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『異世界サムライ』レビュー

どうも、梨間キツツキです。
「そこまで数多くはないけど一定の人気がある漫画タイプ」に、『主人公がイカれてる漫画』というものがあると思います。
イカれた奴がイカれた理由で善行をなす、その姿に痛快さを見出す読者も数多くいるのでしょう。
えぇ、僕も好きです。
そんな皆様におすすめする漫画が、『異世界サムライ』。
齋藤勁吾先生による、異色の異世界ファンタジー漫画です。

あらすじ



第一話より

侍としての生と死を望む少女・月鍔ギンコ。
関ヶ原の合戦に先鋒隊として出陣したギンコは鉢金に鉛玉を喰らって気絶し、ただ一人生き残ってしまう。


第一話より

死に場所を失ったギンコは敵を求めて泰平の世を彷徨うも、彼女を殺せる侍は現れない。
斬った者の墓だけが増える中、立ち寄った寺にてギンコは御仏に願う。


第一話より

「赦しはいらぬ、敵が欲しい」
「私が鬼なら、悪鬼羅刹のはびこる地獄の世へ、いっそ──────」


第一話より

「………………え?」
悲鳴、喧騒、ただならぬ音を聞き、頭を上げたギンコ。
視界に飛び込んだのは鉄の兵士、鬼人、空を飛ぶ大トカゲ。

第一話より

そう、彼女は異世界へ転移していた。

登場人物

月鍔ギンコ

第一話より

本作の主人公、戦国のサムライ。
戦いにこそ活を見出し戦いでの死を望む、根っからの戦闘狂。
異世界において度々指摘される精神の異常性だが、作中の描写を見るに日本基準でもそこそこ頭おかしかった疑惑がある。

第八話より

強者なら人間魔物問わず仕合を頼み込むほど図太いが、断られても食い下がるような強引さはない。

左・第二話より
右・第四話より

また、真に戦えるなら誰でもいいわけではなく、
・女子供を狙う魔物を標的に定める
・恩人にかけられた呪いを解くために魔物を殺しに行く
等、弱者生存や義理人情を大事にしている。
このわずかに残った分別が、ギンコを主人公および人間たらしめている。
某シリーズだったら間違いなく混沌・善のバーサーカー

ミコ

第三話より

異世界の現地民。
森で魔物に襲われたところをギンコに救われ、彼女を孤児院へ案内する。

第七話より

花やその種を用いた花魔法を得意としており、薬花を用いた治癒や花畑へのワープ、魔法による植物の品種改良など、用途は多岐に渡る。

第五話より

可憐な容姿とヒロイン然とした性格で勘違いされがちだが、「お姉ちゃん」と呼ばれてショックを受けるあたり男の子だと思われる。お得

ギブリール・ルー

第四話より

孤児院「愛の家」を営むエルフで、ミコの育ての親。
明快かつ姉御肌な性格だが、現在唯一の子供であるミコに対し少々過保護。

かつては「槍の勇者」として名を馳せた武闘派だったが、魔物に親を殺された子供達に心を痛め、親代わりとなるため勇者を引退。孤児院を建てた。
タッパとケツがでかい美人エルフシスター。胸もデカい。成ったな

『異世界』と『戦国』、思考の差

第十話より

この作品における『異世界』の人類は、常に魔物の脅威に晒されている。
彼らは共通の敵を前に手を取り合い、一万年以上の絆を築いてきた。
それゆえ、殺人は絶対的な『禁忌』。

第九話より

その一点で、日の本で数多の人を殺してきたギンコは決定的な『異物』として扱われている。
人と戦い、人を斬ったギンコは、異世界においてどのような結末を迎えるのか。それが異世界サムライの見所の一つと言える。

「勇者」の扱い

この作品において、「勇者」とは一人ではない。
命を顧みず魔物と戦う者、その全てが勇者である。
要するに、一般的な異世界ファンタジー作品において『冒険者』『旅人』とされる呼称をひっくるめて「勇者」なのだ。
この世界観なら『勇者パーティを追放された』を自然にできると思いきや、13話現在『パーティ』の概念が登場していない。
ちなみに勇者の最高峰には、選ばれし12人の「円卓の勇者」がいる。
ロマンだね。

書き込み

第二話より

エグい。マジでエグい。
太めの線とデフォルメ調の作画構成を基本とする事でコストを抑えて、節約した分を全部描き込みに使ってると勝手に思っている。
多分縛り
髪・木々・服の皺・防具や城壁の模様・遠景の雲に至るまで、一切妥協ナシの美しさが一コマごとに楽しめる。

戦闘描写

上・第六話
下・第十話

その作画は、戦闘シーンにこそ本領を発揮する。
あえてデッサンを崩し、流れるような線を束ねて描く残像。
それに取り残される、凛と描かれた実像。
二種類の作画を巧みに使いこなした、臨場感に溢れた命の奪い合いが大きな魅力の一つだ。

まとめ

今回紹介した『異世界サムライ』は、記事執筆現在コミックス2巻まで発売中。今のうちに追いつくのがおすすめです。

さらにcomikwalkerでは2巻の直後から最新話までを無料で公開しています。
記事執筆中の現在、新たな展開に差し掛かって超アツいです。
では、今回はここまで。
ありがとうございました。

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