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【散文】秋桜〜シロクマ文芸部〜

秋桜はキク科。
そう言われればしっくりくる、
静かさが香るというか。
秋桜というと
どうも儚いものに思えて仕方がない。
目の前のコスモスには結びつかない。

英語ではCosmos は sunflower family
ヒマワリもキク科だから当然なのだけど
でもヒマワリなのだ。

そう、ヒマワリの仲間コスモスは頑丈で大きい。
うちの庭でもゆうに2mは超え
圧倒的な蕾の数を誇り、
折れても曲がってもガンガン咲く。

力強さ、たくましさ、そのワイルドさ。
秋の野草というよりは
秋の収穫シーズンのお楽しみ
トウモロコシの迷路にも匹敵する。

いや、もし、庭いっぱいに
植えていたならばの話ではあるけれど。
そんなわけで、そこに儚さはなし。

そして初霜が降りるまで咲き続け
ついには凍結してくしゃくしゃになる花。
それに先んじて、意外に繊細な葉は
枯れて乾いて縮れて固まり、
息も白い朝に黒く大きなその姿は
物の怪じみて見える。

しかしこれが、なんとも典雅な物の怪だ。
もはや色などなくて
呼吸のみを形にしたようなその佇まいは
幽玄とでも言おうか。

ああ、秋桜……
ここへきてようやく結びつく。
そして儚さとは何かにも。
潰れた花からかつての色が、
一筋の煙みたいにたなびくような気がした。



今週の文芸部お題は秋桜。

初冬の庭で見た風景を書いてみました。
散っても枯れても萎びても花は大好きです。


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