見出し画像

第263号(2024年4月22日) 米ウクライナ支援予算が復活へ


【インサイト】米国の対ウクライナ支援予算がついに通過

ジョンソン下院議長の変心

 広く報じられている通り、長らく懸案となっていた米国の対ウクライナ支援予算案が4月20日に下院を通過しました。上院での承認とバイデン大統領の署名を経て月内には発効する見込みとされます。
 ウクライナ支援をめぐっては下院の共和党強硬派の反対によって長らく予算承認が滞ってきました。その間の経緯は時事通信の以下の記事が簡潔にまとめていますが、共和党強硬派を恐れるジョンソン下院議長が予算案の審議自体を先延ばしにし続けたことが停滞の大きな原因であったようです。

 しかし、ジョンソン議長は今回、強硬派から解任動議が出ることも承知で審議に踏み切り、結果的にウクライナ支援予算を通しました。この態度の変化について、『ニューヨークタイムズ』が以下のような記事を掲載しています。議会内政治のためにウクライナ支援予算を滞らせていいのか、それはキリスト教福音派である自分の信念に照らして正しいことなのか、という苦悩の果てに職を賭して今回の決定に踏み切ったというもので、まぁいくらなんでも世の中そんなに綺麗にはできていないでしょう。

 他方、人間は利益のためにしか動かないと考えるのもまた、量産型の「深そうで浅い人間観」であり、結局はジョンソン議長の正義感と政治屋としての打算と、そこにトランプの思惑(今回の決定前から急に物分かりのいいことを言い出すようになっていた)とかその他無数の要素が絡まってこういうことになったのではないかな、と思っています。この辺はいずれアメリカ政治の専門家が解説してくれるのを待ちましょう。

命で前線を支えるウクライナ軍

 というわけで私は今回、ジョンソンはわりに「漢を上げた」と思っているのですが、問題ももちろん山積みです。第一に、今回のウクライナ支援予算はイスラエルや台湾への支援予算ともセットになっています。イスラエルがガザに対して行っている軍事作戦は人道上、到底擁護できるものではなく、これとセットでないとウクライナ・台湾防衛予算が通らないという点はやはり米国の今後に不安を残すものではありました。
 これと関連して気になるのが投票の中身で、ウクライナ支援予算に対する共和党議員の票は賛成101対反対112と、やっぱり支援には懐疑的な共和党議員が多いことがわかります。これに対して民主党は全議員(210人)が支援賛成と、どうもかつてのイメージからは随分なねじれが生じているように見えます(これに対して台湾支援予算は共和党178、民主党207の圧倒的賛成を得ている)。
 2番目の問題は、通るのがあまりにも遅かったということでしょう。前掲の時事通信の記事にもありますが、ウクライナへの支援予算が問題かしたのは昨年10月のことです。12月には最後の予算が付き、これ以降、米国からは新規の武器・弾薬供与がほとんど行えない状態が続いてきました。

ここから先は

3,769字 / 1画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?