見出し画像

第87号(2020年6月15日) ロシア軍装備計画についてのクリボルチコ国防次官インタビュー(後半)


存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。
定期購読はこちらからどうぞ。

【インサイト】ロシア軍装備計画についてのクリボルチコ国防次官インタビュー(後半)

 前号ではロシアの核抑止政策文書の公表という思わぬアクシデントがあったため、前々号で紹介したクリボルチコ国防次官の『国防』誌インタビューが前半で止まっていました。今回はその続きとして、後半をご紹介していきましょう。
 翻訳は前々回と同様、AI翻訳サービスDeepLのお世話になりました。

<VKSの装備近代化について>
- VKSにおける新型航空機はどのような方針で装備されるのでしょうか?
- VKSの装備品発展に関する差し迫った課題は、作戦・戦術航空部隊と陸軍航空隊の再装備を完了させ、新しい多用途航空機Su-35S、Su-30SM、Su-34とKa-52M、Mi-28M、Mi-8MTV-5-1、Mi-8AMTSHヘリコプター(北極での使用に適応したものを含む)の再装備を完了させることです。
 シリア・アラブ共和国での戦闘作戦で成功を証明した機体もアップグレードする計画です。Su-34と、 Su-30SMの近代化版です。戦略ミサイル母機Tu-95、Tu-160、長距離爆撃機Tu-22M3に対しては大規模な近代化が行われています。最新の巡航ミサイルと他の将来型攻撃手段の両方を搭載することができます。
 効果的な近代化のために、超音速空中発射弾道ミサイルを装備する将来型航空コンプレクス「キンジャール」は、そのベースとなったMiG-31戦闘機のパワーを増加させました。
 陸軍航空のヘリコプターは、性能を向上させた近代的な機上防御コンプレクスで速やかにアップグレードされます。機体には最新の射程延長型攻撃手段や将来型防御装置が搭載されています。
 Su-57型機の連続納入の開始は、私たちにとって大きな出来事となるでしょう。注意したいのは、Su-57が2段階で配備されることです。
 第1段階では第4世代エンジンを搭載した機体を購入し、2020年半ばの納入を予定しています。第2段階では、試験活動終了後、燃費向上とライフサイクルコストの低減を実現した第5世代エンジンの供給が開始されます。
 軍事輸送航空隊及び特別航空隊用にIL-76MD-90A、Tu-214、A-100、Be-200を購入する予定です。
 中型軍用輸送機(SVTS)の開発については、2019年11月末に、構想設計を検討する省庁間委員会の会合が開かれました。今、我々にはSVTS開発のための2つのオプションが提示されています。Il-276をベースに株式会社「イリューシン」が開発するか、ツポレフのTu-330をベースとするかです。
 委員会での作業の結果を踏まえ、SVTSの種類を決定します。開発予定期間は2029年までです。
 小型軍用輸送機(LVTS)については、Il112Vの試作機が2機製作されました。Il-112V試作機の初飛行は2019年3月30日です。試作2号機はベンチテスト用にTSaGI(訳注:中央流体力学研究所)に引き渡されました。
 次はPAK DA(訳注:長距離航空軍向け将来型航空機コンプレクス=次世代爆撃機)についてです。すべての作業は、設定された条件に基づいて行われます。これまでのところはご存じの通りで、この将来型機体の概念設計が承認されています。現在、株式会社ツポレフは、プロトタイプのための部品やコンポーネントの作成をすでに開始しただけでなく、作業設計のドキュメントを開発しています。
 また、国家契約に基づいてTu-160Mの製造が続いており、そのペースを上げつつ2021年から納入が開始されます。
 昨年は陸軍航空にとっても特別なことがありました。Mi-38Tの1号機を受領したことです。年内には2号機がVKSに納入され、共同特別飛行試験に供される予定です。さらに以下のことが挙げられます。
・2027年までに98機のMi-28NMヘリコプターの長期契約を締結
・TV3-117に比べて性能を向上させたVK-2500P航空機用エンジンのベンチテストを開始
・Mi-28UB、Mi-35M、 Mi-8AMTSh-Vヘリコプターの制式化に関する作業の進展
・2022年に完了が予定されているKa-52ヘリコプターの近代化開発作業「アヴァンガルド-4」の実施
・2020年には、2027年までに100機以上のKa-52Mヘリコプターを供給するための国家契約を締結予定
 ロシアの無人航空機メーカーには特別の感謝を表明したいと思います。2019年は間違いなく、この分野では画期的な年になりました。大型無人航空機「オホートニク」が初飛行し、中型長時間滞空無人機「アルティウス」も初飛行を行いました。「イノホージェツ」無人機の試験作業も活発に行われています。我々が今後数年の間に、偵察、誘導、精密攻撃などの機能を持つ無人機グループを大幅に増加させることになろうと確認しています。

ここから先は

2,655字 / 1画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?