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第244号(2023年11月20日)ウクライナのNATO加盟をめぐる議論


【今週のニュース】依然見えないノルドストリーム爆破事件の真犯人 ほか

885型SSNの建造数増加(と新たな改良型の登場?)

 ロシア海軍は885型(ヤーセン級)攻撃型原潜を新たに3隻起工して最終的に12隻を調達し、北方艦隊と太平洋艦隊にそれぞれ6隻ずつ配備する計画である。11月19日、TASS通信が海軍に近い筋の談話として伝えた。
 現在までにロシア海軍は885型を1隻と改良型の885M型を2隻配備している。現時点ではさらに6隻が建造中ないし就役に向けた公試中であるから、合計で9隻ということになる(内訳は北方艦隊向けが5隻、太平洋艦隊向けが4隻)。
 これに対してTASSの報道では、新たに建造される3隻は885MA型という改良型になるようだ。ただし、この名称は以前には知られておらず、具体的な改良点は明らかでない。

955型SSBN「アレクサンドルIII世」がSLBM発射試験に成功

 11月5日、ロシア海軍の955A型SSBNインペラートル・アレクサンドルIII(皇帝アレクサンドルIII世)がブラワー潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射試験を実施した。試験は白海から潜航状態で実施され、発射されたブラワー(単数形)の弾頭(複数形)はカムチャッカ半島のクラ演習場の指定地域に落下したとされている。
 インペラートル・アレクサンドルIIIは2015年にセヴマシュ造船所で起工され、2022年に進水、2023年6月から配備に向けた国家試験に入っていた。今回の発射成功によって年内には海軍に引き渡され、慣熟訓練を経て2024年には太平洋艦隊に引き渡されると見られる。

ノルドストリーム爆破事件の背後にウクライナ軍将校?

 2022年9月にバルト海の海底で発生した海底ガス・パイプライン「ノルドストリーム」の爆破事件に関して、ウクライナ軍将校が関与していた疑いが濃厚であると『ワシントン・ポスト』が報じた。
 問題の将校はウクライナ特殊作戦軍に所属するロマン・チェルビンスキーという人物で、爆破作戦の調整役として偽の身分でヨットをレンタルし、6人の爆破チームの活動をサポートしたとされている。チェルビンスキーはこれまでにも、ワグネルの戦闘員をベラルーシに誘い込んで拘束させる作戦や、ロシアのパイロットをウクライナに亡命させる作戦にも関与してきたとされる(現在はパイロット亡命作戦が職権濫用であったとしてウクライナ政府によって拘束されている)。
 しかし、チェルビンスキーがレンタルしたというヨット「アンドロメダ号」と6人のダイバーで水深100mを通るパイプラインを3カ所も破壊するようなことが本当にできるのか?という疑問は残る。この点に関して『ドイッチェ・ヴェーレ』は独自にヨットを使った実証実験を行い、かなり難しいのではないかという結論を示す番組を作成した。

 また、ノルドストリーム爆破事件についてはロシアによる犯行説も根強く、現状において誰がやったのかを断言できる証拠は(情報機関は持っているのだろうが)存在していない。アンドロメダ号から爆発物の痕跡が出てきたという話もあれば、爆破現場の付近にロシアの船がいたという話もあり、それぞれはもっともらしいが相互に矛盾する情報も飛び交っている。このあたりについてはNHKによる以下の報道が詳しい。

 むしろ気になるのは、今回のチェスビンスキーをめぐる報道は何を反映しているのか、という点である。もしも爆破がウクライナによる工作であったとするなら、西側との関係に大きな溝が生まれることは想像に難くない。また、前掲の『ワシントン・ポスト』記事では、この工作がザルジニー総司令官には報告される一方で、ゼレンシキー大統領には知らされていなかったとされている。以上が事実であるとするなら、こうした話が何故(米国ないしウクライナから)漏れてきたのか。虚偽だとすれば誰がどのようなチャンネルで流したのか。こちらの方が、どうも深刻な問題であるように思われる。

日本の米ライセンス装備品をウクライナに供与へ?

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