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過去と未来と花咲く荒野

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深く想い合う兄妹二人の時間を自由詩形態で紡ぐ1話ごとに完結のシリーズ 離れ離れになる日、互いのなすべきことを果たしたら、 また一緒に暮らそうと約束する。 幼い彼らの日々が詰ま…
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#掌編

【物語:自由詩シリーズ】第7話 北東の窓で待ちわびる

壁際に並んだ本たち。 そこからお気に入りの一冊を抜き出す。 離れゆく朝に持ち出したそれは、…

クララ
10か月前
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【物語:自由詩シリーズ】第6話 バスケットいっぱいの春

明日は水仙を摘みに行こう。 兄の言葉に思わず笑みが広がる。 丘を越えてその向こう、そこには…

クララ
10か月前
10

【物語:自由詩シリーズ】第5話 深く甘く霧の朝

窓の外には立ち込める霧。 朝露に濡れて光輝く丘陵も ほころび始めたヒースの紫も見えない。 …

クララ
10か月前
7

【物語:自由詩シリーズ】第4話 虹色の誘惑

通り雨の後の虹。 誘われるように丘へと出かける。 年老いたドルイドの背のように 大きく曲が…

クララ
10か月前
7

【物語:自由詩シリーズ】第3話 週末のファイブオクロック

しゅうしゅうとケトルが騒ぎ出す。 呼ばれているよ、 読みかけの本から兄が顔を上げた。 刺繍…

クララ
10か月前
6

【物語:自由詩シリーズ】第2話 風の中の季節

小さい頃のように二人で手を繋いで丘に出た。 もっと風が強かったわと私が言えば、 僕らが小…

クララ
10か月前
8

【物語:自由詩シリーズ】第1話 兄と私と始まりの時

いつかまた一緒に住もう。 今は離れ離れになってしまっても、 いつかまた一緒に。 私たちは約束した。 私は泣いていた。 兄は微笑んでいた。 母の遺してくれた風渡る丘の上の 隠れ家のような小さな家で。 お気に入りのお茶を二人で飲もう。 花咲く夏の大地を裸足で歩き、 雪の夜には抱きしめ合って暖まろう。 深く濃い青の瞳が私を見つめる。 きっと上手にケーキを焼くわ。 言えたのはそれだけで、 あとからあとから涙がこぼれた。 それを拭いながら、 兄が私の耳にそっと囁いた。 楽しみにし