ぶにはまだ明るい空。空が見えるこのスタジアムで、どこか 散らばった心をきゅっと引き締めるような、凛とした音が確かな波動をもって拡がっていく。今 最も大きく鳴っているのは楽器か、それとも自分の心臓か。4人がステージに現れた。

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2.飛行艇

この曲に関しても、冒頭あたりにくると予想していた人は多かったんじゃないだろうか。漏れるように起こった歓声の暖簾を1枚1枚ぺらっとめくった先にはおそらく今世紀最大級の「待っでまじだァァァァァァァ!!!!!feat.鼻水」が完璧に鎮座していたと思う。またそのへんひっくるめてすべてを分かっているであろう4人のほくそ笑んだような余裕の表情が最高にニクく、最強に格好良いのだからたまらない。

頭の曲からスタジアムで大合唱が出来たのも感慨深かった。ライブではある意味あるあるともいえる、まだ温まりきっていないフロアに対して自身を解放しきれない、オーディエンスのもじもじ感がしっかり含まれた合唱だった。こういうところ全員人間って感じでいいよね、モニョモニョ合唱愛おしい。ハグ。

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3.Tokyo Rendez-Vous

いや〜〜〜この曲がここでくるとは!!!

個人的にはわりと終盤の印象が強かった曲なので、早速裏切られた感覚だった。この "裏切り" というものが許されるどころか 痺れるほどのトキメキをもたらすものへと変貌する特殊現象、大好物である。

そして飛行艇に続き、ここでもモニョモニョ合唱が顔を出す。ランデブーに関してはむしろモニョモニョしている感じのほうが私は好みだったりする。焼肉もタレより塩派なんだよな〜〜、胃もたれへのリードが規格外の短さなので。マジで何の話?



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4.Teenager Forever

イヤァァァァァァァ!!!!!!!!!!

問います。ここで吠えた人間は正直に手を挙げましょう。今なら怒りません。


裏切りのビッグウェーブがすぎるだろ。君たちは一体何をしている???????

本編ラストあたりにくると思われていた楽曲のまさかの打順に 大袈裟でなく、モニョ合唱(モニョ合唱)の100倍近いボリュームのどよめきが起こった瞬間だった。約5万の群衆から出るファーストドデカボイスが黄色い歓声ではなくどよめきというとんだ珍事。どよめいておきながら数秒後にはティッティッティッティッ ティンネージャァ フォエ〜バァ〜〜〜と柔軟に対応しているあたり、非常に優秀な群衆である。良いですか皆さん、これを愛すべきオタクと言います。


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5.BOY

ライブに参加している間(特に始め)はプチパニック状態のため、目の前で繰り広げられていることを余すことなく把握するのは本当に難しい。怒涛の裏切りウェーブを乗り越え5曲目・BOYに突入したところでようやくストリングス&ホーン御一行の音がスッと耳に入ってきた。(遅いよ)

こういう弦楽器・管楽器の類の生音を聴く機会ってほとんど(というよりほぼ)無いので、どうしても印象がひとり歩きしてしまうのだが、シンプルに、直接的に表現するのであればやはり『美』になるだろう。規律的というか、優等生な音という感じだ。

でもBOYで鳴り響く彼らの音は、とても躍動的で自由な雰囲気があった。すごく "遊び" を感じる音だったのだ。ポップでヤンチャな弦楽器ちゃんと管楽器くん。一人ひとりしっかりはみ出しているのに、しっかり馴染んでいるのが本当に不思議だった。


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6.雨燦々 〜 7.小さな惑星 〜 8.傘

ギター・常田さんは音としては "歪(ゆがみ・ひずみ)" とかのダーティなところを好む傾向があると思うのだけど、"歪" を強くすると、なんとなく "乾き" の要素も強くなりやすいのではないかな〜と思う。(思うだけよ!)

