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第176号(2022年5月16日) 揺らぐプーチン権力と「笑える地獄」

【NEW CLIPS】ドネツ川渡河中に攻撃を受けたロシア軍装甲車両の残骸

『ガーディアン』2022年5月13日


【インサイト】ロシア・ウクライナ戦争と揺らぐプーチン権力

ゲラシモフ参謀総長が失脚?

『ゴルドン』2022年5月12日

 ウクライナ大統領府のアレクセイ・アレストヴィチ顧問が5月12日にYouTube番組で行った発言(以下)が波紋を呼んでいます。ロシア軍の制服組トップであるゲラシモフ参謀総長が失脚したというものです。

 より正確には、アレストヴィチは次のように述べています。

・ゲラシモフは事実上、失脚した
・ただ、形式上はまだ参謀総長を解任されたわけではない
・ゲラシモフはもう一度チャンスを与えられるかもしれない

 ロシア側からはゲラシモフの失脚を確認できるような情報は出てきておらず、現時点ではアレストヴィチの発言の真偽は明らかではありません。そもそもこのYouTube番組自体、亡命中のロシア野党政治家(元弁護士でもある)マルク・フェイギンのものであり、強い反露的バイアスがかかっている可能性は考慮せねばならないでしょう。
 ただし、5月9日に行われた戦勝記念パレードの場にゲラシモフ参謀総長は姿を見せませんでした。過去の戦勝記念パレード全てを検証したわけではありませんが、参謀総長の欠席が異例の事態であることはたしかでしょう。
 戦争中で参謀総長は多忙であった、という可能性もないではないでしょうが、モスクワ側沿いの参謀本部から赤の広場までは車を飛ばせば(また政府用人の車は凄まじく飛ばす)せいぜい10分というところであり、式典もせいぜい一時間。同じく多忙な筈のサリュコフ陸軍総司令官がパレード部隊の指揮官を務めたことからしても、ゲラシモフの欠席には何か別の理由があった可能性は高いように思われます。
 すぐに思いつく可能性は、次のふたつです。

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