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第245号(2023年11月27日) 海軍の指揮系統大改編とワグネル後継組織?


【今週のニュース】ワグネル後継組織?国防省アフリカ軍団の設立 ほか

ロシア 装甲車工場の従業員が3000人増

 BMP-3などの歩兵戦闘車を生産しているクルガンマシュザヴォードの従業員が年初以来、3000人増加していることを同社の広報部門が明らかにした。このうち2000人が生産部門(要するに工員)であり、その中の505人は2023年度の国家防衛発注(GOZ)の増加に対応したものであるとしている。
 ロシアのGOZ増額については【レビュー】のコーナーを参照されたい。

防御力強化型BMP-2を納入

 一方、装甲戦闘車両の修理・改修を担う装甲戦車修理工場(BTRZ)社は、BMP-2歩兵戦闘車のオーバーホールに合わせて防御力強化を図ったタイプをロシア軍に納入したと発表した。同社によると、10月中に修理された装甲車両の数は昨年1年間で修理された数と同等であったという。

 さらに同社も従業員増に動いており、ここ数ヶ月で100人、さらに今後も100人を採用する予定であるとしている。今年6月時点でロシアの失業率は3.1%と過去最低水準となったが、その背景にはこうした軍需産業での雇用増があるものと思われる。


ワグネル後継組織?国防省アフリカ軍団の設立

 ロシア軍の隷下に「アフリカ軍団(Африканский корпус)」なる組織ができたとの情報が出てきた。「アフリカ構想」というテレグラム・チャンネルが報じているものでどのくらいの信頼性があるのかは明らかでないが、リベラル紙『モスクワ・タイムズ』が報じたことで注目を集めた。

「アフリカ軍団」は軍事技術協力(武器輸出のこと)や対テロ作戦だけでなく、インフラ建設や人道支援を行い、これによってアフリカ諸国が西側の「新植民地主義」に対して主権を守れるようにするのだという。

『モスクワ・タイムズ』の記事はこの話の背景を説明するものとして面白い。実は以前から、「アフリカ軍団」のメンバーを高給で募集するという話が出ており、実質的にはワグネルによる海外任務を引き継ぐのではないかとされている、という点がそれである。「アフリカ軍団」は参謀本部情報総局(GRU)の支援の下で設立され、実業家のミルゾヤンツが会社組織を率いるというから、形式としてはプリゴジンのワグネルに酷似している。ただ、ミルゾヤンツはプーチンの側近ビジネスマンであるティムチェンコの手下であるというから、今度は間違っても政権に刃向かったりしなさそうな人物に民間軍事会社を任せることにしたのだろう。
 また、『モスクワ・タイムズ』は、本件の国防省側担当者がエフクロフ国防次官であり、9月以降に何度かアフリカ入りしているという。エフクロフといえばプリゴジンが反乱によって南部軍管区司令部を占拠した際、その中庭までやってきて説得に当たった人物である。直接の関係があるのかどうかは明らかでないが、どうもエフクロフは民間軍事会社という領域と何らかの結びつきを持っているのではないか、という気がしてくる組み合わせではある。

アフリカ軍団といってもこれの話ではない
Авторство: Bundesarchiv, Bild 101I-785-0287-08 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 de, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=631949

【レビュー】艦隊が海軍総司令部直轄に復帰 国防省幹部会議において報告されたロシア軍の現状

 11月21日、定例の国防省拡幹部評議会が実施された。公表されたショイグ国防相の発言のうち、興味深い点は以下のとおり。

ウクライナ作戦について

・積極防御が機能しており、敵はロシア軍の火力によって前身を阻まれている
・ヘルソン方面におけるウクライナ軍のドニプロ川渡河の試みは全て失敗に終わった
・ウクライナ軍の損害は11月だけで人員1万3700人以上、武器・装備約1800点に及び、降伏者も数多く出ている

学生の軍事的動員について

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毎号買うのめんどいという声が割とあったので定額版を作ってみました。

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