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第191号(2022年9月12日) ウクライナ軍東部大反攻へ

【今週のニュース】ウクライナ軍の東部大反攻 ほか

米国がウクライナに停戦交渉を勧告?

 10日から11日にかけて、キエフではYES(Yalta European Strategy)が開催されていた。今年で18回目となる首脳・閣僚級会合であり、ジャーナリストや有識者も参加できるが、基本的に完全クローズドであるため、内容を漏らしてはいけないという。そのためか、あまり知名度は高くない(筆者自身は今回初めて知った)。
 ところが、今年のYESの内容については、非常に詳細なリーク報道が『エウロペイシカ・プラウダ』に掲載されている。

 この記事によると、会合の席上、ゼレンシキー大統領は「我々はロシアと和平交渉とか妥協などしない」といった意味のことを非常に感情的なトーンで述べたという。レズニコウ国防省も、「我々はパートナーからの和平対話の勧めを信用しないことを学んだ」とやはり挑発的なことを言ったようだ。しかし、参加者の中にはそのようなことを主張した人物はいなかった。
 ウクライナ側は何がそこまで頭に来ていたのかというと、その直前にキーウを訪問したブリンケン国務長官がもたらしたバイデン大統領からのメッセージであったらしい。詳細ははっきりしないものの、この中でバイデンはロシアとの和平交渉を勧めるようなことを述べていたらしく、これがウクライナ指導部のカンに触ったようだ。
 ブリンケンのキーウ訪問に同行したヴィクトリア・ヌーランドのスピーチには和平交渉に関する文言は含まれておらず、米国が強い圧力をかけているわけではないらしい、とも『エウロペイシカ・プラウダ』は述べているが、ウクライナの指導部にしてみれば、米国の態度は強い憤りにも、また不安にもつながるものであろう。結局のところ大国同士が「そろそろこの辺で」と言い出してしまえばウクライナはロシアに手を上げるほかなくなるからである。
 次で述べるウクライナ軍の大反攻はかなり前から入念に準備されていた筈であり、バイデンの「和平勧告」に対応したものではない筈だが、とにかく独力で取り返せるだけは取り返さないと西側は何を言い出すかわからない、というウクライナの恐怖を反映したものとはいえよう。

ウクライナ軍の東部大反攻

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