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第206号(2023年1月23日) 2026年までにロシア軍ができることとできないこと

【インサイト】ソ連軍に近づくロシアの軍事態勢

2026年までにロシア軍を150万人体制へ

 ロシア軍の大増強が日本のメディアでも注目を集めています。1月17日にショイグ国防省が発表したもので、2026年までに兵力を150万人まで増やすことなどがその骨子です。

 従来、ロシア軍の定員は2005年時点で113万4800人、2008年から100万人ちょうど、2018年から101万3628人、2022年からは115万628人と推移してきました。したがって20年くらいかけてロシア軍の兵力は「ぐるっ」と元に戻ってきてしまったということになるでしょう。
 このほか、1月17日にショイグから発表された方針には次のものが含まれています。

・新しい諸軍種戦略地域連合部隊としてモスクワ軍管区とレニングラード軍管区を設置する
・カレリア共和国(フィンランドの国境地域)に1個軍団、3個自動車化歩兵師団(以上陸軍)、2個空中襲撃師団(空挺部隊)を編成する
・西部・中央・東部・北方艦隊軍管区の7個自動車化歩兵旅団を師団に改編する
・海軍、航空宇宙軍、戦略ロケット軍の戦闘部隊を増強する

 以上の内容は、昨年12月22日の国防省拡大幹部評議会でショイグが表明したものと基本的に同じです。というか、より詳しいことはこの際に表明されており、1月17日の声明はそのダイジェスト版という感があります。

ショイグ発言の微妙な変化

 一方、1月17日に関して目新しかったのは次の二点です。
 第一に、兵力150万人への増強計画がプーチン大統領の承認を得たとショイグが発言していこと。昨年12月の国防省拡大幹部評議会の段階では「提案」という形が取られていた軍拡案が、正式に推進されるらしいことが窺われます(ただし関連の根拠法令などがまだ出ていないので、ここでは「らしい」とする)。
 ショイグが公開の場でいきなりプーチンに提案をぶつけることなどはあり得ないので、もともと調整済みではあったのでしょう。しかし、気になるのは、12月22の国防省拡大幹部評議会で提起されていながら、1月17日のショイグ発言では曖昧にぼかされている点があることです。
 例えば国防省拡大幹部評議会では、諸兵科連合軍1個に対して混成航空師団1個と陸軍航空旅団1個を配備する*という方針が示されましたが、年が明けてからのショイグは単に「増強する」としか言っていません。

*この点について、第204号では、「各諸兵科連合(戦車)軍に混成航空師団と戦闘ヘリコプター80-100機で編成される陸軍航空旅団を含める」と訳出して紹介しました。しかし後に米露の軍事専門家と話した際、これは諸兵科連合軍/戦車軍1個あたり混成航空師団と陸軍航空旅団を1個ずつ配備するという「比率」の問題だという指摘がありましたので、訂正させていただきます。

 砲兵部隊、海軍歩兵部隊、空軍の増強についても1月17日のショイグ声明では個別の言及がなく、さらに言えば150万人のうち69万5000人を契約軍人にするという話もやはり1月17日には出てきませんでした。

2026年までにできそうもないこと

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