私はそういう "常田色" みたいな音が本当に大好きなのだが、雨燦々〜小さな惑星〜傘にかけての楽曲ではまた別の魅力を大放出していた。"艶" である。

このあたりの楽曲、湿度が高めだったというか、水分みたいなものを常田さんのギターからほんのり多めに感じた。(というか2/3曲で雨要素付いてるもんな、そりゃそうだ)
まともに楽器に触れたことのない音楽ド素人の私は毎回、このエフェクター云々の驚異的な働きに頭を抱えてばかりだ。ギタリストたちが鬼の形相でエフェクターを集めまくる気持ちがよく分かる。

ベース・新井さんに関しては、もはや仕事量が多すぎるため すべての音を追うことは全然余裕で不可能なのだが、小さな惑星での指さばきは本当に見事としか言いようがなかった。私は個人的にこの曲のベースライン・スラップが大好きなので、心のなかで拝みながら聴いていた。いや、聴かせていただきました。



そうやって きもちよ〜く音を浴びていたのだが、Teenager Forever・BOYくらいからうっすら思っていた。

「エ、これ、MCいつ入る?」

あまりにも淡々と進められていくステージに、己のなかに住み込むノブが前歯のウラくらいまで出てきていた。なんなら「ちょ」くらいは声に出ていたかもしれない。「っと待て」は力ずくで押さえ込みました。

記憶が曖昧なので、MCが傘の前だったか後だったかハッキリ思い出せないのが虚しいが、MC開始早々 皮膚炎症待ったなしレベルで冷却スプレー(サロンパス)的なものを腕に撒きまくるドラム・勢喜遊せきゆうの姿だけは何故か今も鮮明に脳裏に焼き付いている。



そんなこんなでようやくMCに入ったものの、ここで世紀の大事件が発生した。ステージがスモーキングエリアと化したのである。

「このへん(常田ピアノ周辺)ならダイジョウブ、」などと訳の分からない主張(愛)をしながらおもむろに火をつけたボーカル・井口(※以降 さとるとします)。そのコンマ5秒後、大きく傾くことですこし柔くなったオレンジの陽射しと 自身の吐いたその煙に纏われ 客席を見つめる常田大希の姿がスクリーンいっぱいに映し出されたのだ。


その絵に、喉がひゅっとなって、全身が硬直した。息を呑むって、こういうことを言うのかと。


完全にマフィア映画のワンシーンでしかなかった。あんなに鋭利な美しさがあるのか。「っ………かっ、こ、いい…………………」客席の四方八方から、消え入りそうな声が聞こえた。こういうありふれたワードで片付けたくはないのだけど、本当に、圧倒的なオーラだった。


***


9.ユーモア 〜 10.Don't Stop the Clocks 〜 11.カメレオン

私に残っているのが捏造記憶(捏造記憶)でないことを願って書くけれど、おそらく、たぶん、ユーモア・Don't Stop the Clocksがアコースティックアレンジになっていたはず。

ンマ〜〜〜〜〜良い雰囲気だった。酔いしれた。

いつもそうなのか、今回たまたまなのかは分からないけれど、常田さんってこういうときのアコギでもピック弾きなんだなぁ。Don't〜 なんかは特に指でも良いのかなと一瞬思ったりしたのだけど、スタジアムの奥まで音で満たすことを考えたら、ピック弾きのほうが輪郭のある音になって届きやすいのかもしれない。全体的にテンポもすこし落として、フリーでラフな音の紡ぎ方になっていて癒やされた。

カメレオンを演奏する頃にはもうすっかり暗くなっていて、この曲に用いられているシンセっぽい音や常田さんのボーカルエフェクトなんかが星みたいにキラキラして聴こえた。


***


12.三文小説

腰掛けた常田さんがスポットライトにひとり照らされ、目の前の鍵盤に触れた。流れ出したメロディーに、私はどうしても泣くのを堪えられなかった。

坂本さんの『Merry Christmas Mr. Lawrence』だった。

音楽家から音楽家へ、音楽をもって伝える、リスペクトのすべてがそこにあったと思う。

常田さんは何かを話すわけでもなく、ただピアノと向かい合い、ときよりアレンジを混ぜながら、その音をそらへ融かした。

坂本さん、私が大好きな音楽家たちは、皆あなたの音楽を愛しています。あなたが遺したものは、こうして 永く、永く続いていくのだと思います。


ピアノソロから途切れることなく続いたのが三文小説で、こんなのあんまりだ、とまた泣いた。私は個人的に、三文小説を 内容としては究極の人間讃歌だと思っているところがあり、また音としては "人間が生きていく" ということの極限の表現が詰まったものだと思っているところがあったので、このミスターローレンスからの流れはもうたまらない気持ちになってしまったのだ。2日目の公演後に流れてきた情報で、この仕様のアレンジは1日目だけだったことを知った。とんでもない男である。


(まさかの)②へ続きます。

サポートの通知を目撃したときは涙と鼻水を渋滞させながら喜んでおります、読んでいただき本当にありがとうございます。感想はこの上ない励みに、サポートは新たな音楽を浴びにゆくきっかけになります。