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第220号(2023年5月8日)クレムリンへの自爆ドローン突入と盛り上がらない戦勝記念日

【今週のニュース】ウクライナ軍反攻をめぐる見通し

ロシアとウクライナそれぞれの損害

 5月1日、米国家安全保障会議のカービー戦略広報担当調整官は、昨年12月以降のロシア軍の損害に関する見積もりを発表した。これによると、過去5ヶ月間におけるロシア軍の戦死者は2万人以上に上り、うち半分が民間軍事会社「ワグネル」の囚人戦闘員であるという。また、負傷者は8万人以上ともカービーは発言している。

 一方、その翌日には、ロシアのショイグ国防相がウクライナ軍の損害状況に関する見積もりを発表した。これによると、4月だけでウクライナ軍は1万5000人を失い、装備品については航空機8機、無人航空機277機、戦車その他の装甲戦闘車両430両、多連装ロケットシステム18両、野砲・迫撃砲255量が破壊されたと主張している。

 また、ショイグは、ロシアの軍需生産が順調に増加しているとも述べた。基本的な武器の生産は昨年初めと比較して2.7倍、特に需要が高いものについては7倍になっているとし、弾薬の生産も必要分を確保できるとしている。

ウクライナの反攻作戦に関する悲観論

 ウクライナの大規模反攻が近く予定されていることは既定路線であると見られているが、その先行きについては以前から悲観論がある。これについては最近も同じような論調の議論がいくつか見られるので紹介しておきたい。
 例えばロシアの反体制派メディア『ノーヴァヤ・ガゼータ』(現在はロシア国外に拠点を移して『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』として活動)は、「政治的幻影としての反攻」と題した記事を4月29日に掲載した。なかなか難解な言い回しだが、要はロシア軍は手強いので反攻にあまり過大な期待を抱くべきではないという主旨である。

 一方、英『タイムズ』は、マーク・ガレオッティによるもう少し具体的な議論を掲載している。曰く、これだけ反攻が予想されている状況下では戦略的奇襲の要素は失われており、反攻部隊をロシア軍の航空阻止から守るための防空システムも足りていない。それでも、ウクライナは西側に対して「自分たちは投資に値する」ことを示し、国内向けにも強気の姿勢を示さざるを得ないので反攻を叫び続けているのだ、というもの。
 実際問題としてウクライナの反抗は準備万端というわけではなく、ロシアの火力と陣地構築を考えると反攻は容易ではないだろう。この春以降の反攻作戦がうまくいかない、という可能性は想定シナリオの中に含めておくべきではある。また、仮に反攻が最大限うまくいったとしても、それはこの戦争を一気に決着するようなものではない、ということはこれまでにも度々指摘してきた。
 他方、今年初頭以降のロシア軍東部攻勢がうまくいっていないこともまた明らかであり、追加動員を行わなければ新たな攻勢に出ることは難しい。また、国内事情(特に来年春の大統領選)を考えると追加動員はおそらく困難であり、いずれにしても戦争は長引く可能性が高い。


ウクライナのレズニコウ国防相によるYahoo!ニュースとのインタビュー

 5月4日、Yahoo!ニュースは、ウクライナのレズニコウ国防相に対するインタビュー記事を掲載した。興味深い点は以下のとおり。

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