【物語:自由詩シリーズ】第9話 満月に開かれる秘密の扉
白銀の輝きに世界が満たされる夜、
私たちはこっそりと家を抜け出す。
もう叱る人もいないけれど、
息を潜め足音を忍ばせて。
長く伸びた影を追いかけ追いかけられて。
ハリエニシダの木陰に走り込み
大きく息をついて顔を見合わせる。
春の訪れが告げられてから初めての満月。
それは解放されていく季節の予感に彩られ
騒ぎ出す胸の高まりを抑えることはできない。
光降り注ぐ中、泉が昼とは違った顔をしている。
小さい頃からここは魔法の王国だった。
満月の夜の楽しみは今夜も変わらない。